↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
153/207

第3話 初めてのクエスト

目の前に浮かぶ半透明のウィンドウ。


メニュー。


ステータス。


装備。


アイテム。


スキル。


マップ。


ゲームを始めて最初に苦戦したのが、まさかメニュー画面を開くことになるとは思わなかった。


「まあ、開けたからいいか」


細かいことは気にしない。


さて。


何から見よう。


ステータスも気になる。


スキルも気になる。


装備は――。


「短刀しかないしな」


後でいい。


となると。


「まずはマップか」


マップ。


ポチッ。


ウィンドウが切り替わる。


第一階層《始まりの大地》。


「おぉ……広いな」


現在地を示す印。


その周囲には草原。


森。


山。


川。


そして。


「街あるじゃん」


今いる場所から、ほぼ真っ直ぐ。


それほど離れていない場所に街が表示されている。


《始まりの街》。


「…………そのまんまだな」


第一階層《始まりの大地》。


そして《始まりの街》。


分かりやすくていいけど。


「とりあえず、ここ行くか」


ゲームを始めたばかり。


何をすればいいのかも分からない。


こういう時は街へ行けばだいたい何かある。


俺はマップを閉じる。


閉じ方は。


「…………」


左手首。


右手の人差し指。


ピッ。


消えた。


「よし」


もう覚えた。


完璧。


チュートリアルなんて必要なかったな。


…………たぶん。


俺は《始まりの街》がある方向へ歩き始めた。



「…………」


歩く。


ひたすら歩く。


「本当に何でもない草原だな」


周りにあるのは草。


草。


たまに花。


そして草。


遠くには他のプレイヤーがいる。


剣を持って走っている人。


何人かで固まって歩いている人。


地面に座り込んで何かを話している人。


すでに装備が整っているプレイヤーもいる。


発売から一週間。


俺より先に始めた人達だろう。


「あれ、かっこいいな」


少し離れた場所を歩いているプレイヤーを見る。


金属製の鎧。


背中には大きな剣。


それに比べて俺は。


白いTシャツ。


半ズボン。


短刀。


「…………初心者感すごいな」


まあ。


初心者なんだけど。


ふわっ。


風が吹く。


狼耳が勝手に動く。


ピクッ。


「…………」


まだ慣れない。


風。


草の匂い。


自分の足で地面を踏んでいる感覚。


本当に歩いている。


「すごいなぁ……」


ゲームだと分かっているのについ周りを見てしまう。


普段のゲームなら目的地まで一直線。


景色なんてほとんど見ない。


でも。


これは。


「寄り道したくなるな」


遠くに見える森。


山。


川。


どこまで行けるんだろう。


何があるんだろう。


オープンワールド。


なるほど。


こういう感じなのか。


「…………ん?」


歩いていると。


前方に何かが見えてきた。


壁。


建物。


そして。


大きな門。


「あれか」


《始まりの街》。


俺は少し歩く速度を上げた。



「おぉ……」


門を潜った瞬間。


思わず声が出た。


街。


石造りの建物が並んでいる。


道の両側には店。


武器屋。


防具屋。


道具屋。


食べ物を売っている店まである。


「いらっしゃい! 安いよ!」


「初心者用の武器ならこっちだ!」


「ポーションはいかがですかー!」


あちこちから声が聞こえる。


そして。


人が多い。


プレイヤー。


NPC。


プレイヤー。


NPC。


「…………」


どれがどっちだ?


頭の上を見る。


プレイヤーには名前が表示されている。


NPCにも名前はある。


でも。


「見た目じゃ全然分からないな」


道端で話しているNPC。


店で商品を並べているNPC。


荷物を運んでいるNPC。


笑っている。


話している。


普通に生活している。


「最近のNPCってこんな感じなのか……?」


俺が最後にやったRPGのNPCなんて。


同じ場所に立って。


話しかけたら。


『ここは○○の街です』


それくらいだった気がする。


でも。


目の前のNPC達は違う。


歩いている。


仕事をしている。


会話をしている。


まるで。


本当にこの街で暮らしている人みたいだ。


「すげぇな……」


さっきからそればっかり言ってる気がする。


でも仕方ない。


すごいものはすごい。


「さて」


観光しに来たわけじゃない。


何かゲームらしいことをしよう。


俺は周囲を見る。


すると。


少し先。


何人ものプレイヤーが集まっている場所があった。


大きな建物。


入口の上には看板。


剣と盾。


「…………いかにもって感じだな」


近付いてみる。


中へ入る。


「おぉ」


広い。


正面には受付。


壁には大きな掲示板。


テーブルや椅子も並んでいる。


武器を持ったプレイヤー達が歩き回っている。


「冒険者ギルド的な場所か?」


こういうファンタジーゲームでは定番だ。


とりあえず受付へ。


俺は空いているところへ向かう。


受付には女性が立っていた。


NPC。


だよな?


