第4話 国家代表者会議
翌朝。
俺たちは宿を出て、アルカディアの大通りを歩いていた。
朝から相変わらずの賑わい。
店を開く商人たちの声。
依頼を受けるために冒険者ギルドへ向かうプレイヤーたち。
大きな荷物を積んだ荷車が道を進み、その横を子供たちが元気よく走り抜けていく。
昨日と変わらないアルカディアの朝。
だけど。
「…………」
俺の隣を歩いているたるとは、昨日とは別人のように静かだった。
虎耳はぺたん。
尻尾もだらん。
ものすごく分かりやすい。
「たると」
「……はい」
「大丈夫?」
「…………」
返事がない。
少ししてたるとがゆっくり俺を見る。
「ガウ」
「なに?」
「帰っていいですか?」
「ダメ」
「即答!?」
伏せていた虎耳が勢いよく立った。
後ろからハヤテの笑い声。
「はははっ! なんだよ」
「昨日はガルドたちと普通に話してただろ?」
「昨日とは違います!」
「何が?」
「今日は他の国の代表さんたちがいるんですよ!?」
「まあ、そうだな」
「偉い人がいっぱいなんですよ!?」
「お前もその一人だ」
「うっ……!」
ゴウマの一言で、たるとが固まる。
「……そうでした」
「忘れてたの?」
「忘れたかったんです……」
「国を作った以上、避けては通れないからな」
ゴウマが苦笑する。
「他国とどう付き合っていくか。それを考えるのも代表の役目だ」
「分かってますけどぉ……」
再び虎耳が伏せる。
「大丈夫だよ~」
後ろを歩くセリアがいつもの眠そうな声で言った。
「今日はお話するだけだから~」
「セリアさんは後ろに座ってるだけじゃないですか!」
「ばれた~」
「もう!」
シズクが口元を押さえて笑う。
リンファも肩をすくめた。
「諦めなさい。昨日、自分で参加するって言ったんだから」
「昨日の私を止めたいです!」
「無茶言うなって」
ハヤテが笑う。
そんなことを話しているうちに。
大通りの先に、大きな建物が見えてきた。
冒険者ギルド本部。
昨日も訪れた場所。
今日はここで俺たちがまだ知らない国の代表たちと会う。
「…………」
たるとの足が止まった。
「たると?」
「…………よし!」
ぱんっ!
両手で自分の頬を叩く。
虎耳がピンと立った。
「行きます!」
「覚悟決まった?」
「帰りたいです!」
「決まってないじゃない……」
リンファのツッコミに皆が笑った。
俺たちはそのまま冒険者ギルド本部へ入った。
◇
「お待ちしていました」
中へ入ると。
昨日と同じく、ビルズが俺たちを迎えてくれた。
「おはようございます!」
さっきまでの姿が嘘みたいに、たるとが元気よく頭を下げる。
「おはようございます。昨夜はよく眠れましたか?」
「はい!」
「それは何よりです」
ビルズが穏やかに笑う。
「ガルドはすでに会議室にいます」
「他国の代表者の方々も揃っていますよ」
「…………」
たるとの笑顔が固まった。
「では、会議室までご案内します」
「お、お願いします!」
俺たちはビルズの案内で本部の奥へ進んだ。
階段を上がり。
長い廊下を歩いていく。
その途中。
「ビルズさん」
たるとが口を開いた。
「こういう会議っていつもやってるんですか?」
「はい。定期的に行っています」
「何を話すの?」
今度は俺が聞く。
「各階層の攻略状況。魔物の動向。交易。治安。そして危険なギルドに関する情報などですね」
ビルズは歩きながら答える。
「一国だけの問題では済まない事柄も多くあります」
「そういった情報を各国で共有するための場と考えていただければ分かりやすいでしょう」
「なるほど」
「ただし」
ビルズが俺たちを見る。
「この会議そのものに各国を拘束する権限はありません」
「拘束?」
「はい。アルカディアが他国へ命令するわけではない、ということです」
ああ。
そういうことか。
「各国の立場は対等です。アルカディアは世界で最初に作られた国家ですから、こうした話し合いの場を用意しているに過ぎません」
「じゃあ、ガルドさんが一番偉いわけじゃないんですね」
たるとが言う。
「本人が聞けば喜ぶでしょうね」
「え?」
「面倒な肩書きが一つ減った、と」
「……言いそうだな」
ハヤテが呟く。
うん。
間違いなく言う。
