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第4話 森の中の出会い

《ゴブリン Lv.1》


目の前にいる初めての敵。


緑色の肌。


尖った耳。


小柄な身体。


手には粗末な棍棒。


「ギャッ!」


ゴブリンが棍棒を構える。


俺も短刀を構える。


さて。


どうするか。


普通に倒すだけなら簡単そうだけど。


せっかくの初戦闘。


まずは。


「動き見るか」


俺はその場から動かない。


ゴブリンがこちらへ走ってくる。


「ギャアッ!」


遅い。


いや。


まだ分からない。


見た目が遅くても、攻撃に入った瞬間だけ速くなるゲームもある。


俺は短刀を構えたまま待つ。


ゴブリンとの距離が縮まる。


三メートル。


二メートル。


一メートル。


「ギャッ!」


棍棒を振り上げた。


「…………」


そのまま振り下ろす。


ブンッ!


俺は横へ一歩。


ドッ!


棍棒が地面を叩いた。


「お」


避けられた。


しかも。


「かなり自由に動けるな」


決められた回避モーションじゃない。


自分で身体を動かして避けられる。


ゴブリンが棍棒を持ち上げる。


「ギャア!」


もう一度。


今度は横薙ぎ。


俺は少し後ろへ下がる。


ブンッ!


棍棒が目の前を通過した。


「なるほど」


攻撃モーション。


振り下ろし。


横薙ぎ。


今のところ二種類。


攻撃速度は遅い。


それに。


「攻撃した後に隙があるな」


ゴブリンが棍棒を振り切った状態で止まっている。


俺は前へ踏み込む。


キャラクリで選んだ狼獣人。


小柄な身体。


その二つの補正もあるんだろう。


一気にゴブリンの懐へ。


「ここ」


短刀を振る。


ザシュッ!


「ギャッ!?」


ゴブリンの身体に赤いエフェクトが走る。


「お」


なるほど。


ダメージ表現はこうなるのか。


ゴブリンの頭上を見る。


HPバーが減っている。


「一撃じゃないか」


当然か。


初期武器だし。


俺は一度距離を取る。


ゴブリンがこちらを向く。


「ギャアア!」


また走ってくる。


棍棒を振り上げる。


振り下ろし。


「それは見た」


横へ。


回避。


踏み込む。


ザシュッ!


二撃目。


ゴブリンのHPがさらに減る。


「ギャッ!」


反撃。


横薙ぎ。


少し身体を引く。


ブンッ!


目の前を棍棒が通る。


「…………」


面白い。


敵の攻撃を見る。


避ける。


攻撃する。


「ギャアッ!」


ゴブリンが突っ込んでくる。


「よっ」


避ける。


ザシュッ!


三撃目。


ゴブリンのHPがなくなる。


「ギャ……」


身体が光の粒子へ変わる。


そして。


消えた。


『ゴブリンを討伐しました』


『クエスト進行 1/5』


「おぉ」


初討伐。


俺は短刀を見る。


「なるほどな」


悪くない。


いや。


結構楽しい。


死にゲーで鍛えた洞察力。


現実とは違う身体能力。


「慣れたら色々できそうだな」


短刀をくるっと回そうとして。


「…………」


やめた。


落としそう。


格好つけるのはもう少し慣れてからにしよう。


「さて」


残り四体。


俺は周囲を見る。



「ギャアッ!」


ゴブリンが棍棒を振り下ろす。


横へ。


避ける。


「遅い」


ザシュッ!


短刀を振る。


一体。


別のゴブリンが背後から近付いてくる。


狼耳が。


ピクッ。


足音。


聞こえる。


「後ろか」


振り向く。


棍棒。


身体を沈める。


ブンッ!


頭上を通過。


「おぉ」


耳。


便利。


立ち上がる勢いのまま短刀を振る。


ザシュッ!


「ギャッ!」


二体。


最初の一体で動きは大体分かった。


振り下ろし。


横薙ぎ。


たまに突進。


攻撃前の動きも分かりやすい。


「これなら」


ゴブリンが三体。


同時にこちらへ向かってくる。


「いける」


一体目。


振り下ろし。


避ける。


二体目。


横薙ぎ。


一歩下がる。


三体目。


突進。


「よっ」


横へ跳ぶ。


三体が近くに固まる。


「…………」


まとめて攻撃。


は。


無理だな。


短刀だし。


一体ずつ。


踏み込む。


斬る。


離れる。


避ける。


斬る。


ゴブリンの動きを見る。


攻撃の前兆を見る。


隙を見る。


そこへ攻撃を入れる。


単純作業。


だけど楽しい。


そして。


ザシュッ!


