第2話 七人の旅路
朝。
フェリシア正門前。
俺たちは旅の準備を整え、皆が集まるのを待っていた。
「……」
俺は正門の向こうを見る。
住宅街。
商業区。
そのさらに奥。
朝日に照らされた城が見える。
少し前までここは小さな集落だった。
それが今では。
外壁に囲まれ。
大きな正門があり。
その前には濃紺の制服を身につけた警備隊が立っている。
そしてこの場所には名前がある。
国家。
俺たちの国。
「……なんか」
「ん?」
隣にいたリンファが俺を見る。
「どうしたの?」
「いや」
もう一度、街を見る。
「ここから旅に出るのって」
「ちょっと変な感じだなって」
「そう?」
「うん」
今までも何度もこの場所から外へ出た。
探索。
素材集め。
戦い。
色々な理由で。
でも今日は少し違う。
俺たちは今から別の国へ向かう。
目的地は第五階層の中央都市アルカディア。
フェリシアを建国したことをガルドたちへ報告するためにだ。
「ガウ!」
声。
振り返る。
「お待たせしました!」
たるとがこちらへ走ってきた。
その後ろには。
ハヤテ。
ゴウマ。
シズク。
セリア。
「これで全員?」
俺が聞く。
「ああ」
ゴウマが頷く。
俺。
たると。
ハヤテ。
ゴウマ。
リンファ。
シズク。
セリア。
七人。
「……」
改めて見る。
「どうした?」
ハヤテが首を傾げた。
「いや」
「このメンバーで出掛けるの久しぶりだなって」
「……ああ」
ハヤテも皆を見る。
「確かにな」
リンファが笑う。
「いつの間にか随分増えたものね」
「そうですね」
シズクも頷く。
「最近は七人だけで行動することもありませんでしたから」
「最初はこれが普通だったのにな」
ゴウマが懐かしそうに言う。
そう。
最初は俺たちだけだった。
小さな集落。
少ない住民。
少ない家。
そして。
七人の《王虎の牙》。
それが。
今では。
「ガウ!」
「ん?」
声。
誰かがこちらへ走ってくる。
小さな狐耳。
大きな尻尾。
「ツキ?」
「間に合った!」
ツキが俺の前で止まる。
少し息を切らしている。
「どうしたの?」
「ガウ!」
「うん」
ツキは俺を真っ直ぐ見る。
そして。
「お土産!」
「……」
「お菓子!」
「……」
「買ってきて!」
両手を合わせる。
「お願い!」
「それを言いに走ってきたの?」
「うん!」
即答。
俺は思わず笑った。
「分かった」
「本当!?」
「アルカディアで何か探してくる」
「やった!」
ツキが両手を上げる。
「甘いやつ!」
「はいはい」
「いっぱい!」
「いっぱい?」
「いっぱい!」
そこは譲らないらしい。
「ガウ」
後ろからヨミが歩いてくる。
「……一つでいい」
「お姉ちゃん!?」
「食べすぎるから」
「食べないもん!」
「……食べる」
「食べない!」
「……絶対食べる」
「むぅ……!」
頬を膨らませる。
「まあ」
俺はツキの頭へ手を置いた。
「何か美味しそうなの探してくるよ」
「うん!」
「ガウ姉ちゃん大好き!」
ぎゅっ。
抱きつかれた。
「お土産を頼む時だけじゃない?」
「いつも!」
「ならいいけど」
「いいのかよ」
ハヤテが笑う。
「じゃあ俺にも土産――」
「自分で行くでしょ」
「あっ」
忘れてたらしい。
「皆さん!」
たるとが声を上げる。
「そろそろ出発しましょう!」
「おう!」
「気を付けてな!」
バレットが手を上げる。
その隣。
ガンテツ。
ノエル。
アイス。
サイオン。
モルフォ。
ヨミ。
そして他の仲間たちも見送りに来ていた。
「留守は任せろ!」
ガンテツが胸を叩く。
「何かあったら全部吹き飛ばしてやる!」
「吹き飛ばさないでください!」
たるとが即座に叫ぶ。
「街を守ってください!」
「任せろ!」
本当に大丈夫かな。
「警備隊もいます」
ノエルが穏やかに言う。
「安心して行ってきてください」
「ああ」
ゴウマが頷く。
アイスも俺たちを見る。
「ガルドたちによろしく」
「うん」
「それと」
たるとを見る。
「外交だからといって、変に気負わなくていい」
「……はい!」
たるとは少しだけ背筋を伸ばす。
「行ってきます!」
正門。
警備隊員たちが左右へ分かれる。
そして。
「お気を付けて!」
声と共に一斉に敬礼した。
「……」
思わず足が止まる。
なんだろう。
変な感じ。