やがて。
ビルズが一つの大きな扉の前で立ち止まった。
「こちらです」
「…………」
また虎耳が伏せた。
「ガウ」
「なに?」
「絶対、一緒にいてくださいね?」
「そのために来たんだけど……」
「ゴウマも」
「安心しろ」
「リンファも」
「いるわよ」
「ハヤテも!」
「逃げねえよ」
「私たちもいますから」
シズクとセリアが微笑む。
「………」
たるとは大きく息を吸った。
そして。
「お願いします!」
「では、開けますね」
ビルズが扉を開いた。
◇
部屋へ入った瞬間。
いくつもの視線が俺たちへ向いた。
広い会議室。
中央には大きな円卓。
その周囲にはすでに何人もの人たちが座っている。
「おう!」
一番奥から聞き慣れた声。
「来たな!」
ガルドが大きく手を上げた。
「お、おはようございます!」
たるとが頭を下げる。
俺たちも続く。
すると。
円卓に座っていた一人の男が、たるとへ視線を向けた。
大柄な身体。
重厚な鎧。
鋭い目。
座っているだけなのにかなりの威圧感がある。
「ガルド」
低い声。
「その娘が昨日話していた?」
「ああ」
ガルドが笑う。
「新しくできた国の代表だ」
男がたるとをじっと見る。
「……若いな」
「二十歳です!」
「…………」
「…………」
なぜ年齢を強調した。
「くっ……!」
隣でハヤテが吹き出しそうになっている。
「ハヤテ!」
「わ、悪いって!」
「はははっ!」
ガルドが笑う。
「まあ、座れ座れ」
たるとは円卓に用意された席へ。
俺たちはその後ろに並べられた席へ座る。
ビルズもガルドの隣へ座った。
「さて」
ガルドが立ち上がる。
「今日は新しい国が加わった」
俺たちを見る。
「まずは顔合わせから始めよう」
最初に立ったのは。
先ほど、たるとへ声を掛けた男。
「第六階層」
低く、よく通る声。
「軍事国家」
そして。
「《黒鉄騎士団》ギルドマスター、ヴォルグだ」
《黒鉄騎士団》。
ギルドランキング第五位。
攻略組の中でも特に戦闘力が高いことで知られているギルド。
「よろしくお願いします!」
たるとが頭を下げる。
「ああ」
ヴォルグは短く答えた。
次に立ち上がったのは、銀色の長い髪を持つ女性。
「第七階層。魔導国家代表、リュミエールです」
落ち着いた声。
「よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします!」
リュミエールが微笑む。
その視線が。
一瞬。
俺たちの後ろへ。
いや。
セリアへ向いた。
「?」
セリアが首を傾げる。
魔導国家。
やっぱり魔法使いが気になるのかな。
続いて立ったのは。
立派な髭を蓄えたドワーフの男性。
「第二階層!」
声がでかい。
「工匠国家!」
胸を張る。
「《神匠の炉》、バルカンじゃ!」
「よろしくお願いします!」
「おう!」
豪快に笑う。
そしてバルカンの視線が俺たちへ。
「…………」
止まった。
俺の腰。
忍者刀《朧》。
その隣。
ハヤテの《白夜》と《黒曜》。
「おい」
「はい?」
「そこの二人」
「私?」
「俺?」
「その刀」
バルカンがニヤリ。
「あとで見せろ」
「今それ言う!?」
ハヤテが即座に突っ込んだ。
会議室に笑いが起こる。
「はいはい!」
次は元気よく手を上げた女性。
「私ね!」
立ち上がる。
「第六階層!」
「探索国家!」
そして。
「《蒼穹の翼》のレイナ!」
《蒼穹の翼》。
ギルドランキング第十位。
探索能力に優れ、攻略でも名前を聞くギルドだ。
「よろしくね!たるとちゃん!」
「よろしくお願いします!」
「虎獣人なんだ!」
「はい!」
「その耳、本物?」
「本物ですよ!?」
「触っていい?」
「ダメです!」
即答。
「えー」
「なんで残念そうなんですか!?」
距離近いな、この人。
「じゃあ次、俺でいい?」
気の抜けた声とともに一人の男性が軽く手を上げた。
「第四階層」
「自由国家」
そして。
「カイン」
「…………」
終わった。
「……それだけですか?」
たるとが聞く。
「うん」
「ええ!?」
「代表とか堅苦しいの苦手なんだよ」
カインが笑う。
「普通にカインでいいよ」
その瞬間、たるとの虎耳が立った。
「分かります!」
