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第40話 繋がる世界

騒動が終わった。


「…………」


フェリシア。


正門。


風。


フェリシアの旗が揺れている。


「…………」


アレン。


ダリオ。


元《深淵の剣》の人たち。


まだ泣いてる。


「アレン」


「…………はい」


「大丈夫?」


「……大丈夫です」


目か真っ赤。


「泣いてる」


「…………」


「すみません」


「謝らなくていいいよ」


俺は優しく微笑んだ。


「アレン」


ダリオが鼻をすすりながら肩を叩く。


「仕事だ」


「…………」


「そうだな」


二人。


顔。


ぐしゃぐしゃ。


でも。


警備隊の方を見る。


「皆!」


アレンが声を上げた。


「持ち場へ戻ってください!」


「騒がせてしまって申し訳ありませんでした!」


「はい!」


「了解です!」


「隊長も休んでくださいよ!」


「顔すごいですよ!」


「…………」


アレンが固まる。


「そんなに?」


「ひどいぞ」


ダリオ。


「お前もだろ」


「…………」


「…………」


二人が顔を見合わせる。


「はは……」


「…………」


少し笑った。


「では!」


たるとの声。


「皆さん!」


振り返る。


「本当にありがとうございました!」


頭を下げる。


「お騒がせしました!」


「たると」


「はい?」


「背中」


「…………」


虎耳が止まる。


「背中?」


「斬られたでしょ」


「…………」


「あ」


忘れてたみたい。


「そういえば!」


「そういえばじゃない」


「でも!」


たるとがくるっと回る。


「もうそんなに痛くないですよ!」


「…………」


背中。


服。


斬られた跡。


赤いダメージエフェクトが残ってる。


つんっと指でつついてみた。


「痛!?」


「ほら痛いじゃん」


「たるとちゃん~?」


「…………」


声。


セリア。


「…………」


たるとの虎耳がゆっくり下がる。


「セリアさん?」


「こっち来ようか~?」


「…………」


笑顔が怖い。


「いや、その……」


「回復しないとね~?」


「自然回復でも――」


「たるとちゃん~?」


「…………」


「はい」


強制連行。



城。


休憩室。


「《ヒール》~」


淡い光。


「おお……!」


椅子。


たると。


背中の傷が少しずつ消えていく。


「すごいです!」


「動かないでね~」


「はい!」


「…………」


周囲。


俺。


ハヤテ。


ゴウマ。


リンファ。


シズク。


アイス。


サイオン。


バレット。


ガンテツ。


ノエル。


ヨミ。


モルフォ。


その他たくさん。


「…………」


たるとが周囲を見る。


「皆さん?」


「…………」


誰も喋らない。


「どうしました?」


「…………」


シズク。


「たるとさん」


「はい!」


「なぜ避けなかったのですか?」


「…………」


虎耳。


ぴくっ。


「えっと」


「なぜ避けなかったのですか?」


もう一回。


「アレンさんが危なかったので!」


「それは分かっています」


「はい!」


「ですから」


シズク。


ものすごい笑顔。


「なぜ自分の身体で受けたのですか?」


「…………」


たるとの目が泳ぐ。


「その時は……」


「身体が勝手に……」


「勝手に?」


「…………」


シズク怖い。


「たるとちゃん~」


セリア。


「はい!」


「動かないでね~」


「はい!」


「あと~」


回復しながら。


「シズクちゃんの言う通りだよ~」


「セリアさん!?」


逃げ場がない。


「ったく」


ハヤテが頭を掻く。


「アレンを庇うのは分かるけどよぉ」


「はい!」


「剣を背中で受ける奴があるか!」


「ご、ごめんなさい!」


「お前に何かあったらどうすんだ!」


「はい!」


「反省してるか!?」


「してます!」


「本当に!?」


「してますぅ!」


虎耳。


ぺたん。


「私も今回はたるとが悪いと思うわ」


リンファ。


「リンファまで!?」


「までじゃない!」


「…………」


「相手の剣を止める方法は他にもあったでしょう?」


「はい……」


「シズクに結界を頼む」


「はい……」


「ガウに止めてもらう」


「はい……」


「ゴウマでもいい」


「おう」


「ハヤテでも」


「ああ」


「ノエルでも」


「はい」


「ガンテツでも」


「任せろ!」


「バレットなら射抜けたでしょうし」


「必要ならな」


「アイスでも」


「できる」


「サイオンなら――」


「…………」


全員。


サイオンを見る。


「…………」


空中。


ふわふわ。


「おいらッスか?」


「…………」


「何かできる?」


「流銀の出番ッス!」


サイオンが空中でじたばたする。


「話を戻しましょう」


ノエル。


丁寧な声。


たるとを見る。


「たるとさん」


「はい……」


「今回は私も庇えません」


「ノエルさんまで!?」


「代表であるたるとさんが、自ら危険へ飛び込むことは避けていただきたいです」


