20 民俗学的に見る、なろうの婚約破棄
※内容は検証が必要です。エンタメとして読んでください。
「こんにちは、藤村としゆきです」
「マキです」
「マキちゃん、なろうの婚約破棄ものってさ、民俗学的にいうと『異類婚姻譚』だよね?」
「はあ? 異類婚姻譚ってなんですか? 漢字ばっかりですね」
「昔話で、人間以外のものと結婚する話だよ。『鶴の恩返し』とかあるじゃない?」
「あ~、それなら知ってます。女の人に化けた鶴をお嫁さんにするんですよね」
「で、娘が嫁ぐパターンもあるのよ。『猿婿』とかね」
「猿に嫁入りする話ですね? それも聞いたことあります」
「あと、『一寸法師』や『タニシ長者』もそうだよね」
「『タニシ長者』ってなんですかw」
「『つぶ婿』っていってね、一寸法師と同じで、小さい旦那と結婚する話さ」
「ちょ、さすがにタニシは意味わかんないですよ」
「とにかく、話を聞きなさいって」
「はいはい」
「まず、最初に婚約者に婚約破棄される部分。ここまでが『猿婿』なの」
「え? たしかその話って、嫁が逃げ出すんじゃないですか?」
「そうだね。でも、集落の利益のために、望まぬ婚姻をさせられるって点では同じなんだよ」
「う~ん、まあ、たしかに」
「で、なろうでは向こうが勝手に婚約破棄を突き付け、あとで勝手にざまあされるわけ」
「昔話では、娘が自分から行動するんですよね? 猿を川に落としたり。なろうは違いますね」
「うん。これは、『自分から行動したくない』という、なろう読者の特徴を反映していると思う。婚約どまりなのも、主人公の純潔を守りたい願望のあらわれじゃないかな」
「女だって、自分から動かなきゃ、何にもなりませんよ!」
「まあまあ。そして都合よくあらわれる新ヒーロー令息だけど、これが『タニシ』にあたるんだよね」
「は? 令息がタニシ? なに言ってるんですか、としゆきさん」
「猿もタニシも『異類』には違いないからね。これは『異人』のメタファー(比喩)さ」
「『異人』? 猿やタニシが異人なんですか?」
「メタファーだってば。共同体とは異質なものは、すべて『異人』って呼ぶのさ」
「異人って、外国人の昔の言い方だと思いましたよ」
「とにかく、猿とタニシ、両方の異人の共通点は『有能』なことだね」
「有能? 仕事ができるんですか?」
「うん。田んぼに水を張ったり、馬で米俵を運んだりさ」
「じゃあ、違いはなんなんです?」
「それは、『怖い怪物』か、『可愛がるもの』かだね」
「猿が怖いほうで、タニシが可愛いほうですね?」
「そう。『怖い』は『有害』、『可愛い』は、『無害』ともいい換えられるね」
「え~っと、で、その違いがどうなるんですか?」
「つまり、どちらも共同体に利益をもたらすけど、一方はコミュニティからの拒絶、もう一方は受け入れ、ということになるんだよ」
「じゃあ、なろうでいうと、拒絶されるのが元婚約者で、受け入れられるのが新しい令息ってことですか?」
「そうだね。もちろん『タニシ』は、可愛いというより、カッコいい、になろうナイズされるけどね」
「はい! イケメンのスパダリってことですね」
「物語はメタファーだ。だから、もともとは、古代~中世の時代に、他の集団を受け入れ同化するか、排除するかの違いが、物語に反映されたものだと思われるね」
「ひょっとして、それがなろうにも受け継がれてるっていうんですか? 脈々と」
「そそ。その2つを合体させたものが、なろうの婚約破棄ものってことさ」
「へ~え、いちおう、なるほどって感じしますね」
「まあ、持論だけどね」
「持論って……この考察、意味あったんですか?」