今までこの場所から何度も外へ出た。
でもこんなふうに送り出されたことはなかった。
俺は一度。
振り返る。
高い外壁。
正門。
その向こう。
俺たちが作った街。
帰る場所。
「ガウ?」
たるとが呼ぶ。
「ううん」
前を向く。
「行こう」
「はい!」
俺たち七人はフェリシアを出発した。
◇
「遠い!」
出発から数時間。
ハヤテの声が草原へ響いた。
「まだ言うの?」
俺は隣を歩くハヤテを見る。
「だって遠いだろ!」
「前にも行ったじゃん」
「前も遠かった!」
「なら分かってたでしょ」
「分かってても遠いものは遠い!」
元気だなぁ。
「ハヤテ」
先頭を歩くゴウマが振り返る。
「喋る元気があるなら問題ないな」
「そういう問題じゃない!」
「なら走る?」
俺が聞く。
「なんで!?」
「早く着くよ」
「着く前に疲れるわ!」
「でもハヤテ速いじゃん」
「長距離移動と戦闘は別だ!」
そんな俺たちの後ろ。
「平和ですね」
シズクが小さく笑っていた。
「いつも通りね」
リンファも笑う。
「元気だね~」
セリアだけはすでに眠そうだった。
「セリア」
「なに~?」
「歩きながら寝ないでね」
「大丈夫~」
「本当に?」
「たぶん~」
不安。
「それにしても」
たるとが俺たちの横へ並ぶ。
「アルカディアへ行くのも久しぶりですね!」
「そうだね」
前に向かった時も一日では辿り着かなかった。
今回も同じ。
途中で一晩、野営することになる。
「今回は」
たるとは胸の前で両手を握った。
「遊びではありません!」
「前も遊びじゃなかっただろ」
ハヤテが言う。
「今回は国の代表として行くんです!」
「おお」
「だから!」
たるとは咳払い。
「ガルドさんにお会いしたら――」
背筋を伸ばす。
「国家代表」
真剣な表情。
「たるとです!」
「……」
「……」
「どうですか?」
俺たちは顔を見合わせる。
「硬い」
俺が答えた。
「えぇ!?」
「硬いな」
ゴウマも頷く。
「硬いわね」
リンファも。
「少し硬いと思います」
シズクまで。
「硬いね~」
セリア。
「なんで全員!?」
たるとの虎耳がぴんっと立つ。
「いいじゃないですか!」
「ちゃんと代表っぽいです!」
「ガルドさんだよ?」
俺が言う。
「知ってる人じゃん」
「それとこれとは違います!」
「違う?」
「今までは《王虎の牙》として会っていました!」
たるとは自分の胸へ手を置く。
「でも今回はフェリシアの代表として会うんです!」
「……」
なるほど。
たるとなりにちゃんと考えてるんだ。
「なら」
ゴウマが言う。
「無理に代表らしく振る舞う必要はない」
「え?」
「フェリシアがどんな国なのか」
「何を大切にするのか」
「それを一番分かっているのはお前だ」
アイスと一緒に外交を担当することになったゴウマ。
その声はいつも通り落ち着いている。
「普段通り話せばいい」
「……普段通り」
「ああ」
「ガルドも」
少し笑う。
「急に偉そうになったお前を見たいわけじゃないだろう」
「私、偉そうにしません!」
「なら問題ない」
「むぅ……」
虎耳が少し垂れる。
「たるとはたるとでいいんじゃない?」
俺が言う。
「……」
たるとは俺を見る。
「国の代表でも」
「ギルドマスターでも」
「たるとは同じたるとでしょ」
「……はい」
少しだけ肩の力が抜けた。
「そうですね!」
いつもの笑顔。
「いつも通り行きます!」
「その方がいいよ」
「でも!」
「ん?」
「ちゃんと代表らしくもします!」
どっちなんだろう。
まあ。
たるとらしいか。
◇
それからも。
俺たちは第一階層を進んだ。
草原。
森。
小さな川。
何度も見てきた景色。
その途中、数体のモンスターとも遭遇した。
「グルルル……!」
草むらから飛び出してくるウルフ。
「おっ!」
ハヤテが《白夜》へ手を掛ける。
俺も《朧》へ手を伸ばす。
「私が――」
「一の太刀《閃牙》!」
「早い!」
一閃。
ウルフが転がっていった。
「よし!」
「私が倒そうと思ったのに」
「早い者勝ちだ!」
「じゃあ次は私」
「望むところだ!」
「競争しないの」
リンファが呆れたように言う。
その直後。
別の草むらが揺れた。
「来た!」
俺が踏み込もうとする。
でも。
「《絶壁》」
シズクの結界が目の前へ現れた。
ゴンッ!
