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#000F 衛星軌道へ

相変わらず遅いですが、とりあえずMod開発が一区切りついたため

少しずつ更新間隔はマシになっていくんじゃないですかね(願望)

揚陸艇に戻ってきて、俺とニックスはただ母艦との

ランデブーのタイミングを待っている。


宇宙の旅というのはなかなか待ち時間の多いものでな、

ジャンプ前後の速度合わせを待ったり、昼、もしくは夜の面に

降りるために軌道周期を待つだとか、今回のように母艦の軌道の都合で

ランデブー待ちだったりととにかく待つことの種類が多い。


一人だとぼうっとしていればいいだけなんだが、

こう他のメンバーがいるとどうしていればいいか難しいところだ。


ニックスはこのことを分かってはいるようで壁際に座って

じっと待っていてくれているにしても、暇であることに変わりはないだろう。


何か話のネタでもないものか。


「そうだ、なあオーウィン。船に戻ったら、この後はどこに行くんだ?

予定とかはあったんだっけ?」


じっと考えていると、ニックスの方から予定を聞いてきた。

確かに特に詳しい話はしていなかったな。


「ああ、予定はあるぞ。格納庫にはお前が入っていたもの以外に

たくさん低温ポッドがあったと思うんだが、あの中で凍っている

生き物たちを本来の住処に戻してやらないといけなくてな」


「あ、そうか、俺以外にも連れてこられた生き物がいるのか……

ってことはさ、帰してやるついでに行き先の惑星の探索とかもできそうだな!」


ニックスはこちらを見て笑う。

楽しそうなことで。まあこれからようやく自由な二人旅が始まるわけだ。


それがどんな旅になるかは正直分からない。

だが、ニックスと同じように俺としても楽しみではある。

今までずっと一人だったからな。


「はは、そういうのも面白いだろうな。まあポッド内の生物への

対応が終わったらまたさらにいろんな場所へ行く予定なんで、期待していてくれ」


「おう、楽しみにしとくぜ」




その後も少しニックスと今後の予定やら探索用の

装備の調達の話やらをして、打ち上げウィンドウまでの時間を潰した。


装備の話というのは――惑星探索は常に居住可能な惑星を対象に

するわけではない以上、ニックスにも環境防護用の装備が必要になるからだ。


温度差や有毒な大気、放射線やらに、場合によっては

鋭いガラスの破片が吹き荒れる世界だってある。


ニックスは力は相当に強いようだが身体の強度自体は

それほどでもないことが話を聞いている限りではわかるし、

この辺りは検討しておく必要があるだろう。

麻酔ダートが刺さる程度には皮膚は柔らかいということだ。


装備だけではなく生体強化処置も受けさせたほうが

いいかもしれない――そうなるとセントラルシティまで行く必要が出るか。

まあ、この辺はおいおいだな。


====


「よし、そろそろ船を出すぞ」


操縦席から身を乗り出して、

後ろの兵員室でくつろいでいるニックスに一声かける。

離陸まではあと30秒といったところだ。


キャノピーの方へ向き直り、操縦桿を握って待機していると

やはりニックスは様子を見に上へあがってきた。


「あれ、今回は普通に操縦するのか?」


ニックスは俺の手元を覗き込みながら尋ねる。


「ああ、こういう昔ながらのやり方だって悪くないものだからな。

なにせ思考入力は便利ではあるが不安定な部分もある」


不安定な部分というのは主に認識精度と応答性だ。


「そうなのか? 俺が操縦してみたときはそんな感じしなかったけどさ」


ニックスは不思議そうにこちらを見つめる。

まあこいつの場合はそうだろうな。


飛行種族のようにもとより空を飛ぶ感覚が体に

記憶されているのなら入力精度への影響はないが、

それ以外の種族だと歩いたり、移動したりといった

感覚を船の姿勢制御入力へ変換する過程でどうしても誤差が出てしまう。


つまり、飛行種族であるニックスには関係ない問題だからだ。


「いや、お前の場合は事情が違うんだ。

空を飛べる種族の思考は操縦系統への指令として変換しやすいからな」


「あ、そうか――思考入力ってほんとにそのまま思ってることを

機械への命令に変えるシステムなんだ。なるほど」


説明してやるとニックスも納得したようで、垂れていた耳も元に戻った。


「おっと、話しすぎた。離陸するぞ」


「ああごめん、邪魔しちまってさ」


ニックスと話していたせいで離陸時間を過ぎてしまっていた。

まあ、多少速度を上げれば取り戻せる程度だから気にするほどでもないな。


「別に大丈夫だ、これくらいはな。さあいくぞ?」


ニックスにそう返すと、

左手に握った宙に浮かぶ球体――三次元スロットルを斜め前へ持ち上げ、

揚陸艇の機体を宙に浮かべる。

そして、右側の操縦桿を手前に傾けて機首を上げたら、

あとはスロットルを前に押し出し、

メインスラスターの推力で一気に飛び上がると

窓の外に言える視界は大空の青一色に染まり、

同時にスラスターが巻き上げた雪がわずかに視界の端に纏わりつく。


……垂直上昇だとかなり目立つわけだが、