「あの」


声をかける。


女性がこちらを見る。


「はい。どうされました?」


「…………」


自然。


「えっと……クエストとか受けたいんですけど」


「初めての方ですね?」


「あ、はい」


「でしたら、まずは初心者向けの依頼をおすすめします」


「初心者向け」


「はい。危険度が低く、戦闘に慣れていない方でも受けやすい依頼です」


「なるほど」


会話が成立してる。


いや。


NPCなんだから当たり前なのかもしれないけど。


なんというか。


「…………」


「どうされました?」


「あ、いや。なんでもないです」


首まで傾げたぞ。


本当にNPCか?


「初心者向けの依頼でしたら、そちらの掲示板から確認できますよ」


受付の女性が壁を指差す。


「あそこですか」


「はい。受けたい依頼を選択すれば、詳細が表示されます」


「ありがとうございます」


「お気を付けて」


俺は受付から離れる。


「…………すげぇな、NPC」


普通に人と話してるみたいだった。


ゲームショップの店員。


なんでこれ教えてくれなかったんだ。


VRの景色より、こっちの方がびっくりするぞ。


掲示板へ向かう。


何枚もの依頼が表示されている。


『薬草採取』


『スライム討伐』


『ウルフ討伐』


『ゴブリン討伐』


『荷物運搬』


他にも色々。


「おぉ……クエストっぽい」


何にしよう。


採取。


「…………地味だな」


荷物運搬。


「…………仕事終わりにゲームで仕事したくない」


却下。


となると。


やっぱり。


「戦闘だな」


せっかくファンタジーゲームを始めたんだ。


まずは敵と戦ってみたい。


スライム。


ウルフ。


ゴブリン。


「…………」


俺の指が止まる。


『ゴブリン討伐』


「やっぱ最初はゴブリンだよな」


ファンタジーと言えばゴブリン。


初心者の敵と言えばゴブリン。


そんなイメージ。


俺は依頼を選択する。


ピッ。


目の前にウィンドウが表示された。


『クエスト《街道周辺のゴブリン討伐》』


『推奨レベル:1』


『討伐対象:ゴブリン』


『討伐数:5体』


『報酬:500G』


『始まりの街周辺に出没するゴブリンを5体討伐してください』


「五体か」


ちょうどいい。


推奨レベルも1。


今の俺でも問題ないだろう。


『このクエストを受注しますか?』


YES。


NO。


「もちろん」


YES。


ポチッ。


『クエスト《街道周辺のゴブリン討伐》を受注しました』


「よし」


初クエスト。


なんかワクワクする。


俺は掲示板から離れる。


受付の女性がこちらを見る。


「依頼は決まりましたか?」


「はい。ゴブリン討伐にしました」


「街の外へ出る際はお気を付けください。ゴブリンは一体一体はそれほど強くありませんが、複数で行動している場合があります」


「分かりました」


「無理はなさらないように」


「ありがとうございます」


俺は建物を出る。


「…………」


やっぱり。


NPCとの会話。


自然すぎる。


まあ。


今はいいか。


まずはクエスト。


俺は街の門へ向かう。


さっき入ってきた門を抜ける。


再び草原。


「さて」


腰にある短刀へ触れる。


初期武器。


防具なし。


レベル1。


完全な初心者。


でも。


「初戦闘か」


少し楽しみだ。


クエストの目的地をマップで確認する。


街から少し離れた草原。


それほど遠くない。


「行ってみるか」


俺は歩き出した。



街から離れる。


少しずつプレイヤーの数が減っていく。


草原。


風。


遠くに森。


「この辺か?」


マップを確認する。


クエスト対象の出現範囲。


入っている。


俺はメニューを閉じる。


周囲を見る。


「…………」


いない。


少し歩く。


「…………」


まだいない。


さらに歩く。


すると。


狼耳が。


ピクッ。


「ん?」


何か聞こえた。


草が擦れる音。


俺はそちらを見る。


少し離れた場所。


背の高い草が揺れている。


ガサッ。


「…………」


何かいる。


俺は腰の短刀へ手を伸ばす。


ガサガサッ。


そして。


草の中から。


小さな影が姿を現した。


緑色の肌。


尖った耳。


小柄な身体。


手には粗末な棍棒。


頭上に表示された名前。


《ゴブリン Lv.1》


「お」


いた。


ゴブリンはこちらを見る。


「ギャッ!」


棍棒を構える。


俺も短刀を鞘から抜いた。


シャッ。


初めての敵。


初めての戦闘。


どんな動きをする?


どのくらい速い?


攻撃の判定は?


回避はどこまで自由にできる?


試してみたいことが、一気に頭へ浮かんでくる。


俺は短刀を構えた。


「さて」


自然と口元が緩む。


「どんな感じかな」

よろしければ感想や評価、ブックマークで応援していただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。