第14話 探索
セリアとシズクと出会ってから二週間が過ぎた。
今日は土曜日。
昼。
◇
《始まりの街》。
「全員いる?」
俺は周囲を見る。
ハヤテ。
たると。
リンファ。
セリア。
シズク。
そして俺。
六人。
「いる!」
ハヤテが手を上げる。
「います!」
たるとも手を上げる。
「いるわよ」
リンファ。
「いるよ~」
セリア。
「います」
シズク。
「…………」
全員いるな。
あれからセリアとシズクとは何度か一緒に遊んだ。
たると。
リンファ。
セリア。
シズク。
それぞれ遊べる時間は違う。
全員揃わない日もある。
二人だけの日。
三人の日。
四人の日。
色々。
そして。
今日は珍しく六人全員集合できた。
「で!」
ハヤテが言う。
「今日は何する?」
「決めてないの?」
「決めてない!」
「…………」
いつものことだった。
「クエストですか?」
シズクが聞く。
「それでもいいけど……」
俺はマップを開く
第一階層。
《始まりの街》。
草原。
森。
岩場。
今まで行った場所が表示されている。
でも。
まだ行っていない場所はかなり多い。
「ん?」
ハヤテが覗き込む。
「まだ行ってない場所いっぱいあるな」
「本当ですね」
たるともマップを見る。
「第一階層だけでも広いですからね」
「ねえ」
リンファ。
「今日はクエストじゃなくて探索にしない?」
「探索?」
「マップ埋め」
リンファもマップを開く。
「まだ行ってない場所を適当に歩くの」
「おお!」
ハヤテの目が輝く。
「それいいな」
「楽しそうです!」
たるとも賛成。
「私もいいよ~」
「私も構いません」
全員賛成。
「じゃあ決まりだね」
「よし!」
ハヤテが拳を上げる。
「探索だ!」
「どこ行く?」
「…………」
「…………」
「…………」
ハヤテがマップを見る。
「ここ!」
指差す。
「どこ?」
「行ったことないところ!」
「説明になってないよ」
「ここだよ!」
第一階層の南東側。
俺達のマップではまだほとんど表示されていない場所。
「遠くない?」
「だからいいんだろ!」
「そういうもの?」
「探索だからな!」
「それもそうか」
たるともマップを見る。
「何があるんでしょうね」
「森っぽいわね」
リンファ。
「素材もあるかも」
「リンファはそれなんだ」
「大事よ」
「確かに」
セリアが笑う。
「知らない場所楽しみ~」
「危険な場所でなければいいですね」
シズク。
「危なかったら逃げればいい!」
ハヤテ。
「その前に近づかない選択肢もありますよ?」
「大丈夫!」
「何がですか?」
「六人いる!」
「人数だけで判断しないでください」
「ははは!」
「…………」
今日も元気だな。
「じゃあ行こう」
「おう!」
俺達は《始まりの街》を出た。
◇
草原。
青空。
風。
六人で歩く。
「こっち!」
ハヤテが先頭。
「ハヤテさん!」
たるとが呼ぶ。
「なんだ!」
「そっちじゃないです!」
「え!?」
「南東はこっちですよ!」
「…………」
ハヤテが戻ってくる。
「分かってる!」
「嘘だね」
「分かってた!」
「マップと反対でしたよ?」
シズク。
「…………」
「分かってなかった!」
「素直だね~」
セリアが笑う。
草原を進む。
この辺は何度か来た場所。
見覚えがある。
でも。
途中から少しずつ景色が変わる。
知らない場所。
マップには歩いた部分が少しずつ表示されていく。
「おお!」
ハヤテがメニューを見る。
「埋まってく!」
「そりゃ歩いてるからね」
「楽しいなこれ!」
「分かります!」
たるとも嬉しそうにマップを見る。
「こっちにも行ってみたいですね!」
「行こうぜ!」
「目的地から離れるよ?」
「探索だからいいだろ!」
「…………」
確かに。
クエストじゃない。
時間制限もない。
目的地も決まってない。
好きなところへ行けばいい。
「ガウさん!」
たるとが呼ぶ。
「ん?」
「見てください!」
道の端に小さな花。
青。
白。
黄色。
「綺麗ですね!」
「うん」
「採取できるかな?」
リンファがしゃがむ。
「…………」
「採取できないみたいね」
「残念そう」
「ちょっとね」
「ふふっ」
セリアも花を見る。
「いっぱい咲いてるね~」
「本物みたいですね」
シズクがしゃがむ。
花に触れる。
指先で揺れている。
「こういうところまで作り込まれているんですね」
「匂いもしますよ!」
たるとが花へ顔を近づける。
「本当です!」
「嗅げるの?」
ハヤテも近づく。
「…………」
「どう?」
「…………」
「ハヤテ?」
「よく分からん!」
「なんで!?」
「ははは!」
また歩く。
◇
林。
木々。
鳥の声。
ガサッ。
「敵!?」
ハヤテが剣へ手を伸ばす。
「…………」
茂みから小さなウサギ。
ぴょん。
「…………」
逃げていった。
「ウサギだね~」
セリア。
「敵じゃなかったですね」
たると。
「…………」
ハヤテが剣から手を離す。
「紛らわしい!」
「ウサギに言っても仕方ないよ」
「戦えると思ったのに!」
「今日は探索でしょ?」
「戦闘も探索の一部!」
「そうなの?」
「そう!」
「初めて聞いた」
「今考えた!」
「でしょうね」
シズク。
「ははは!」
林を抜けると丘が見えた。
