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#0015 放棄された探査キャンプ: 浮遊島惑星 その2

ちょっと左腕の調子が変で作業に支障が出るレベルなので、

続きは今まで以上に遅くなったりしなかったりするかもしれないです。

「お見事。さて、降りるかね。ただその前に忘れず装備の最終確認だ」


この惑星の大気は呼吸可能で、気候も穏やかだから

銀河に数ある個性的な惑星の中では安全な方だと言える。


強化されていない生身の人間でも問題ないくらいにはな。


だが、備えは常にしておくべきだ。


「えっと、これが環境シールドに……

こっちが戦闘用のシールド? だったよな?」


「ああ、それで間違いない。で、装備の仕方は簡単だ――どこでもいいから

邪魔にならない体や衣服の表面に押し付ければいい」


「なるほど……こんな感じでどうかな?」


2種類のシールドを手にとって眺めるニックスの疑問に答えてやると、

納得したようでこいつはそれを人間でいうところの後頭部に取り付けた。

正確には長い首の一番 "外側" ――首と頭の繋がる部分だな。


「いいんじゃないか? お前が邪魔にならないと思うならそれでいい」


「おう、これで大丈夫だぜ」


「ああ、なら出発しようか」


準備が整ったニックスと共に、下まで降りる。

――さて、最初の一歩を踏み出そうかね。


「よし、開けるぞニックス。準備はいいか?」


「おう、たのむぜ」


そして、これから目にするであろう初めての異星の景色に

期待を膨らませるニックスを背後に俺は船のランプを開いた。


その瞬間、船内の明かりとは違う穏やかな光が

ゆっくりと開いていくランプの隙間から差し込み、同時に

外の世界の姿が少しずつ明らかになっていった。


奥に見えるのは気流に削り取られてできた鋭い山肌と、

顔も名前も知らない先客がそこに設置した居住モジュール。


続いて手前には着陸パッドの床があり、そのふちまで行けば

はるか下に広がる深い谷を見下ろすことができるだろう。


船の降りた場所の周囲はところどころに草花が絡みついていて、

ここが放棄されてから長くはないがそれなりの時間が

経過していることを示している。


……どうせなら人工物のない場所に降りたかったという気持ちも

あるが、これはこれで面白いのかもしれないな。


「外は穏やかな様子だな。出ようか、ニックス」


「おう」


ニックスにそう言い、俺は先に船外へと出る。


――外の空気は、意外なほど暖かかった。


いや、どちらかとで言われれば冷たい方だろう。

だが、ここがはるか高空であることを考えれば暖かいと言っていい。


ついでに言えば、浮遊大陸というのがあまりにも大きいゆえに

周囲の景色はここが地表であると言われても納得してしまいそうなものだ。


まあ、もう少し"島"らしい場所に降りれば違ったんだろうな。

ただそれでも遠くを見れば大陸の上に浮かぶ小さな浮島を見ることはできる。


「おー、えっと……何か普通だな! 確かに重力は軽いけどさ」


そうやって外の空気を感じているとニックスも続いて船から降りてきた。

なんと……やっぱりお前も普通に感じるのか。


飛行種族がそう感じるのなら、何か違いがあっても

俺たちにはわからんだろうな、これは。


「ああ、確かに普通だな、ははは。まあでも低重力は初めてなんじゃないか?

