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第7話 また明日

『ハヤテからパーティーへの招待が届きました』


YES。


NO。


「…………」


俺はYESを押した。


ピッ。


『ハヤテのパーティーに参加しました』


目の前に新しい表示が現れる。


《ハヤテ》


《たると》


《ガウ》


三人。


「おぉ」


初パーティー。


ゲームを始めて初日。


まさかこんなに早く誰かとパーティーを組むとは思わなかった。


「よっしゃ!」


ハヤテが嬉しそうに拳を握る。


「これで三人パーティーだ!」


「ですね!」


たるとも嬉しそう。


虎耳がぴょこぴょこ動いている。


「…………」


そんなに嬉しいものなのか。


いや。


俺もちょっと嬉しいけど。


「じゃあ!」


ハヤテが勢いよく振り返る。


「何する!?」


「今から?」


「もちろん!」


元気だな。


「せっかくパーティー組んだんだし、三人で何かやろうぜ!」


「いいですね!」


たるとも乗り気。


「三人で受けられるクエストとか探してみましょう!」


「それだ!」


「…………」


二人とも元気。


俺は。


「その前に」


「ん?」


「俺のクエスト報告」


「あ」


俺達は冒険者ギルドへ向かう。



「お疲れ様でした」


受付の女性が笑顔で頭を下げる。


『クエスト《街道周辺のゴブリン討伐》を達成しました』


『報酬:500Gを獲得しました』


「お」


報酬。


初めて稼いだお金。


500G。


多いのか少ないのか分からない。


「五百かぁ」


隣からハヤテが覗き込んでくる。


「どう?」


「分からん」


「だよな!」


「ハヤテはいくら持ってるの?」


「ほぼない!」


「…………」


聞いた俺が悪かった。


「ガウさん!」


たるとが掲示板の前から手を振っている。


「こっちにいっぱいクエストありますよ!」


「今行く」


俺とハヤテが向かう。


掲示板。


さっき見た時と同じように、様々な依頼が並んでいる。


ゴブリン討伐。


ウルフ討伐。


薬草採取。


素材収集。


荷物運搬。


他にも。


色々。


「どれにする?」


ハヤテが楽しそうに眺める。


「やっぱ討伐だろ!」


「また戦うの?」


「せっかく三人いるんだぞ!」


「私は何でもいいですよ!」


たるとも掲示板を見る。


「採取も楽しそうですね!」


「採取?」


ハヤテが露骨に嫌そうな顔をする。


「いいじゃないですか!」


「地味じゃない?」


「こういうゲームは素材集めも大事なんですよ!」


「俺は剣を振りたい!」


「子供ですか!」


「…………」


さっき会ったばかりなのになんでこんなに普通に話してるんだろう。


俺も掲示板を見る。


討伐。


採取。


探索。


護衛。


「…………」


色々あるな。


何か面白そうなの――。


「ん?」


ふと。


視界の端。


小さな表示に気付いた。


現実時間。


《00:17》


「…………」


俺は二度見する。


《00:17》


「もう十二時過ぎてるじゃん」


「え?」


ハヤテがこっちを見る。


「マジ?」


「ほら」


俺が時間を表示する。


ハヤテも確認。


「うわ、本当だ!」


「もう日付変わってますね」


たるとも時間を見る。


「…………」


気付けばもうこんな時間。


「早いな」


全然そんな感じしなかった。


「VRって時間忘れるな!」


ハヤテが笑う。


「それ危ないやつじゃん」


「楽しいから仕方ない!」


「それもっと危ないやつ」


「でも」


たるとが少し困ったように笑う。


「さすがに今日はもう遅いですし……」


ハヤテを見る。


「…………」


「…………」


「…………」


「また明日にするか!」


切り替え早い。


「そうですね!」


たるとも頷く。


「ガウさんは?」


「俺?」


明日は土曜日。


仕事は休み。


予定もない。


つまり。


「俺はまだできるけど」


「おぉ!」


ハヤテの目が輝く。


「じゃあ俺も――」


「駄目ですよ!」


たると。


「えぇ!?」


「夜更かしはよくないです!」


「母親!?」


「誰が母親ですか!」


「…………」


俺は笑う。


「いいよ」


「いいのか!?」


「明日またやればいいし」


「…………」


明日。


またログインすればいい。


今日全部やる必要なんてない。


「じゃあ明日!」


ハヤテが笑う。


「三人でクエストやろうぜ!」


「はい!」


たるとも笑う。


そして。


二人が俺を見る。


「ガウもな!」


「分かってるよ」


「じゃあ決まり!」


明日。


