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まあみなさん、聞いてください ~人生雑記~  作者: 藤村 トシユキ


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19/21

19 【創作論】承太郎はなぜグレたのか?

※作者の考察です

「こんにちは、藤村としゆきです」


「サトルです」


「サトルくん、なんで承太郎って不良になったんだろうね?」


「なんですかいきなり。承太郎って、『ジョジョの奇妙な冒険』のことですか?」


「そうそう。なんでだろうね?」


「かいもく分かりませんね。たぶん、反抗期か、父親の不在とかなんとか……」


「結論からいうと、キャラクターの『アーク』のためなんだ」


「アーク? アークって何ですか?」


「主人公の内面の変化、成長を表す言葉だよ」


「変化? 成長? なんすか、それ?」


「それが、物語には必要なんだよ」


「なんでですか?」


「作品が面白くならないからさ」


「そうですか? 別になくても、ストーリーが面白ければいいんじゃないですか?」


「そういうパターンもあるにはある。でもまれだよ」


「でも、なんでそれがあると面白いんですか?」


「それはね、読者は主人公を通じて感情移入し、自分と重ねあわせて物語を読むんだ。そして、その中で、読者は、主人公と共に成長していくからさ」


「そうですか? そんなこと思いながら漫画を読んだことなんかないですよ?」


「『ジョジョ』の作者、荒木飛呂彦先生いわく、物語は常にプラスに向かうべきなんだって。これは、ストーリーの進行とキャラの内面の両方のことさ」


「そうなんですかね?」


「だって、あるていど目的に向かって話が進んだあとで、『これまでの旅は無駄でした』ってなったらイヤじゃない?」


「う~ん、でも、ジョジョの中では、真実に向かうことが大事とか言ってましたよ?」


「そうだよ。それは、『無駄』じゃないってことなんだ」


「まあ、納得したようなしないような……?」


「で、話を戻すと、承太郎は、自分が不良と呼ばれている状態で、かつ、牢屋の中というマイナスからスタートするじゃない?」


「そうそう。いきなり留置場に入れられてるんですよね」


「うん。で、敵との戦いの中で、本当の悪を知り、花京院を救い、母親の命を助けるために、DIOを倒す旅に出るわけだ」


「それが、プラスに向かうってことなんですか?」


「そう。もはやそれまでの不良ではなくなったってわけ」


「まあ、そう言われると確かにそうですけど、でも、ほんとにそれ、必要なんですか?」


「必要さ。読者は主人公と共に精神的に成長していくのさ。だから、物語は、主人公がゼロかマイナスから、プラスになっていき、途中、常に主人公はプラスにならないといけないってわけ」


「ふ~ん、なるほどですね。僕はてっきり、承太郎の過去になんかあったと思ってましたよ」


「そうだね。でも、じつはプロットの都合なのさ。だから、考えても答えは出ないわけ」


「なるほど。でも、それならそうと先生が言ってくれればいいですよね?」


「いや~、作者は説明なんかしないのさ。手品師がタネを見せるようなものだからね」


「でも、説明するときもありますよね?」


「そうだね。でも、作者の言うことは、真に受けないほうがいいよ。プロは肝心な質問には答えないよ。答えるのは、エンターテインメントとしてさ」


「へ~、じゃあ、としゆきさんは、質問に答えてくれるんですか?」


「もちろん」


「でも、そもそも誰にも質問されないですよね?」


「……うん(泣)」


参考文献:『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社)

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