ハヤテを先頭に登っていく。
「結構高いな」
「もう少しですよ!」
たるとが先へ。
「元気だね」
「景色が気になります!」
「私も~」
セリアも続く。
「待ってください」
シズクも追う。
「…………」
「行きましょ?」
リンファ。
「うん」
俺達も続いた。
◇
丘の上。
「おお!」
ハヤテ。
「わぁ……!」
たると。
「綺麗~」
セリア。
「これは……」
シズク。
「結構いい景色ね」
リンファ。
「…………」
俺も周囲を見る。
広い。
草原。
森。
川。
遠くに見える《始まりの街》。
さらに向こうには山。
まだ行ったことのない場所。
マップを開く。
黒い。
未探索エリアがかなり残っている。
「第一階層だけでもこんな広いんだな」
ハヤテが言う。
「まだ全然行ってないね」
「ですね」
たると。
「全部行こうぜ!」
「全部?」
俺が見る。
「おう!」
「何日かかるんだろ」
「分かんね!」
「考えてなかった?」
「でも行けばいいだろ!」
「まあね」
「次あっち行きましょう!」
たるとが遠くを指差す。
「どっち?」
「森の方です!」
「よし!」
ハヤテが走り出す。
「行くぞ!」
「ハヤテさん!」
シズク。
「先に行かないでください!」
「大丈夫!」
「何が大丈夫なんですか!」
「迷子にならない!」
「さっき反対方向へ行ったよね」
「…………」
ハヤテが止まる。
「ガウ!」
「何?」
「それは忘れろ!」
「無理」
「ははは!」
六人で丘を下りる。
◇
森に入る。
さっきより深い。
木々の間から差し込む光。
「暗くなってきましたね」
たると。
「まだ昼だけどね」
「木が多いから~」
セリアが上を見る。
枝。
葉。
空がほとんど見えない。
「この辺はまだマップに出てないわね」
リンファ。
「じゃあ正解!」
ハヤテ。
「何が?」
「探索!」
「まあそうだけど」
歩く。
右。
左。
真っ直ぐ。
たまに戻る。
マップが少しずつ埋まる。
「こっち行ってみる?」
俺が聞く。
「行こう!」
ハヤテ。
「即答だね」
「探索だからな!」
「便利な言葉になってない?」
「気のせい!」
しばらく歩く。
すると。
「…………」
何か聞こえてきた。
「ん?」
俺は狼耳を動かす。
「どうしたの?」
リンファ。
「音」
「音?」
立ち止まる。
耳を澄ます。
サァァァ……。
「水?」
「え?」
たると。
「水の音する」
「本当ですか?」
「多分」
「行こうぜ!」
ハヤテが走り出す。
「待って!」
「水だー!」
「子供ですか!」
シズクも追う。
「行こ~」
セリア。
「元気ね」
リンファ。
俺達も走る。
するとーー
「おお……」
目の前に湖。
かなり大きい。
森の中。
青い水。
太陽の光が水面に反射している。
風で水面が揺れる。
「わぁ……」
たるとが声を漏らす。
「綺麗ですね……」
「綺麗~」
セリア。
「こんな場所があったんですね」
シズク。
「マップにも出たわ」
リンファがマップを見る。
俺もマップを確認する。
今まで何もなかった場所に新しく湖が表示されている。
「すげえ!」
ハヤテが湖へ近づく。
「来てよかったな!」
「うん」
ただ歩いてたまたま見つけた。
それだけ。
でも。
「こういうのも悪くないね」
俺が言う。
「ですよね!」
たるとが笑う。
「また皆で探しましょう!」
「いいね~」
「まだ未探索の場所もたくさんありますからね」
「素材もありそうだし」
リンファ。
「やっぱりそこ?」
「大事でしょ」
「ははは!」
ハヤテが笑う。
「じゃあ次は――」
ドンッ!
「…………」
全員が止まる。
「何?」
たると。
「今の音」
ドンッ!
また低い音。
「向こうですね」
シズクが湖の端を見る。
森。
木々。
ドンッ!
「何かいる?」
セリア。
「モンスターか?」
ハヤテが楽しそうにする。
「嬉しそうだね」
「行ってみようぜ!」
「警戒はしてよ」
「分かってる!」
六人で音の方へ。
湖沿い。
木々。
近づく。
ドンッ!
「…………」
見えた。
木。
大きな木。
その前に人。
「…………」
かなり大きい。
大男。
プレイヤー。
「武器は持ってないようね」
リンファ。
「みたいだね」
大男が拳を握る。
「ふん!」
ドンッ!
木を殴った。
幹が揺れ、葉が落ちる。
「…………」
俺達。
大男。
また構える。
「ふん!」
ドンッ!
木が揺れる。
「…………」
「何してるんだろ」
俺が言う。
「木を殴ってるわね」
リンファ。
「それは見れば分かる」
「修行かな~?」
セリア。
「ゲームでですか?」
シズク。
「何か理由があるんでしょうか?」
たると。
「…………」
ハヤテ。
大男を見る。
「…………」
目が輝いてる。
「ハヤテ」
「ん?」
「やめといた方がいいと思う」
「まだ何も言ってないぞ!」
「顔見れば分かる」
「何が!」
「声かけるんでしょ?」
「おう!」
「ほら」
ハヤテが大男へ近づく。
「おーい!」
「…………」
大男の拳が止まる。
ゆっくり振り返った。
「ん?」
俺達を見る。
ハヤテが笑う。
「なあ!」
一歩前へ。
「何してんだ?」
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