飛び出してきたウルフが結界へ激突する。
「……」
俺。
ハヤテ。
ウルフ。
全員止まる。
「危ないですよ」
「シズク」
「はい?」
「私たち戦えるよ?」
「知っています」
「じゃあなんで?」
「こちらの方が安全なので」
正論。
「じゃあ~」
セリアが《創星》を向ける。
「《ライトニング》~」
雷撃。
ウルフが黒焦げに変わった。
「……」
「終わった~」
「俺の出番は?」
ハヤテが聞く。
「さっき倒しましたよね?」
シズクが答えた。
「一匹だけ!」
「十分じゃない?」
リンファが笑う。
平和だ。
◇
夕方。
空が少しずつ赤く染まり始めた頃。
「今日はここまでだ」
ゴウマが足を止めた。
周囲には木々。
近くには小さな川。
開けた場所もある。
野営にはちょうどいい。
「よし!」
ハヤテが荷物を下ろす。
「休める!」
「まず準備」
リンファが言う。
「分かってるって」
皆で野営の準備を始める。
テント。
焚き火。
食事。
周囲の確認。
何度もやってきたこと。
七人で役割を分ければそれほど時間も掛からない。
「ガウ」
「ん?」
「そっち持って」
リンファがテントの布を持っている。
「はい」
「ハヤテ」
「おう!」
「反対側」
「任せろ!」
三人で広げる。
その横。
シズクは野営地の周囲を確認。
ゴウマは薪。
たるとは食事。
そして。
「セリア」
「ん~?」
「何してるの?」
「見守ってる~」
「手伝って」
「は~い」
いつも通りだった。
◇
夜。
ぱちっ。
ぱちぱちっ。
焚き火が小さな音を立てる。
食事も終わり。
俺たちは火を囲んでいた。
空には星。
木々の間から。
涼しい風が吹いてくる。
「……」
俺は焚き火を見る。
なんだか懐かしい。
「こうして」
たるとが小さく口を開いた。
「七人だけで野営するの久しぶりですね」
「そうだな」
ゴウマが頷く。
「最近は人数も増えたからな」
「最初は」
ハヤテが焚き火へ小枝を放り込む。
「ずっとこのメンバーだったのにな」
「うん」
俺は皆を見る。
たると。
ハヤテ。
ゴウマ。
リンファ。
シズク。
セリア。
そして俺。
七人。
「懐かしいね」
リンファが笑う。
「集落も本当に小さかったし」
「家も少なかったですね」
シズクが続ける。
「畑も小さかった~」
セリアが焚き火へ手を伸ばす。
「食堂も今より狭かったね~」
「でも」
たるとが笑う。
「皆で食べるご飯は昔から変わってません!」
「それはそうだな」
ハヤテが頷く。
「ガンテツが増えてから量は増えたけど」
「それは間違いない」
皆が笑う。
「……本当に」
たるとは焚き火を見る。
「大きくなりましたね」
ぱちっ。
火の粉が舞う。
「最初は」
「私たち七人と」
「少しの住民だけだったのに」
「今では国です」
「……」
その言葉。
国。
何度聞いてもまだ少し不思議に感じる。
「俺たち」
ハヤテが笑う。
「随分遠くまで来たな」
「アルカディアはまだだよ?」
俺が言う。
「そういう意味じゃねぇ!」
「違うの?」
「違う!」
笑い声。
「でも」
ゴウマが静かに言った。
「始まりは俺たちだった」
皆がゴウマを見る。
「七人で」
「小さな集落を守っていた」
「だが」
炎の向こう。
フェリシアがある方角へ視線を向ける。
「今は違う」
「……うん」
俺も頷く。
NPC住民たち。
バレット。
ガンテツたち《鉄球戦団》。
アイスとサイオンたち《白銀戦線》。
モルフォ。
ノエル。
ヨミ。
ツキ。
元深淵の人たち。
元奴隷プレイヤーたち。
一人。
また一人。