「お?」
「私も王様って呼ばれるの嫌なんです!」
「おお!」
カインが身を乗り出す。
「分かるか!」
「分かります!」
「肩書きとか面倒だよな!」
「ですよね!」
……意気投合した。
「よかったわね。仲間がいて」
リンファが笑う。
「そこ仲良くなるの早すぎだろ」
ハヤテも笑った。
そして最後。
静かに一人の男性が立ち上がった。
整えられた黒髪。
細身の体格。
柔らかな笑顔。
「第四階層」
丁寧に一礼。
「商業国家」
そして。
「《黄金の天秤》代表、レグルスと申します」
「よろしくお願いします!」
「国家の建国」
レグルスが穏やかに微笑む。
「心よりお祝い申し上げます」
「あ、ありがとうございます!」
「我々ヴァレンティアは、交易を中心として発展してきた国家です」
そして。
「いずれ、フェリシアとも交易についてお話しできればと思っております」
「ぜひ!」
たるとが嬉しそうに答える。
レグルスも微笑んだ。
「よし」
ガルドがこちらを見る。
「最後はフェリシアだ」
「は、はい!」
たるとが立ち上がった。
緊張している。
虎耳が小さく震えている。
一度、大きく息を吸う。
そして。
「第一階層!」
顔を上げた。
「国家!」
胸を張る。
「代表のたるとです!」
最後に深々と頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
こうして。
フェリシアは初めて。
世界に存在する他の国々へ。
その名を伝えた。
◇
その後。
たるとはフェリシアについて説明していった。
第一階層の最果て。
元々は、小さなNPCの集落だったこと。
そこへ俺たち《王虎の牙》が住み始めたこと。
仲間が増えた。
住民も増えた。
だから皆で暮らせる場所を作ろうと。
街作りを始めた。
住宅街。
商業区。
畑。
港。
研究所。
ギルド本部。
城。
外壁。
道路。
「それで」
たるとが笑う。
「全部完成したので国にしました!」
「ずいぶん簡単に言うな」
カインが笑った。
「ちなみに」
ガルドが口を挟む。
「こいつらが本格的に街を作り始めてから、完成するまで」
少し間を置き。
「約半年だ」
「…………」
静かになった。
「……半年?」
バルカンが聞き返す。
「はい!」
「今言ったものを全部か?」
ヴォルグまで聞いてくる。
「はい!」
「…………」
「皆さんが手伝ってくれたので!」
たるとは当たり前のように答える。
「いやぁ」
ガルドが頭を掻いた。
「いくらゲームとはいえ、建築スピード異常じゃないか?」
「アルカディアでも一年じゃったな?」
バルカンが聞く。
「ああ」
ガルドが頷く。
「こいつらにも前に話したがまともに街と呼べる状態になるまで一年くらい掛かった」
「はい。覚えてます!」
たるとが頷く。
「だから私たちも最初はもっと時間が掛かると思ってたんですけど……」
俺たちは顔を見合わせる。
「気付いたらできてたな」
ハヤテ。
「皆、やり始めたら止まらなかったものね」
リンファ。
「途中から作業速度がおかしくなってた気はするな」
ゴウマ。
「楽しかったからね~」
セリア。
「結界を張る場所もどんどん増えました」
シズク。
……こうやって振り返ると。
確かに。
俺たち、おかしかったのかもしれない。
「面白い!」
レイナが身を乗り出す。
「私、フェリシア行ってみたい!」
「ぜひ来てください!」
「行く!」
「決めるの早いな」
カインが笑う。
「俺も興味あるけどね」
「ぜひ!」
たるとの尻尾が嬉しそうに揺れる。
その時。
「一つ聞く」
ヴォルグの声が響く。
たるとが振り返る。
「はい」
「なぜ国を作った?」
「なぜ……?」
「領土を持つためか」
ヴォルグが続ける。
「攻略の拠点とするためか」
「軍事力を集めるためか」
「あるいは、交易か」
たるとは少しだけ考えた。
「……どれも違います」
「私が欲しかったのは」
たるとが俺たちを見る。
「皆が笑って暮らせる場所です」
静かな声。
でも迷いはなかった。
「困った時には助け合えて」
「疲れた時には帰ってこられて」
「プレイヤーとか、NPCとか」
「昔どこのギルドにいたとか」
「そんなことは関係なくて」
