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第14話 忍と軍師

少し離れた場所では、バレットとサイオンの勝負が決着を迎えていた。


しかし――。


「……。」


「……。」


仲間の勝敗よりも、目の前の相手。


その一瞬の油断が敗北へ繋がることを、互いによく知っている。


青い髪が風に揺れ、小さな杖をゆっくりと構える。


俺は《朧》を構え直す。


その瞬間だった。


杖の先端が淡く青白く輝く。


「――《氷柱槍》。」


パキィィィッ!!


俺の足元が一瞬で凍り付く。


次の瞬間。


ドドドドドドッ!!


無数の氷柱が地面を突き破りながら襲い掛かってきた。


一本道ではない。


俺の逃げ道を読むように。


挟み込むように。


何本もの氷柱が連続して突き上がる。


「っ!」


俺は地面を蹴った。


一本目をかわす。


二本目は身体をひねる。


三本目は《朧》を振るい、真っ二つに斬り裂く。


ガキィィィン!!


砕けた氷が陽光を受け、無数の結晶となって宙を舞った。


「……。」


アイスの表情は変わらない。


冷静。


まるで盤上で駒を動かすように、俺の動きを観察している。


(なるほど。)


俺は心の中で笑う。


(攻めるというより、追い込む戦い方か。)


相手が動く先を予測し、そこへ攻撃を置く。


まさに軍師らしい戦い方だ。


「なら!」


俺は氷柱へ飛び乗った。


アイスの眉がわずかに動く。


一本目の氷柱。


そこからさらに二本目へ跳ぶ。


三本目。


四本目。


まるで森の木々を渡るように、氷柱そのものを足場にして駆け抜けていく。


「僕の技を利用するか。」


アイスはすぐに杖を振る。


「――《氷壁》。」


パキパキパキッ!!


ガウの進行方向を塞ぐように、巨大な氷壁が瞬時に現れた。


高さは三メートル近い。


真正面から突破するのは難しい。


だが。


「予想通り。」


俺は小さく笑った。


アイスは近距離を嫌う。


距離を詰められそうになると、必ず《氷壁》を展開する。


その"癖"が見え始めていた。


俺は勢いを殺さず、そのまま氷壁へ向かって駆ける。


「止まらない?」


アイスが目を細めた。


次の瞬間。


俺は氷壁を蹴り上げ、一気に頭上へ跳躍する。


「上か!」


アイスが即座に杖を向ける。


「――《氷礫》。」


アイスが静かに呟く。


パキパキッ!!


先ほど砕け散った氷柱の破片が一斉に宙へ浮かび上がった。


数十。


いや、百はある。


鋭く尖った氷片が、青白い光を纏いながらガウへ狙いを定める。


「撃て。」


ヒュンッ!!


ヒュンッ!!


ヒュンッ!!


氷礫が豪雨のように降り注いだ。


「……!」


俺は空中で身体を捻る。


一枚目をかわす。


二枚目は肩を沈めて避ける。


三枚目は《朧》で弾く。


ガキィン!!


火花のように氷が砕け散る。


しかし、氷礫は止まらない。


右から。


左から。


そして背後から。


俺の着地点を読むように飛んでくる。


「さすが。」


俺は着地と同時に前転し、氷礫の雨を抜ける。


そのまま一気に間合いを詰める。


「近付かせない。」


アイスが杖を前へ突き出す。


「――《氷壁》。」


パキィィッ!!


二人の間へ巨大な氷壁がせり上がる。


まただ。


俺が一定距離まで近付くと、必ず《氷壁》を展開する。


なら。


「利用させてもらう。」


俺は走る方向を変えない。


氷壁へ飛び込み、その直前で地面を蹴る。


壁を蹴る。


さらに身体を捻る。


まるで壁そのものが足場であるかのように、氷壁の側面を駆け上がった。


「また上か!」


アイスが即座に杖を向ける。


しかし。


それも読んでいる。


空中で腰のポーチからクナイを抜く。


シュッ!!


シュッ!!


二枚同時。


一本は杖を持つ手、もう一本はアイスの足。


アイスは冷静だった。


「――《氷壁》。」


再び氷壁を展開。


二枚のクナイが氷壁に刺さる。


だが。


その一瞬だけ。


アイスの視界は完全に氷壁へ向いていた。


「……!」


アイスの瞳がわずかに揺れる。


気付いた時には。


俺の姿は、正面から消えていた。


「どこだ。」


草原を吹く風だけが静かに流れる。


(消えた……?)


アイスは初めて表情を変えた。


俺は氷壁の影へ身を潜めていた。


勝負は、一瞬。


俺は《朧》の柄へ静かに手を添えた。


アイスは周囲へ視線を巡らせる。


右。


左。


背後。


どこにもガウの姿はない。


(消えた……?)


いや、違う。


気配はまだ近い。


だが見えない。


その時だった。


アイスの背後で音が鳴る。


パキッ!


「!」


アイスは反射的に振り向く。


同時に杖を構えた。


「――!」


そこにはクナイが地面に刺さっていた。


「ちっ!」


アイスが正面を向き詠唱。


「《氷壁》!」


しかし。


「遅い!」


静かな声。


「なっ――」


アイスの目が見開かれる。


声は正面ではない。


真横。


氷壁の影からだった。


ガウは氷壁が生まれる瞬間、その死角へ滑り込んでいた。


「読まれていたか。」


アイスが小さく呟く。


「うん。」


私は素直に頷く。


間合いはもう一歩。


《朧》の届く距離。


アイスも理解していた。


この距離では魔法は間に合わない。


それでも軍師は最後まで諦めない。


杖を振り上げる。


「――《氷槍》!」


パキパキッ!!


無数の氷槍が至近距離から生み出される。


だが。


「遅い。」


俺は一歩踏み込んだ。


氷槍が伸び切るより早く、アイスの懐へ潜り込む。


黒い刀身が静かに走る。


「これで終わり。」


《朧》の切っ先が、アイスの胸元へ突き立てられた。


ドスッ。


アイスは動きを止めた。


そして。


ピシッ。


青い魔法石に一本の亀裂が走る。


続いて。


パリンッ!!


乾いた音と共に、魔法石は砕け散った。


勝負あり。


草原に静寂が戻る。


俺はゆっくりと《朧》を引き抜き、一歩下がる。


アイスは砕けた魔法石を見つめ、小さく息を吐く。


「……完敗だ。」


その表情に悔しさはあった。


だが、それ以上にどこか納得したような笑みが浮かんでいた。


「君は強い。」


「いや。」


私は首を横に振る。


「あなたも強かった。」


二人は互いに武器を収める。


決闘は終わった。


誤解から始まった戦いだったが、この一戦で互いの実力は十分に伝わった。


草原には、戦いを終えた者だけが持つ穏やかな空気が流れていた。

決着!


次回もお楽しみに!


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