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第12話 白銀戦線

草原の中央。


決闘システムによって生み出された二組の魔法石が淡く輝く。


俺とバレット。


アイスとサイオン。


二対二。


互いに向かい合う。


「決闘を開始する。」


アイスが静かに告げる。


四人の魔法石が同時に光を放った。


これで決闘成立だ。


「行くッス!」


開始と同時に動いたのはサイオンだった。


銀髪の青年が空を蹴るように飛び、一直線にバレットへ迫る。


「速っ……!」


思わず声が漏れる。


純粋な機動力だけなら、今まで戦った誰よりも速い。


だが。


バレットは慌てない。


弓を構え、ギリギリまで引きつける。


ヒュンッ!!


放たれた矢は一直線。


しかしサイオンは空中で身体をひねり、紙一重で回避した。


「当たらないッス!」


「そうか。」


バレットは即座に二本目を放つ。


三本目。


四本目。


矢が休みなく飛ぶ。


空中を縦横無尽に飛び回る。


「速いな……。」


俺がそう呟いた瞬間だった。


「余所見とは余裕だな!」


足元が凍る。


「っ!」


咄嗟に飛び退く。


直後。


俺が立っていた場所から巨大な氷柱が突き出した。


「危ないな。」


青髪の青年――アイスが静かに小さな杖を構えている。


「戦闘中だ。集中した方がいい。」


「ご忠告どうも。」


俺は《朧》を抜いた。


黒い刀身が陽光を鈍く反射する。


地面を蹴る。


一気に距離を詰める。


ガキィィン!!


朧が氷の障壁へ叩きつけられる。


「……!」


一瞬で氷壁を作ったのか。


戦闘能力も高い。


俺はそのまま身体を捻り、腰から六角手裏剣を放つ。


シュッ!!


一直線。


死角を狙った一撃。


しかし。


パキパキッ!


新たな氷壁が現れ、全て弾き落とされた。


「遠近ともに隙がないか。」


「君もな。」


アイスは表情一つ変えない。


その頃。


サイオンは後方へ大きく飛び退いた。


バレットも深追いはしない。


静かに距離を取り、一本の矢を番える。


一定の間合いを保つ。


付かず。


離れず。


弓使いだからこその距離だった。


「いやー。」


サイオンが苦笑する。


「ここまで出来る弓使いとは思わなかったッス。」


「でも。」


「弓使い相手に負ける気はしないッスよ。」


そう言って右手を前へかざした。


その瞬間だった。


じわり、と。


サイオンの掌から銀色の液体が溢れ出す。


水のように揺れながらも、陽の光を反射して鈍く輝く。


「……何だ、あれ。」


バレットは思わず呟いた。


銀色の液体は空中を漂い、サイオンの周囲をゆっくり旋回する。


まるで意思を持っているようだった。


サイオンは得意げに笑う。


「これは僕の魔力で生成した液体金属ッス。」


「液体金属?」


バレットが矢を番えたまま眉をひそめる。


「その通りッス!」


「自由自在に形を変えられる、自慢の能力ッス!」


サイオンが指先を軽く動かす。


すると漂っていた液体金属が、一か所へ集まり始めた。


ぐにゃり。


ぐにゃり。


形を変えながら圧縮されていき――。


一本の銀色の槍となる。


盾。


鎖。


大剣。


液体金属は次々と姿を変え、最後には再び一本の槍へ戻った。


「能力を喋っていいのか?」


バレットが静かに尋ねる。


「いいんスよ。」


サイオンはあっけらかんと笑う。


「能力が分かったところで、どって事ないッス。」


その自信には一切の迷いがなかった。


俺は思わず苦笑する。


「……アイスも苦労してそうだな。」


少し離れた場所では、アイスが小さくため息をついていた。


「その癖は直らないか……。」


サイオンはそんなことは気にも留めず、指先を前へ向ける。


「《流銀槍》ッス!」


その瞬間。


銀色の槍が独りでに宙へ浮かび上がった。


サイオンは槍を握らない。


指先を動かすだけ。


ヒュンッ!!


槍が生き物のように空を駆ける。


一直線ではない。


右へ。


左へ。


急上昇。


急降下。


サイオンの指先に合わせ、槍は縦横無尽に軌道を変えながらバレットへ襲い掛かる。


「……操ってるのか!」


バレットが静かに呟く。


ヒュンッ!!


槍が目前まで迫る。


バレットはギリギリまで引きつけ――。


ヒュンッ!!


矢を放つ。


ガキィィィン!!


矢が槍を弾き飛ばした。


普通なら地面へ落ちる。


だが。


「まだ終わりじゃないッス!」


サイオンが指を払う。


弾かれた槍が空中でくるりと反転。


再びバレットへ襲い掛かった。


「……!」


今度は横から。


バレットは身体をひねって回避する。


だが槍は追い掛けるように旋回。


逃がさない。


まるで空を泳ぐ竜のように。


「面白い。」


バレットは静かに呟く。


そして矢を放つ。


一本。


二本。


三本。


槍を迎撃しながら、サイオン本人も狙う。


だがサイオンも飛行し続け、狙いを絞らせない。


「その程度じゃ当たらないッス!」


空では銀の槍。


地上からは無数の矢。


互いに一歩も譲らない攻防が続く。


一方。


俺とアイスも互いの間合いを探り続けていた。


まだ誰も。


本当の切り札は見せていない。


この決闘は――


ここからさらに激しさを増していく。

次回!決着!

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