たるとが微笑む。
「皆が『ただいま』って帰ってこられる」
そして。
「そんな国にしたいんです」
「…………」
静かだった。
誰もすぐには口を開かなかった。
やがて。
「いいじゃん」
カインが笑った。
「俺、その国好きだよ」
「まだ来たことないですよね!?」
「今の話で好きになった」
「早いです!」
「私も好き!」
レイナまで手を上げる。
「レイナさんも!?」
会議室に笑いが戻った。
ヴォルグはしばらくたるとを見て。
「……そうか」
小さく頷いた。
ガルドもどこか満足そうに笑っている。
だけど。
「さて」
その声で空気が変わった。
ガルドの表情から笑みが消える。
「顔合わせはこのくらいにしておこう」
円卓に置いた手を組む。
「ここからが」
全員を見渡す。
「今日、集まってもらった本題だ」
「本題……?」
たるとが呟いた。
ガルドがビルズを見る。
ビルズは静かに頷き。
会議室の扉へ向かった。
「では、お入りください」
扉を開く。
二人の男が部屋へ入ってきた。
その姿を見て俺は目を見開いた。
「……レオン?」
《断罪の聖剣》。
ギルドマスター。
レオン。
その隣には副ギルドマスター。
クロード。
「久しぶりだな」
レオンが俺たちを見る。
だけどその表情は険しかった。
二人は円卓の前まで進む。
「《断罪の聖剣》ギルドマスター」
レオンが口を開いた。
「レオンだ」
そして。
「今日は俺たちが調査した件について報告する」
ガルドが頷く。
「頼む」
「ああ」
レオンが全員を見る。
そして。
「第三階層」
一つの国の名前を告げた。
「国家」
何人かの代表の表情が変わる。
「先日」
レオンは続ける。
「マンティスとの連絡が途絶えた」
たるとの虎耳が動く。
「俺たち《断罪の聖剣》は、アルカディアから調査を依頼され……」
「現地へ向かった」
一度、言葉を切る。
そして。
「そこで」
低い声。
「国家の壊滅を確認した」
「……え?」
たるとの声。
小さかった。
「壊滅……?」
ハヤテが呟く。
「ああ」
レオンが頷く。
「街は破壊されていた」
「至る所に戦闘の痕跡が残り、多数の犠牲者も確認された」
国が壊滅した。
俺たちは。
つい昨日まで。
フェリシアが国になったことを喜んでいた。
なのに同じ世界では一つの国が消えていた。
「誰がやった?」
ヴォルグが聞いた。
低い。
さっきまでとは違う声。
レオンが答える。
「《七つの大罪》」
その瞬間、会議室が静まり返った。
《七つの大罪》。
その名前なら俺も知っている。
指名手配第一位。
詳しい構成。
目的。
拠点。
ほとんどが不明。
だけど。
危険な存在。
それだけは誰もが知っている。
「現地に残された痕跡」
レオンが続ける。
「そして、僅かに得られた証言から」
「マンティスを襲った《七つの大罪》の構成員は」
一拍。
「二名だと見ている」
「……二名?」
レイナの表情から完全に笑みが消えた。
「ああ」
レオンが頷く。
「二人はーー」
「《強欲》と《暴食》だ」
「確認できた襲撃者は」
レオンが言う。
「この二人だけだ」
「待て」
ヴォルグが口を開いた。
「マンティスには戦闘員もいただろう」
「ああ」
「それを」
ヴォルグの目が鋭くなる。
「たった二人で壊滅させたというのか?」
「現時点では」
レオンが答える。
「そう判断している」
「…………」
二人。
たった二人。
それだけで一つの国を。
「冗談だろ……」
ハヤテが呟く。
いつもの軽い声じゃない。
「俺もそう思いたかった」
レオンが答える。
そして、手にしていた資料を円卓へ置いた。
「だが現場に残された戦闘痕を見る限り普通じゃない」
一枚。
資料をめくる。
「《強欲》と呼ばれる男は致命傷になってもおかしくない攻撃を受けたが、何事もなかったように戦闘を続けたという証言がある」
「……不死身?」
俺は聞いた。
「分からない」
レオンは首を横に振る。
「スキルなのか」
「装備の効果なのか」
「それとも別の何かなのか」
「現時点では判断できない」
そして。
「《暴食》と呼ばれる男は攻撃を吸収したという情報がある」
「吸収?」
ゴウマが眉を寄せる。
「ああ」
レオンが頷く。
「物理攻撃」
「魔法攻撃」