仲間が増えた。
「七人だったんだよね」
俺は呟く。
「最初はそうですね」
たるとが頷く。
「でも今は」
笑う。
「帰ったら沢山の人が待ってます!」
「……うん」
そうだ。
だから。
俺たちはここにいられる。
七人全員が一緒に外へ出られる。
昔なら誰かが集落に残らなければならなかった。
何かあった時。
守る人が必要だったから。
でも今は。
警備隊がいる。
仲間がいる。
皆がいる。
「大きくなったなぁ」
ハヤテが呟く。
「うん」
本当に大きくなった。
「それでも私たちは変わらないけどね」
「そう?」
「そうよ」
俺を見る。
「相変わらずガウとハヤテは張り合ってるし」
「それはハヤテが」
「ガウがだろ!」
「ほら」
「……」
「……」
また笑われた。
「私も変わってない~」
セリアが手を挙げる。
「もう少し変わってほしいですけどね」
シズクが言う。
「え~?」
「ちゃんと働いてるよ~」
「研究所に籠もってばっかりじゃないですか」
「研究も仕事~」
「ノアさんからサボっていると報告がありましたけど?」
「……」
「今日は少し肌寒いね~」
「話を変えないでください!」
笑い声が夜の森へ静かに響く。
久しぶりの七人だけの夜。
でも寂しくはない。
明日になれば俺たちはアルカディアへ向かう。
そして。
用事を終えればフェリシアへ帰る。
帰る場所がある待っている人がいる。
それだけで昔の旅とは少し違って感じた。
◇
翌朝。
「んー!」
たるとが大きく伸びをした。
「いい朝です!」
朝食を終え。
俺たちは野営の片付けを進めていた。
テントを畳む。
寝袋を片付ける。
焚き火を完全に消す。
周囲に忘れ物がないか確認。
「ガウ」
「こっちでいい?」
「うん」
リンファと一緒にテントをまとめる。
その向こう。
「セリア」
シズクが呼ぶ。
「はい~?」
「寝袋を片付けてください」
「あと少し~」
「もう寝る時間ではありません」
「分かってる~」
寝袋に包まったまま答えている。
分かってない。
「ほら」
俺も声を掛ける。
「出発するよ」
「あと五分~」
「置いてくよ?」
「それは困る~」
もぞもぞ。
ようやく出てきた。
その時。
「……あ」
たるとが何かに気付いたような声を出した。
「どうした?」
ハヤテが振り返る。
たるとは周囲を見る。
森。
草むら。
木々。
そして。
「今回は」
首を傾げる。
「ゴブリンさん出てきませんでしたね」
「……」
「……」
俺とハヤテが止まる。
「何ですか?」
「いや」
ハヤテがたるとを見る。
「ゴブリンに会いたかった?」
「まさか!?」
虎耳がぴんっと立った。
「なんでそうなるんですか!」
「だって」
「出てこなかったこと気にしてるから」
「前回の夜営で出てきたから思い出しただけです!」
「寂しいのかなって」
「寂しくありません!」
「じゃあ探してくる?」
「行かなくていいです!」
「近くにいるかもしれないぞ?」
「いなくていいです!」
ハヤテが森へ顔を向ける。
「ゴブリンさーん!」
「呼ばないでください!」
ゴツン。
「痛っ!」
リンファの拳がハヤテの頭へ落ちた。
「朝から何してるの」
「ちょっとゴブリンを」
「呼ばなくていい」
「はい……」
「まったく」
リンファが呆れたように息を吐く。
ゴウマはその横で黙々と荷物をまとめていた。
慣れてる。
シズクは口元を押さえて小さく笑っている。
そしてセリアは。
「ゴブリンさんも朝は眠いんじゃない~?」
「そのまま寝ていてください!」
たるとが即答した。