「…………」


「もちろん」


ノエルが微笑む。


「アレンさんを守ろうとしたこと自体は、間違っていたとは思いません」


「!」


虎耳。


少し立つ。


「ですが」


「…………」


また下がる。


「ご自身を犠牲にする方法を選ぶ必要はありません」


「……はい」


「次からは私を呼んでください」


「はい!」


「私の方が頑丈ですので」


「それはそう」


俺が言う。


「ガウ!」


「なに?」


「そこは何か違いません!?」


「ノエルの方が硬いよ」


「ステータスの話じゃありません!」


飛び火した。


モルフォが話す。


「たるとさん、この世界では死んだら終わりですからね」


「はい……」


たると。


尻尾がだらんと床につく。


「俺からも一ついいか?」


ゴウマ。


「…………」


たると。


ものすごく嫌そう。


「まだあるんですか?」


「ある」


「…………」


「国の代表が」


ゴウマが腕を組む。


「一番最初に斬られてどうする」


「…………」


「はい」


「今回みたいなことは」


「…………」


「二度とするな」


「……はい」


「分かったか?」


「分かりました……」


完全にしょんぼり。


「…………」


たると。


きょろきょろ。


「…………」


俺を見る。


「ガウ」


「なに?」


「…………」


目。


助けて。


「今回はたるとが悪い」


「ガウまでぇ!?」


虎耳。


ぶわっ。


「なんでですか!」


「斬られたから」


「アレンさんを守ったんですよ!?」


「うん」


「だったら!」


「でも」


たるとを見る。


「たるとが死んだら嫌だし」


「…………」


止まった。


「…………」


「だから」


「次は斬られないで」


「…………」


たると。


顔。


赤い。


「……はい」


小さい。


「分かりました」


「うん」


「…………」


セリア。


にやにや。


「なに?」


「なんでもないよ~」


「そう」


「ガウちゃんらしいな~って」


「?」


セリアが杖を離す。


「治療終わり~!」


「本当ですか!?」


たるとが立ち上がる。


背中の傷が消えてる。


「痛くないです!」


「よかったね~」


「ありがとうございます!」


「でも~」


「?」


「次また同じことしたら~」


笑顔。


「もっと怒るからね~?」


「……はい」



「さて!」


たるとが元気になった。


「それでは!」


「…………」


全員。


嫌な予感。


「ヴァレンティアへ行くメンバーの話を――」


「明日にしないか?」


ゴウマ。


「え?」


「さすがに疲れた」


「…………」


「俺も」


ハヤテ。


「今日はもういいだろ」


「ハヤテまで!?」


「朝から色々ありすぎた」


「…………」


確かに。


「僕も賛成」


アイス。


「アイスさん!?」


「頭が働かない」


「…………」


「僕は帰って寝たい」


「昨日も眠そうでしたよね!?」


「まだ足りない」


グランヴァルの訓練怖い。


「俺も帰るぞ!」


ガンテツが立ち上がる。


「腹減った!」


「ガンテツさん!」


「飯だ飯!」


「まだお昼ですよ!?」


「昼飯食ってねぇ!」


「…………」


そういえば食べてない。


「私もお腹空いた」


「ガウ!?」


「ご飯」


「…………」


たるとの虎耳が下がる。


「みんな……」


「もうちょっとだけ……」


「たると」


リンファが肩を叩く。


「今日は休みましょう?」


「…………」


「でも」


「ヴァレンティアは逃げないわよ」


「…………」


「たぶん」


「たぶん!?」


「ふふっ」


リンファが笑う。


「冗談よ」


「もう!」


「それに」


シズク。


「たるとさんも休んでください」


「私は回復しました!」


「傷が治っただけです」


「…………」


「朝から色々ありました」


「……はい」


「精神的にも疲れているはずです」


「…………」


たると。


周囲を見る。


全員。


帰りたい顔。


「…………」


虎耳。


しょぼん。


「分かりました」


「では!」


立ち上がる。


「ヴァレンティアへ行くメンバーについては、また後日!」


「おう」


「分かった」


「異議なし」


「はい」


「飯だ!」


「ガンテツはそれしか言わないね」


「うるせぇ!」


「…………」


バレット。


もういない。


「バレットは?」


「帰ったぞ」


ハヤテ。


「いつ?」


「説教が終わった辺り」


「…………」


早い。


「もう!」


たるとが頬を膨らませる。


「みんな自由すぎます!」


「いつも通りじゃない?」


「そうですけど!」


「じゃあいいじゃん」


「よくありません!」


「…………」


いつものフェリシアに戻った。



午後。


街。


「…………」


静か。


いや。


静かじゃない。


商業区から声。


「そっちお願い!」


ユナ。


「分かりました」


エリック。


荷物を運んでる。


警備隊。


巡回。


アレン。


「こちらは問題ありません!」


まだ目が少し赤い。


ダリオもいる。