「その両方だ」
「両方……」
シズクが小さく呟く。
「さらに」
レオンが続ける。
「吸収した攻撃を放出したという証言もある」
「……面倒ね」
リンファが腕を組む。
「ただし」
レオンが続ける。
「これも詳細は不明だ」
どこまで吸収できるのか。
限界があるのか。
弱点はあるのか。
何も分からない。
「そして」
レオンが全員を見る。
「一番の問題は」
「なぜマンティスを襲ったのか」
「その理由すら分かっていないことだ」
金。
領土。
恨み。
何か目的があったのか。
それとも。
「次にどこを狙うのかも分からない」
次。
その言葉が胸に引っ掛かった。
もし。
次に狙われるのが――。
「だからだ」
ガルドが立ち上がった。
「今日、各国に集まってもらった一番の理由は」
「《七つの大罪》への共同警戒だ」
全員を見る。
「今後」
「《七つの大罪》に関する情報を各国で共有する」
「怪しい連中を見つけた場合はすぐに他国へ知らせる」
そして。
「もし」
ガルドの声が強くなる。
「どこかの国が襲われた場合」
「可能な限り、他国も救援へ動く」
静かな会議室。
最初に口を開いたのは。
ヴォルグ。
「グランヴァルは異論ない」
「ミスティアも賛成いたします」
リュミエール。
「アルテリアもじゃ」
バルカン。
「セレスティアも賛成」
レイナ。
「リベルタもいいよ」
カイン。
そして。
「ヴァレンティアも異論はございません」
レグルス。
穏やかな声。
「交易路を多数抱える我が国としても決して看過できる問題ではありませんから」
最後。
全員の視線がたるとへ向いた。
「…………」
たるとの虎耳が小さく動く。
国を作ったばかり。
他国との外交なんて。
今日が初めて。
それでも。
たるとはゆっくり立ち上がった。
「フェリシアも」
そして迷わず。
「参加します」
そう答えた。
「もし」
たるとが円卓に座る皆を見る。
「困っている国があるなら……」
「助けられることは助けたいです」
それは。
さっき。
たると自身が話した。
フェリシアの理念。
困った時には助け合える。
ガルドが笑った。
「ああ」
そして。
「決まりだな」
この日。
国家は、他の国々と初めて同じ問題に向き合うことになった。
◇
会議が終わり。
俺たちは冒険者ギルド本部を出た。
外は相変わらず賑やかだった。
店から聞こえる呼び込み。
プレイヤーたちの笑い声。
道を走り回る子供たち。
何も変わっていない。
「……二人で国一つ、か」
ハヤテが呟く。
珍しく。
その声に軽さはなかった。
「ああ」
ゴウマが答える。
「しかも確認されたのが二人というだけだ」
「《七つの大罪》……」
リンファが呟く。
七つ。
もし。
その名前通りなら。
「……あと五人」
俺が言った。
誰も答えなかった。
どこにいるのか。
どんな奴なのか。
何を目的にしているのか。
何も分からない。
「ガウ」
「ん?」
たるとが俺を見る。
「帰ったら」
少しだけ真剣な顔。
「皆さんにも話しましょう」
「うん」
「アレンさんたちにも」
「そうだね」
警備隊。
街の皆。
フェリシアにいる大切な仲間たち。
ちゃんと伝えないといけない。
フェリシア。
俺たちの国。
皆が笑って暮らせる場所。
困った時には。
助け合えて。
疲れた時には。
帰ってこられる場所。
だけど。
国を作ったということは。
俺たちもまた。
今まで知らなかった世界と繋がったということだった。
新しい人。
新しい国。
これから始まる。
新しい関係。
そして。
今まで知らなかった。
世界の脅威。
指名手配第一位《七つの大罪》。
その名前が。
この日。
初めて俺たちのすぐ近くまでやってきた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
今回は初めての《国家代表者会議》。
新たな国々との出会いと同時に、世界指名手配第一位《七つの大罪》の脅威も明らかになりました。
二人だけで一つの国を壊滅させた《強欲》と《暴食》。
フェリシアもいよいよ世界の大きな流れへと繋がっていきます。
次回もよろしくお願いします!
※登場人物も増えましたので活動報告でまとめておきます!




