19 【創作論】承太郎はなぜグレたのか?
※作者の考察です
「こんにちは、藤村としゆきです」
「サトルです」
「サトルくん、なんで承太郎って不良になったんだろうね?」
「なんですかいきなり。承太郎って、『ジョジョの奇妙な冒険』のことですか?」
「そうそう。なんでだろうね?」
「かいもく分かりませんね。たぶん、反抗期か、父親の不在とかなんとか……」
「結論からいうと、キャラクターの『アーク』のためなんだ」
「アーク? アークって何ですか?」
「主人公の内面の変化、成長を表す言葉だよ」
「変化? 成長? なんすか、それ?」
「それが、物語には必要なんだよ」
「なんでですか?」
「作品が面白くならないからさ」
「そうですか? 別になくても、ストーリーが面白ければいいんじゃないですか?」
「そういうパターンもあるにはある。でもまれだよ」
「でも、なんでそれがあると面白いんですか?」
「それはね、読者は主人公を通じて感情移入し、自分と重ねあわせて物語を読むんだ。そして、その中で、読者は、主人公と共に成長していくからさ」
「そうですか? そんなこと思いながら漫画を読んだことなんかないですよ?」
「『ジョジョ』の作者、荒木飛呂彦先生いわく、物語は常にプラスに向かうべきなんだって。これは、ストーリーの進行とキャラの内面の両方のことさ」
「そうなんですかね?」
「だって、あるていど目的に向かって話が進んだあとで、『これまでの旅は無駄でした』ってなったらイヤじゃない?」
「う~ん、でも、ジョジョの中では、真実に向かうことが大事とか言ってましたよ?」
「そうだよ。それは、『無駄』じゃないってことなんだ」
「まあ、納得したようなしないような……?」
「で、話を戻すと、承太郎は、自分が不良と呼ばれている状態で、かつ、牢屋の中というマイナスからスタートするじゃない?」
「そうそう。いきなり留置場に入れられてるんですよね」
「うん。で、敵との戦いの中で、本当の悪を知り、花京院を救い、母親の命を助けるために、DIOを倒す旅に出るわけだ」
「それが、プラスに向かうってことなんですか?」
「そう。もはやそれまでの不良ではなくなったってわけ」
「まあ、そう言われると確かにそうですけど、でも、ほんとにそれ、必要なんですか?」
「必要さ。読者は主人公と共に精神的に成長していくのさ。だから、物語は、主人公がゼロかマイナスから、プラスになっていき、途中、常に主人公はプラスにならないといけないってわけ」
「ふ~ん、なるほどですね。僕はてっきり、承太郎の過去になんかあったと思ってましたよ」
「そうだね。でも、じつはプロットの都合なのさ。だから、考えても答えは出ないわけ」
「なるほど。でも、それならそうと先生が言ってくれればいいですよね?」
「いや~、作者は説明なんかしないのさ。手品師がタネを見せるようなものだからね」
「でも、説明するときもありますよね?」
「そうだね。でも、作者の言うことは、真に受けないほうがいいよ。プロは肝心な質問には答えないよ。答えるのは、エンターテインメントとしてさ」
「へ~、じゃあ、としゆきさんは、質問に答えてくれるんですか?」
「もちろん」
「でも、そもそも誰にも質問されないですよね?」
「……うん(泣)」
参考文献:『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社)