また三人でゲーム。


「…………うん」


悪くない。


むしろ楽しそう。


「あ」


ハヤテが突然声を上げる。


「今度は何?」


「フレンド!」


「フレンド?」


「登録してない!」


「…………」


そういえば。


パーティーは組んだ。


でもフレンド登録はしてない。


「これ、パーティー解散したらどうやって連絡取るんだ?」


「…………」


「…………」


「…………」


三人で黙る。


「危なっ!」


ハヤテが叫ぶ。


「明日会えないところだった!」


「街に来れば会えるんじゃない?」


「プレイヤー何人いると思ってるんだよ!」


「それもそうか」


発売から一週間。


売上ランキング一位。


《始まりの街》にもかなりのプレイヤーがいる。


待ち合わせ場所も決めてない。


「じゃあフレンド登録しましょう!」


たるとがメニューを操作する。


ピッ。


直後。


『たるとからフレンド申請が届きました』


YES。


NO。


「お」


YES。


『たるととフレンドになりました』


続いて。


『ハヤテからフレンド申請が届きました』


YES。


「これでよし!」


ハヤテが満足そうに頷く。


俺も二人へ申請。


三人。


パーティーメンバー。


そして。


フレンド。


ゲームを始める前には知らなかった二人。


数時間前まで名前すら知らなかった。


「…………」


オンラインゲーム。


こういう感じなのか。


「じゃあ俺、落ちるわ!」


ハヤテがメニューを開く。


「また明日な!」


「はい! また明日!」


たるとが手を振る。


俺も。


「また明日」


「おう!」


ハヤテがログアウトを選択する。


『ハヤテがログアウトしました』


その姿が光の粒子へ変わる。


そして。


消えた。


「…………おぉ」


こうやって消えるのか。


「じゃあ私も!」


たるとが俺を見る。


「今日はありがとうございました!」


「何が?」


「助けてくれたことです!」


「あぁ」


森のことか。


「別にいいよ」


「でも、助かりました!」


たるとが笑う。


「じゃあ、また明日!」


「うん」


「おやすみなさい!」


「おやすみ」


『たるとがログアウトしました』


たるとの身体も光の粒子へ。


消える。


「…………」


静か。


さっきまで。


ハヤテが騒いで。


たるとが笑って。


二人の声がずっと聞こえていた。


なのに。


「…………」


急に静かになったな。


周りには他のプレイヤーもいる。


NPCもいる。


街は賑やか。


それなのに少しだけ静かに感じる。


「…………俺も落ちるか」


俺はメニューを開く。


ログアウト。


選択。


『ログアウトしますか?』


YES。


NO。


「…………」


YES。


ピッ。


視界が白く染まっていく。


街。


プレイヤー。


NPC。


建物。


全部が光の中へ消えていく。


そして。


◇◇◇


「…………」


目を開ける。


天井。


見慣れた。


自分の部屋。


「…………戻った」


俺はヘッドセットを外す。


身体を起こす。


「…………」


自分の手を見る。


男の手。


頭を触る。


狼耳。


ない。


後ろ。


尻尾。


当然ない。


「…………変な感じ」


数時間しか使ってないのに狼耳がないのが変に感じる。


「VRすげぇな」


俺はベッドから降りる。


スマホを見る。


〇時二十三分。


「本当にこんな時間か」


体感ではもっと短かった。


俺はベッドへ座る。


今日。


仕事が終わって。


ゲームショップへ行った。


なんとなく。


売上ランキング一位だったゲームを買った。


それだけ。


別にものすごく期待してたわけじゃない。


死にゲーにも飽きたし。


違うジャンルでもやってみるか。


その程度。


でも。


「…………」


面白かった。


ゴブリンとの戦闘も。


森の探索も。


NPCとの会話も。


全部。


そして。


「ハヤテとたるとか」


二人の名前を口にする。


変なやつら。


今日会ったばかり。


それなのに明日も一緒に遊ぶ約束をした。


「…………」


オンラインゲーム。


悪くないな。


俺はスマホを充電器へ繋ぐ。


部屋の電気を消す。


ベッドへ潜る。


明日は何するんだろう。


三人でクエスト。


それともまたどこか探索するか。


「…………」


考えていたら少し楽しみになってきた。


「寝よ」


目を閉じる。


そして。


眠りにつく。


明日になればまたあの世界で二人に会える。

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