そこら辺を歩きつつ体を慣らしてくるといいと思うぞ」


「そだな、んじゃちょっと行ってくるぜ」


俺がそう勧めると、ニックスはあいさつ代わりの笑顔を見せ、

何かから解き放たれたようにして着陸パッドの外へと走り出す。

さすがに船内は窮屈だったか? ははは、まあ楽しんで来ればいいさ。


「俺はここの建物の中を見てくるから、

満足したら戻って来いよ。じゃあ、また後で」


そう呼び掛けた頃にはニックスはすでに空へ舞い上がり

遠くまで行ってしまっていたが、一応聞こえてはいたらしいな。

耳が少しだけ震えるのが見えた。


――さて、建物の様子を見てくるかね。


遠隔操作で船のランプを閉じたら、ところどころが雑草で覆われた

着陸パッドの上を歩いて奥に見える居住モジュールの方へ向かう。

この調査キャンプらしき場所の構造は比較的単純だ。


パッドからまっすぐ歩けば居住モジュール、

右に行くと自然の地形そのままの突き出た岩があって

その上に小さな通信塔が建てられている。

アンテナの形状からすると通常の電波による通信設備だろう。

そこから周囲の山肌の方に視線を移すと

通信中継用の小さなアンテナも確認できた。


ついでに、空を自由に飛び回るニックスの姿もな。


ここは周囲を山に囲まれた地形だから日陰の部分が多いが、

時折日の光の下に出ると白い羽毛が光を強く反射するのでよくわかる。

寒冷地の出身だから仕方ないがさすがにこういう場所だと目立つな……。

だが、翼を大きく広げて風に乗るその姿はとても美しいものだと感じたよ。


おっと、話が逸れたか。


パッドから左側の方はと言うとそっちには通信室と簡易研究室のモジュールだ。


ここまでで見たものの内居住モジュールと研究モジュールは

壁面に埋まるように配置されているから中はもっと広いかもしれん。


まあ、ずっと外から眺めていても仕方ないし中の様子を見に行こう。


まずは居住モジュールだな。

ここの広さを確認すれば自動的に施設全体の規模も分かるというもの。

ただ、パッドの大きさを考えるとそれなりの広さがあると予想するね。


近付いてから改めて見てみると居住モジュールの外観はほとんど

苔のような見た目の草と蔦で覆われてしまっていて……あー、

入るには少し草むしりが必要な様子だった。


既にこれだけ周囲の環境に溶け込みつつあるのなら――

放棄されたのはいつごろだ? 一応ジェフに調べさせておくか。


<<「ジェフ? 俺の視界は見えているな? この施設の元の持ち主について調べてみてほしい」


>>「はぁ、また戦闘と関係のない仕事ですか。まあ構いませんよ」


ジェフには悪いな。


>>「モジュールの製造番号から購入者をを特定できるので、

分かったらキリのよさそうなところで声を掛けます。

調べるのに時間はかかりませんが邪魔はされたくないでしょうからね」


<<「ああ、頼んだ」


よし、障害物をどかすか。

あまり破壊はしたくないから引きちぎらずに済む部分は

引っ張ってずらす程度にとどめておこう。


……ああ、結構な量だ。

そこまで古くはないと思っていたがそうでもないのか?


====


撤去作業は2分ほどで終わった。

環境破壊は最低限に抑えたつもりだが、それでも何本か蔦をやってしまったよ。

まあ、悪くはないだろう。


さて中の様子は?


当然だが扉には電力が来ておらず、開閉は手動――というよりは人力だな。

このタイプのエアロックの手動解放はどうやるんだっけか……。


困ったことに忘れてしまった。

仕方ないし調べるかね。


個人端末からモジュールのオンラインマニュアルを開いて確認してみる。


ふむ、"操作盤の上と下のメンテナンスパネルを開いて中のレバーを降ろす"

