第13話 連携
冒険者ギルドの掲示板に四人が並ぶ。
「どれにする!」
ハヤテが並んでいる依頼書を見る。
「何でもいいよ」
「何でもいいが一番困る!」
「じゃあハヤテが決めれば?」
「よし!」
即答。
ハヤテが掲示板を見る。
「…………」
「…………」
「…………」
「決まった?」
「ちょっと待て!」
まだらしい。
セリアとシズクも依頼書を眺めている。
「いっぱいあるね~」
「そうですね」
「採取~」
「ありますね」
「護衛~」
「ありますね」
「討伐~」
「それもありますね」
「討伐!」
ハヤテが反応した。
「これにしようぜ!」
一枚の依頼書を指差す。
「早いね」
「まだ内容を確認していませんよ?」
シズクが言う。
「討伐って書いてある!」
「それだけで決めるんですか?」
「駄目?」
「駄目とは言いませんが……」
「内容くらい見ようよ」
俺も依頼書を見る。
《ゴブリン集団の討伐》
第一階層。
《始まりの街》から北西。
岩場周辺にゴブリンの集団を確認。
街道を利用するNPCへの被害が発生しているため討伐。
推奨レベル。
三。
討伐目標。
十体。
「ゴブリンか」
「四人なら大丈夫じゃない?」
「だな!」
ハヤテが笑う。
「これにしようぜ!」
「私はいいよ~」
「私も構いません」
「じゃあ決まりだな」
依頼書を取る。
受付。
クエスト受注。
ピコン。
《クエストを受注しました》
《ゴブリン集団の討伐》
「よし!」
ハヤテが冒険者ギルドの出口へ向かう。
「行こうぜ!」
「元気だね~」
「いつもあんな感じ」
「そうなんですね」
俺達も後を追った。
◇
《始まりの街》を出る。
草原。
青空。
風。
四人で北西へ。
先頭はハヤテ。
少し後ろに俺。
最後尾にはセリアとシズク。
「そういえば」
歩きながらハヤテが振り返る。
「二人とも魔法使いなんだよな?」
「そうだよ~」
「はい」
セリアは普通の杖。
シズクは小さな杖。
「どんな魔法使うんだ?」
「私は攻撃魔法かな~」
セリアが杖を軽く振る。
「《ファイアー》とか~」
「おお!」
ハヤテの目が輝く。
「火出るの!?」
「出るよ~」
「見たい!」
「敵がいたらね~」
「今出せない?」
「出せるけど~」
セリアが周囲を見る。
草原。
「燃えたら困るよ~?」
「…………」
「確かに」
「危ないですね」
シズクが頷く。
ハヤテが今度はシズクを見る。
「シズクは?」
「私は防御魔法を中心に使っています」
「防御?」
「はい」
シズクが小さな杖を持ち上げる。
「攻撃を防ぐ《シールド》などですね」
「へぇ!」
ハヤテが笑う。
「じゃあ守るの任せた!」
「…………」
シズクが瞬きをする。
「そんな簡単に任せるんですか?」
「得意なんだろ?」
「そうですが……」
「じゃあ任せた!」
「…………」
シズクが俺を見る。
「いつもこうなんですか?」
「大体こんな感じ」
「またそれ!?」
「違う?」
「…………」
「大体こんな感じだな!」
「でしょ」
「ふふっ」
セリアが笑う。
シズクも少しだけ笑った。
「でも」
シズクが前を見る。
「分かりました」
「ん?」
「防御は任せてください」
「おう!」
ハヤテが笑う。
「頼む!」
「はい」
「…………」
さっき会ったばかり。
パーティーを組んだばかり。
それなのになんか普通に話してる。
◇
しばらく歩くと草原を抜けた。
地面に石が増えていく。
やがて。
岩場。
大小の岩。
足場も少し悪い。
「この辺?」
俺はマップを見る。
クエスト対象区域。
間違いない。
「ゴブリンどこだ!」
ハヤテが周囲を見る。
「そんな大声出したら――」
ガサッ。
「…………」
岩陰。
動く影。
一体。
二体。
三体。
「出てきたね~」
四体。
五体。
ゴブリン。
棍棒。
短剣。
それぞれ武器を持っている。
「ちょうどいい!」
ハヤテが二本の剣を抜く。
シャキン!
「行くぞ!」
「ちょっと待って」
「何!?」
「どうする?」
「倒す!」
「そうじゃなくて」
作戦。
俺はセリアとシズクを見る。
初めて一緒に戦う。
「二人は後ろでいい?」
「いいよ~」
「はい」
「じゃあ俺とハヤテが前」
「おう!」
ハヤテがゴブリンを見る。
五体。
「俺が前出る!」
「うん」
「ガウ!」
「ん?」
目が合う。
「…………」
「…………」
それだけ。
俺は短刀を抜いた。
ハヤテが笑う。
「よし!」
地面を蹴る。
「行くぞ!」
ダッ!