「たると」
俺は笑う。
「やっぱり嫌いなんだ」
「好きになる理由あります!?」
ないね。
「よし」
ゴウマが立ち上がる。
「片付けも終わった」
周囲を確認。
「出発するぞ」
「はい!」
結局。
今回の夜営ではゴブリンは一匹も現れなかった。
……良かったね。
たると。
◇
午前。
再び俺たちは歩き続けた。
昨日と同じように。
草原を抜け。
森を抜け。
道を進む。
そして。
太陽が頭上へ近づき始めた頃。
「見えてきたぞ」
ゴウマが言った。
「おお!」
ハヤテが前を見る。
俺も視線を向ける。
《階層転移陣》がある祠。
第五階層へ繋がる。
転移のための場所。
「やっとですね!」
たるとの尻尾が嬉しそうに揺れる。
「長かった~」
セリアが言う。
「セリアほとんど疲れてないでしょ」
「疲れたよ~」
「途中寝てたじゃん」
「歩きながら寝てないから大丈夫~」
そこなの?
俺たちは転移地点へ入る。
「準備はいいか?」
ゴウマが確認する。
「うん」
「大丈夫です」
「いつでも!」
「はい~」
全員が揃う。
次の瞬間。
足元。
魔法陣が光り始めた。
「……」
久しぶりだ。
身体が光に包まれる。
視界が白く染まる。
浮遊感。
そして――。
景色が変わった。
◇
「……着いた」
俺は呟く。
第五階層。
中央都市アルカディア。
全員で祠を抜けると目の前には巨大な都市が広がっている。
高い城壁。
大きな門。
行き交うプレイヤー。
商人。
冒険者。
NPC。
沢山の人。
「相変わらず」
ハヤテが街を見上げる。
「でかいな」
「うん」
でも。
「……」
なんだろう。
前に来た時とは少し違って見える。
「ガウ?」
リンファが俺を見る。
「どうしたの?」
「いや」
街を見る。
正門。
警備。
道路。
建物。
商業区へ向かう人の流れ。
以前ならただ大きいと思っていた。
すごいと思っていた。
でも今は自然と別のところへ目が向く。
警備はどうしているんだろう。
人の流れはどう整理しているんだろう。
商業区は。
住宅街は。
国をどうやって動かしているんだろう。
「……変わるものだな」
ゴウマが呟いた。
どうやら同じことを考えていたらしい。
「前に来た時は」
街を見渡す。
「ここまで細かく見ていなかった」
「そうだね」
俺は頷く。
俺たちも街を作った。
そして国を作った。
今まで見えていなかったものが、少しだけ見えるようになったのかもしれない。
「……」
たるとは黙ってアルカディアを見上げていた。
「緊張してる?」
俺が聞く。
「少しだけ」
珍しく素直。
「でも」
たるとは一度、深く息を吸った。
そしていつもの笑顔。
「大丈夫です!」
一歩。
前へ出る。
「行きましょう!」
「ガルドさんたちに」
「フェリシアのことを伝えに!」
「うん」
俺たちも歩き出す。
昨日。
俺たちは《フェリシア》を出た。
そして今日。
一日以上かけてようやく辿り着いた。
第五階層。
中央都市。
前回は《王虎の牙》として訪れていた場所。
でも。
今回は違う。
俺たちは国家からやって来た。
俺たち七人から始まった場所。
そこへ沢山の人が集まって。
皆で作った国。
その名前を初めて外の国へ伝えるために。
「行こう」
「はい!」
俺たちは久しぶりの《アルカディア》へ足を踏み入れた。
最後までお読みいただきありがとうございます!
今回は久しぶりの初期メンバー七人での旅でした。
一晩の夜営を挟み、ようやく《アルカディア》へ到着。
次回はいよいよ《フェリシア》建国の報告です!
お楽しみに!