弓兵隊。


外壁。


バレット。


カイル。


エルナ。


訓練してる。


盾兵隊。


ノエル。


隊列を確認してる。


その横。


「だから俺を入れろって!」


ガンテツ。


「隊列を乱すので駄目です」


「なんでだ!」


「昨日説明しました」


怒られてる。


畑。


港。


研究所。


住宅街。


いつも通り。


「…………」


少し前まで。


この場所は。


小さな集落だった。


《王虎の牙》。


それくらいしかいなかった。


「…………」


今は。


人がいる。


たくさん。


知らない人もいる。


他のギルドから来た人。


助けた人。


助けてもらった人。


昔は敵だった人。


NPC。


プレイヤー。


子ども。


大人。


「…………」


全部。


フェリシア。


「ガウ!」


「?」


後ろからたると。


「どこ行くんですか?」


「ご飯」


「まだ食べるんですか!?」


「お腹空いた」


「さっき食べたでしょう!?」


「食べた」


「じゃあなんで!?」


「お腹空いたから」


「…………」


たるとが呆れてる。


「ガウって」


「なに?」


「変わりませんね」


「そう?」


「はい」


「…………」


「たるとも」


「え?」


「変わってないよ」


「…………」


虎耳が動く。


「そうですか?」


「うん」


「…………」


たるとがフェリシアを見る。


「私は」


少し考える。


「変わったと思います」


「そう?」


「はい」


「だって」


「こんなにたくさんの人がいるんですよ?」


「うん」


「国までできました」


「うん」


「他の国とも知り合いました」


「うん」


「同盟も」


「うん」


「交易のお話まで!」


「うん」


「…………」


少し笑う。


「最初は」


「ただ」


「みんなで楽しく遊べたらいいなって」


「それだけだったんですけどね」


「…………」


「今もそうじゃない?」


「え?」


「楽しく遊んでる」


「…………」


「みんなで」


「…………」


瞬き。


「そうですね」


笑った。


「はい!」


「そうでした!」


「…………」


虎耳。


ぴん。


「それじゃ!」


「私は一度、城に戻ります!」


「うん」


「ガウは?」


「ご飯」


「…………」


「本当に食べるんですか?」


「うん」


「太りますよ?」


「ゲームだから大丈夫」


「ずるい!」


「たるとも食べる?」


「…………」


「食べます!」


食べるんだ。



夕方。


城。


「…………」


私は廊下を歩いていた。


窓。


赤い空。


フェリシア。


街。


港。


外壁。


遠くには街道。


まだ途中。


これから。


もっと伸びる。


人も来る。


知らない人。


知らない国。


知らないギルド。


「…………」


私は少しだけ立ち止まった。


そして。


自分の部屋へ。


ガチャッ。


「…………」


扉を閉める。


静か。


誰もいない。


いつも使っている机。


椅子。


棚。


窓。


そして。


部屋の奥。


「…………」


一本の杖。


魔法の杖。


大切に飾られている。


「…………」


私はゆっくり歩く。


杖の前で立ち止まる。


「…………」


しばらく。


何も言わない。


窓から差し込む夕日。


杖を照らす。


「…………」


私の手をそっと杖に触れた。


「…………」


今日。


色んなことがあった。


《深淵の剣》。


アレン。


ダリオ。


ヨミ。


被害者たち。


泣いた。


怒られた。


みんなで話した。


そして。


また。


いつものフェリシアに戻った。


「…………」


少しだけ笑う。


「なんとか」


小さな声。


「終わりました」


「…………」


返事はない。


それでも。


私は杖から手を離さない。


「色んな人が増えました」


「…………」


「国までできちゃいました」


小さく笑う。


「私が王様なんて呼ばれてるんですよ?」


「…………」


「変ですよね」


「…………」


風。


窓の外。


フェリシアの旗が揺れる。


「…………」


私は杖を見る。


「でも」


「…………」


「みんな笑ってます」


「…………」


少し。


目を細める。


「だから」


一拍。


「これでよかったのかなって」


「…………」


そして。


名前を呼ぶ。


「マルコさん」


「…………」


杖を優しく撫でる。


「見てくれていますか?」


「…………」


夕日。


一本の魔法の杖。


そして。


「私たち」


小さく笑った。


「こんなに大きなギルドになりました」

第40話を読んでいただきありがとうございます!


これにて、第4章《繋がる世界》完結です!


次章は少しだけ時間を遡ります。


まだ《王虎の牙》が、今の《王虎の牙》になる前のお話。


第5章。


《王虎の牙》結成編、スタートです!


ここまで第4章を読んでいただき、本当にありがとうございました!


次章もよろしくお願いします!

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