ゴブリンへ一直線。
「ギャッ!」
「ギャギャ!」
二体がハヤテへ。
一体が俺へ。
残り二体。
「セリア!」
ハヤテが叫ぶ。
「そっち一体頼む!」
「は~い」
セリアが杖を向ける。
「《ファイア~》!」
ボッ!
杖の先から炎。
小さな火球が飛ぶ。
ドンッ!
「ギャッ!」
ゴブリンへ直撃。
「おお!」
ハヤテが戦いながら声を上げる。
「本当に火出た!」
「そりゃ出るでしょ」
俺は目の前のゴブリンを見る。
棍棒を振り下ろす。
ブンッ!
横に避ける。
そして踏み込む。
ザシュッ!
「ギャッ!」
一撃。
ゴブリンが倒れる。
残り。
ハヤテに二体。
セリアが一体。
そして。
もう一体。
「ギャギャ!」
俺達の横を抜けた。
後ろ。
セリア。
シズク。
「…………」
視線を動かす。
同時。
ハヤテも見た。
「…………」
一瞬、目が合う。
ハヤテは前へ向き直る。
俺は後ろへ。
ダッ!
「ギャッ!」
ゴブリンがセリアへ走る。
「セリア!」
シズクが一歩前へ。
杖を向ける。
「《シールド》!」
ブンッ!
半透明の障壁。
直後。
ガンッ!
ゴブリンの棍棒が弾かれる。
「ギャ!?」
止まった。
その横に俺。
「やっ!」
ザシュッ!
「ギャッ!」
ゴブリンが倒れる。
「ありがと~」
セリアが笑う。
「うん」
「ガウさん」
シズク。
「ん?」
「ありがとうございます」
「シズクが止めてくれたから楽だったよ」
「…………」
シズクが少し驚いたような顔をする。
「前!」
ハヤテ。
「まだいるぞ!」
「はいはい」
俺は前へ戻る。
その間。
ハヤテ。
二体。
左右から挟まれている。
「ギャッ!」
棍棒。
ブンッ!
ハヤテが身体を捻る。
回避。
反対から短剣が迫る。
キィン!
右の剣で受ける。
「よっと!」
左。
ザシュッ!
一体。
「ギャッ!」
倒れる。
もう一体。
「ハヤテ!」
俺を見る。
「…………」
目が合う。
「任せろ!」
ハヤテが笑う。
俺はそのまま後ろを見る。
セリアが戦っているゴブリン。
まだ倒れていない。
「セリア」
「ん~?」
「もう一発いける?」
「いけるよ~」
杖。
「《ファイア~》!」
ボッ!
ドンッ!
「ギャッ!」
ゴブリンが吹き飛ぶ。
同時。
後ろ。
ザシュッ!
ハヤテ。
最後の一体を倒す。
「よっしゃ!」
静かになる。
「…………」
五体。
全滅。
ピコン。
《ゴブリン 5/10》
「半分!」
ハヤテが剣を肩に乗せる。
「余裕だな!」
「油断しないでよ」
「分かってる!」
多分分かってない。
「…………」
シズクが俺とハヤテを見る。
「どうしたの?」
「いえ」
シズクが少し考える。
「お二人は」
「うん?」
「ほとんど指示を出さないんですね」
「指示?」
ハヤテが首を傾げる。
「はい」
シズクが俺を見る。
「先ほど、ゴブリンがこちらへ来た時です」
「うん」
「ハヤテさんはガウさんに何も言っていませんでした」
「ああ」
「それなのに、ガウさんはこちらへ」
「…………」
ハヤテと俺。
顔を見る。
「だって」
ハヤテ。
「ガウなら行くだろ?」
「うん」
俺も頷く。
「ハヤテが前の二体を引き受けるの分かったし」
「…………」
シズク。
「それだけですか?」
「それだけ」
「だな!」
「…………」
セリアが笑う。
「すごいね~」
「そう?」
「目が合っただけだったよ~?」
「最近ずっと一緒に遊んでるからなんとなく分かる!」
ハヤテが笑う。
「こっち行くなーとか」
「それは分かる」
「こいつ俺がやるなーとか!」
「それも」
「任せたーとか!」
「うん」
「…………」
シズクが俺達を見る。
「それは……連携が取れているということでは?」
「そうなの?」
俺が聞く。
「そうだと思います」
「おお!」
ハヤテが嬉しそうにする。
「俺達、連携取れてるって!」
「今更?」
「いいじゃん!」
セリアが杖を持ちながら笑う。
「でも~」
「ん?」
「私達への指示も分かりやすかったよ~」
「そう?」
「うん~」
セリアがハヤテを見る。
「『そっち一体頼む』って~」
「短くない?」
俺が言う。
「でも、誰を狙えばいいか分かったから~」
「なるほど」
「そうですね」
シズクも頷く。
「少なくとも」
「うん?」
「『前衛を援護しろ』『何とかしろ』よりは遥かに分かりやすいです」
「…………」
「それ大事~」
「とても大事です」
二人の声が揃った。
「…………」
よっぽど前のリーダーは適当だったんだな。
「よし!」
ハヤテが剣を構える。
「あと五体!」
「お~」
「行きましょう」
「うん」
俺達は岩場の奥へ進んだ。
◇
「いた!」
ゴブリン。
今度は六体。
「一体多いね」
「全部倒せばいい!」
「そうだけど」
ゴブリン達も俺達に気付く。
「ギャギャ!」
「ギャッ!」
六体が走ってくる。
「行くぞ!」
ハヤテが前へ。
俺も続く。
「セリア!」
「は~い」
「右二体!」
「二体~?」
「無理?」
「やってみる~」
杖。
「《ファイア~》!」
ボッ!