ニックスが言うにこの辺りは人も獣も立ち寄らない場所なんでまあ大丈夫だろう。


「おー、ほんとにすごい加速力だな! えっと、

この船のスラスターってなんだっけ?」


騒音が渦巻く中、後ろからニックスの声が聞こえた。

……積んでるスラスターの種類が気になるとは物好きな奴だ。


「グラビトンスラスターだ。形式までは覚えていないが――あー待てよ。

XG136/Tだな。サイズ1の円形エアロスパイク型

グラビトンスラスターらしい。

……ほら、見てみろ。船の状態表示に書いてある」


後ろを一瞬振り返り、計器盤の表示パネルの一つに

出ている船の立体表示を指差してみせる。


「あ、これがメインスラスターか。

へぇ、8発もついてるんだな」


「ああ、何かと重いものを運ぶ機会は多いからな、

揚陸艇というのは」


この船に積めるもので一番重たいものと言ったら、

おそらくは装甲歩兵だろう。

それか同サイズの陸戦ドローンかだ。


Mk.5バトルアーマーなら1着で16トンもある。

D形に至っては40トン越えだぞ?

それが何人も乗るんだ、重いに決まっている。


「っと、空が青黒くなってきたな。えっと……高度はもう25km?

俺の翼じゃ絶対ここまでは上がれないよなぁ」


そう話すニックスは、どちらかというと感心しているといった様子だった。


「おいおい、お前は翼があるだけ恵まれているだろう?

俺の場合全力で跳び上がっても200mくらいが限界だぞ?」


「え、むしろそんなに跳べるのか? 強化人間ってさ」


ニックスは目を大きく見開いて驚きの表情を見せた。


「ああ、一応はな。ただ跳べるであって。飛べるわけじゃない」


そんな俺の言葉に対して、こいつは視線を下へ向けてすこし考える。


「へへ、でも腕に大きな膜とか付けたらほんとに

飛べるんじゃないのか? それだけの力が出せるならさ」


……なんだよそれは。まだグライダーすらなかった頃の

人類ならやりそうな話だが――待てよ?


あー、それはそうかもしれないな。

確かに強化人間の場合で言えばニックスの言う通りかもしれない。

ただ、さすがに体を宙に浮かせることはできても

まっすぐきれいに飛べるかは正直自信がないぞ。


高度を稼いでからウィングスーツの要領で滑空するくらいならいけるか?


「まあ確かに飛べはするだろうが、あくまで空中に上がれるだけだと思うぞ?」


…………。


ああ、昔を思い出すよ。隊の仲間と軽口を叩き合っていた時代が懐かしい。

だが、同時にそんな時代には戻ってほしくないという気持ちも強い。


当たり前のことではあるんだがな、戦争なんてない方がいいものだ。

そんな時代に戻りたいなんて決して言えることじゃない。


「でも練習すればいけるんじゃねぇかなぁ? ……ん? どうかしたか?」


……また固まっていたらしい。


「いや、少し昔を思い出してな。さて、

もうそろそろ速度を上げてもいいころだろう。一気に軌道まで上がるぞ?」


「おう、後ろで見てるぜ」


「じゃあ、船へ帰ろうかね」


地表の住人に超音速衝撃波が届かない高度まで上がったことを

確認して、一気にスロットルを前に押し出す。


するとそれに合わせてグラビトンスラスターが薄っすらと白い、

そして細長く後ろへと伸びる排気を吐き出し始め、

船は猛烈な勢いで黒い空へと飛び込んでゆく。


マップ上に映る軌道を表す線も惑星の裏側へ届きそうなほどまでに

伸びてゆき、10秒もしないうちにその軌道は母艦のそれと交差した。


ランデブーまであと1分30秒だ。


いつ、どんな時でも、こうやって船を飛ばすのは楽しいものだな。



[操縦系統: 三次元スロットル]


磁場や重力場によって空中に固定された球体やグリップ状の操縦装置。

固定位置を基準に前後左右上下へ動かすことによって

その方向へ推進するために最適なスラスター噴射が行われる。


HUDやHMD、または神経リンク表示には現在の入力ベクトルと座標軸、そして

前後左右上下方向いずれか一つのみに推進させたい際の入力デッドゾーンも表示される。

また、推進方向を6方向に限定し、中間方向への入力をロックすることも可能。


[装備品: Mk.5 バトルアーマー]


トリニティ陸軍、および防衛軍の装甲歩兵隊に配備されている動力甲冑の一種。

Mk.4からのさらなる性能向上が図られている。

極高密度の素材によって構成されており、全高2.2m程度という

大きさからは想像できないほどの重さを持つ。


この状態では自然の地形、建造物問わず歩行に支障が出るため、通常は

質量操作による軽量化を適用して運用される。


バトルアーマーにはAからDまで、任務内容に合わせた派生型が存在し、

A型は標準モデル、B型は駆動システムの強化と重要部位の防護に絞った

装甲配分の変更が行われた高機動モデル、C型は軌道上からの降下のため

空中機動力の強化と軽量化がなされた空挺モデル、

D型は駆動システムの強化と装甲の追加により純粋な正面戦闘力を追求した

重装モデルとなっている。

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