最後の一体を斬る。


「ギャ……」


ゴブリンの身体が光の粒子へ変わった。


『ゴブリンを討伐しました』


『クエスト進行 5/5』


続いて。


『クエスト《街道周辺のゴブリン討伐》の達成条件を満たしました』


「終わりか」


俺は短刀を下ろす。


周囲を見る。


ゴブリンはいない。


ダメージなし。


「…………」


短刀を見る。


身体を動かす感覚。


回避。


攻撃。


敵の動き。


全部含めて。


「うん。悪くない」


かなり好きかもしれない。


さて。


クエストは終わった。


街へ戻って報告。


……なんだけど。


「…………」


俺は森を見る。


さっきから気になっていた。


ゴブリンを探している間にも、少しずつ森へ近付いていたらしい。


目の前には木々。


奥は薄暗い。


「…………」


クエストは終わった。


でも。


別にすぐ帰らなくてもいいよな。


オープンワールドなんだし。


「ちょっとだけ見てみるか」


俺は森へ向かった。



「おぉ……」


森へ入る。


草原とは全然違う。


木。


木。


木。


当たり前だけど。


頭上を葉が覆っている。


隙間から差し込む光。


足元には草や落ち葉。


風が吹くたびに、葉が擦れる。


ザワザワ。


草原より少し涼しい。


そして。


「匂いも違うな」


湿った土。


木。


葉。


草原とは全然違う。


「本当に細かいな、このゲーム」


俺は森の奥へ進む。


特に目的はない。


ただの探索。


右を見る。


何もない。


左。


木。


前。


木。


後ろ。


木。


「…………迷わないよな?」


一応マップあるし。


大丈夫だろう。


たぶん。


俺はさらに奥へ。


すると。


狼耳が。


ピクッ。


「…………ん?」


何か。


聞こえた。


俺は足を止める。


耳を澄ます。


風。


葉。


鳥。


それから。


「――助けて!」


「!」


悲鳴。


女の声。


「今の……」


もう一度。


「誰かっ!」


間違いない。


俺は走り出す。


「こっちか!」


木々の間を抜ける。


枝を避ける。


足元の根を跳び越える。


速い。


狼獣人の身体が思った通りに動く。


悲鳴が近付く。


「お願い! 誰か!」


俺は茂みを抜ける。


そして。


「…………!」


少し開けた場所。


複数人の獣人がいた。


装備らしい装備はない。


周囲にはゴブリン。


一体。


二体。


三体。


さらに。


「ウルフ……?」


四足歩行。


灰色の毛。


牙。


二体。


頭上に表示されている。


《ウルフ Lv.2》


ゴブリン三体。


ウルフ二体。


合計五体。


獣人たちを囲んでいる。


「いやいや」


初心者エリアじゃないのか?


さっきのゴブリン五体とは話が違う。


「た、助けて……」


「…………」


NPC。


ゲームのキャラクター。


分かっている。


それでも。


あんな顔で助けを求められたら。


「助ける!」


俺は短刀を抜く。


走り出す。


その瞬間。


ガサッ!


「!?」


横の茂みが大きく揺れた。


誰かが飛び出してくる。


「おおおっ!」


「え?」


青年。


プレイヤー。


軽装。


そして。


腰には。


「剣……二本?」


普通の片手剣。


それを左右の腰に一本ずつ装備している。


青年は獣人たちを見る。


ゴブリンを見る。


ウルフを見る。


そして。


目を輝かせた。


「お!何かのイベントか!」


「…………」


なんだこいつ。


青年は迷うことなく剣を抜く。


一本。


そして。


もう一本。


両手に剣。


二刀流。


「よっしゃ!」


青年が笑う。


「助ければ何か貰えるかもしれないな!」


「そっち!?」


思わずツッコんだ。


青年が俺を見る。


「ん?」


「いや、なんでもない!」


今はそれどころじゃない。


ゴブリンがこちらに気付く。


「ギャアッ!」


ウルフも。


「グルルル……!」


敵の視線が俺達へ向く。


青年は二本の剣を構えた。


「五体か!」


その顔に怯えはない。


むしろ。


楽しそう。


「ちょうどいい!」


俺も短刀を構える。


NPCを助ける。


まずはそれ。


青年が俺を見る。


「そっち三体いける!?」


初対面。


名前も知らない。


なのに。


「いける!」


即答。


「じゃあ任せた!」


「了解!」


青年が飛び出す。


俺も地面を蹴った。

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