一体へ直撃。
もう一体が横へ。
「シズク!」
「はい!」
「セリアの方!」
「分かりました!」
杖。
「《シールド》!」
ガンッ!
攻撃を防ぐ。
「ガウ!」
ハヤテの声。
「…………」
見る。
ハヤテにゴブリン三体。
俺には一体。
目が合う。
「…………」
俺は自分の一体へ。
ハヤテは三体。
「任せたよ」
「おう!」
ザッ!
短剣を振る。
避ける。
斬る。
ザシュッ!
「ギャッ!」
後ろ。
「《ファイア~》!」
ドンッ!
「ギャッ!」
「セリア!右!」
シズクの声。
「ん~?」
ゴブリンが横から迫る。
「《シールド》!」
ガンッ!
「ありがと~」
「まだです!」
「分かってる~」
セリアが距離を取る。
「《サンダ~》!」
バリバリッ!
倒す。
「…………」
ちゃんと戦えてる。
俺は周囲を見る。
ハヤテは二体倒した。
残り一体。
後衛は問題なし。
なら。
「ハヤテ!」
「おう!」
俺が走る。
最後。
左右。
ハヤテ。
俺。
「いくよ」
「あいよ!」
二本の剣。
短刀。
同時。
ザシュッ!
「ギャッ!」
最後のゴブリンが倒れた。
ピコン。
《ゴブリン 11/10》
《クエスト目標を達成しました》
「よっしゃー!」
ハヤテが両手を上げる。
「終わった!」
「一体多かったけどね」
「サービス!」
「誰への?」
「ギルド!」
「いらないと思う」
「ふふっ」
セリアが笑う。
シズクも杖を下ろす。
「…………」
「どうしたの?」
俺が聞く。
「いえ」
シズクが小さく笑う。
「戦いやすかったです」
「本当~」
セリアも頷く。
「楽しかった~」
「だろ!」
ハヤテ。
なぜか自慢げ。
「俺達のパーティーいいだろ!」
「今日組んだばっかりだけど」
「細かいことは気にするな!」
「またそれ?」
「ははは!」
「ふふっ」
「…………」
シズクも笑っている。
さっき。
冒険者ギルドで見た時とは違う。
「じゃあ帰るか!」
「うん」
「帰ろ~」
「はい」
《始まりの街》へ戻る。
◇
冒険者ギルド。
受付。
クエスト報告。
ピコン。
《クエストを達成しました》
「よし!」
ハヤテが満足そうに頷く。
「楽しかった!」
「まだ昼だけど」
「もう一個行く?」
「元気だね」
「行こうよ~」
「セリアも?」
「暇だから~」
「私も構いません」
「…………」
二人とも普通にまだ遊ぶ気らしい。
「じゃあ!」
ハヤテが二人を見る。
「フレンド登録しようぜ!」
「またいきなりですね」
シズク。
「だってまた遊ぶだろ?」
「…………」
「遊ばない?」
「いえ」
シズクが少し笑う。
「いいですよ」
「じゃあ登録!」
「私も~」
セリアもメニューを開く。
ピコン。
《セリアからフレンド申請が届きました》
YES。
ピコン。
《シズクからフレンド申請が届きました》
YES。
フレンド。
《ハヤテ》
《たると》
《リンファ》
《セリア》
《シズク》
「…………」
また増えた。
ゲームを始めた日は一人だった。
その日のうちにハヤテとたると。
二週間くらい経ってリンファ。
そして今日。
セリアとシズク。
別に仲間を集めてるわけじゃない。
ただ。
一緒に遊んでまた遊びたいと思った人とフレンドになる。
それだけ。
「ガウー!」
ハヤテが掲示板の前から呼ぶ。
「次これ行こうぜ!」
「もう選んだの?」
「おう!」
「内容は?」
「まだ見てない!」
「見てから呼んでよ」
「ははは!」
「ハヤテさんらしいですね」
「そうだね~」
「…………」
俺も掲示板へ向かう。
五人になったフレンドリストを閉じる。
まだ昼。
リンファが来るのは夜。
たるとは今週いない。
でも。
今日は今日で楽しくなりそうだ。
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