と、手動開閉用のクランクが横から出てくるらしい。


そんな風に扉で手間取っているところ――

後ろからわずかなノイズが近づいてくるのを感じた。

ニックスだ。


「よ、戻ったぜ。ここの重力にも少し慣れて来たかなー。

で、オーウィンの方は調子どうだ?」


まるで獲物を狙うときのようにほぼ無音で降りてきたニックスだが、

ひとまずフリーフライトは気が済んだらしい。


「ああ、お帰りニックス。こっちの方はまあ、なんだ。

ドアの手動解放のやり方を忘れてしまってな、調べていたところだ」


「なるほど、やり方はもう分かったのか?」


「たった今見つけたところだよ。開けるから下がっていてくれ」


ニックスに距離を取るように言い、手順通りにメンテナンスパネルを素手で引き剥がす。

指先で外装に穴を空け、そのまま壁の表面を引き裂くようにして、な。

強化兵士なら工具無しでもこれくらいは軽い。


「え、素手でやるのか!?」


「まあ、別に民間用のモデルは攻撃に耐えるようには作られていないからな」


驚いている様子のニックスだが、

これくらいならお前でもできるんじゃないのか? とも思う。


「……多分お前でもできるぞ? 下にもう一つ

メンテナンスパネルがあるだろう? 試しに剥がしてみろよ」


そう言い、場所を空けてパネルを指差してやる。


「えぇ、ほんとに言ってるのか? うーん、まあ試すだけならいいか」


あまり信用していない様子だな?

だがそれでもニックスは試してみるようで、

俺と場所を代わると扉の前に立って下側のパネルに視線をやり、

一拍置いた後それに蹴りを入れる。


――いや、正確には爪で切り付けるといった方がいいか。


何にせよ、その一撃は樹脂で補強された金属製の外装を

簡単に切り裂き、そして周りの構造をへこませてしまった。


「うわっ、こんなに脆いのかよ?」


……どうも、力を入れすぎたらしいな。

ニックスも手ごたえ (?) のなさに困惑しているらしい。


「言っただろ、攻撃に耐える様な作りじゃないって。

普通の建築物としては必要十分の強度はあるんだがな」


こうやって簡単に壊せると感覚が狂うが、

どちらかと言えば強化生物やニックスみたいな特殊な生物の

身体能力がおかしいだけであって普通の人間や他種族から見れば十分丈夫だ。


「ははは、まあ……ちょっと面白かったかな。

えっと、これでドアを開けられるんだよな?」


「ああ。開けるから手順を見ているといい」


少し派手に壊しすぎなところはあるが、これくらいなら一応動くだろうさ。

何とも言えない空気が漂ってしまったが、さっさと開けて中を覗いてみようか。


二つのメンテナンスパネルそれぞれの中にあるレバーを初期位置の

反対方向に強く倒せば……よし、動いたな。


金属系の衝突音が鳴り、同時にドア前通路の右側にある

大きめのパネルが開いて手動開閉用のクランクが出てきた。


「なるほど。これを回すと開けられるのか……」


観察していたニックスも、口元に手を当て興味深そうにしている。


「そうだな。ただメーカーのマニュアルによると今のレバーを

操作することでクランクが開閉用の駆動系につながる構造だから、

先にこっちのパネルをこじ開けて回しても開かないようだ」


説明しながらクランクを回していると、"外側"の扉が開き切り、

今度は"内側"の扉が姿を現す。


「お、開いたな! ……って、そうか、もう一枚あるのか」


うむ、ニックスの言う通りこれはエアロックだから扉は2枚だな。


内側の扉はというと薄汚れてところどころ苔の付いた外側と違い

とてもクリーンで、気密性は保たれていることが分かる。

この感じだと中は放棄された当時のままだろう。

こっちもさっさと開けてしまおうか。


同じ手順で手動操作し、内側の扉も問題なし。


「よし、開いたぞ。とりあえず中に入ろうか」


「おう」


出入口はニックスにとってはかなり狭そうだが

頭を下げて翼を畳めば一応通れる程度だ。


先に中へ入ってニックスが通り抜けるのを待ったら、

俺は内側の手動開閉装置も展開して一度扉を閉めた。


別に閉めなくてもいいんだが、開いていると落ち着かないからな。


さて、中の様子は……?

揚陸艇から降りて居住モジュールの扉を開けることころまでで4300文字くらい使うのはさすがにどうなのとも思ったけど周囲の様子や人物の感想を入れるとどうしてもそれくらいになってしまう……。




なお、居住モジュールには通常の民間向けモデルの他に過酷な環境に耐えられる強化モデル、

兵器による攻撃を想定した軍用モデルなどがあります。


民間人でもコルベットやフリゲートのような

民間市場では大型輸送船を除き最大級の船を運用するような傭兵の場合は

軍用モデルの居住モジュールを使う場合も。

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