18 安心して怖がりたい
1:恐怖とはなにか
「こんにちは、藤村としゆきです」
「くびれ鬼です」
「クビレちゃん、ホラーってなんだろう?」
「ホラーって『恐怖』って意味ですよね?」
「じゃあ、怖いものって何?」
「えーっと、お化けとかゾンビとか殺人鬼とか……あとは、熊とかライオンとかの猛獣?」
「怖いのは、『苦痛』なんだよ」
「いや、他にもあるでしょ? くびれ鬼とか」
「それは君だろ。さっきクビレちゃんがあげたものは、『苦痛に導くもの』なんだよ」
「導く? 襲われるから、ですか?」
「そう。襲われて、苦痛を感じるからさ」
「それはそうですけど……、他にもあるんじゃないですか?」
「そうだね。それじゃあ、バカにされてカッとなるのはどうしてかな?」
「それ、苦痛なんですか?」
「人から見下されると、コミュニティでの地位が下がる。で、役立たずと認定され捨てられるじゃない? そしたら、餓死や獣に襲われる、という『苦痛』が待っているのさ」
「そうですかぁ? なんか論理の飛躍ってやつじゃないですか?」
「もちろん、そんなことは意識していないけど、そういう苦痛を避けることで、人類は何十万年もの間、石器時代を生き残ってきたんだ。いわゆる『本能』ってやつさ」
「うーん、ほんとですかぁ?」
「あと、恐怖の要素として『未知のもの』ってのがあるね」
「人の話、聞いてます?」
「聞いてるってw これもね、『未知そのもの』が怖いわけじゃなく、それが何をするかわからない、だから自分たちに危害=苦痛を与えるかもしれないから怖いってことなんだよね」
「未知のものが怖いってことですか?」
「そいつが『苦痛を与える可能性が』怖いってことだよ」
「可能性? 苦痛が怖いんじゃなかったんですかぁ?」
「苦痛そのものより、未知のものが苦痛を与えるかどうかわからない、という状況が、もっとも怖いのさ」
「そうですかねぇ? テキトーに言ってないですか?」
「じゃあね、クビレちゃん。『嫌なやつ』と、『何をしでかすかわからないやつ』のどっちのほうが怖い?」
「う……それは、『何するかわからないやつ』ですね……」
「だろ? 『嫌なやつ』とわかっているなら、対処ができるけど、何をするかわからない相手の場合、あらゆることを想定しなければいけなくなるんだ」
「あらゆることを想定、ですか? そんなことできます?」
「『わからない』ってことは、『わかっていること以外の全部』だからね。で、脳は最悪の事態を想定するんだ。これは、脳にとって負荷になるし、強い恐怖を感じるわけ」
「へぇ~、へぇ~」
「これが『未知』と『恐怖』の関係だね」
◆ ◆ ( ^^) _旦~~
2:安全な恐怖
「じゃ、次はホラー作品のお話ね」
「あたし、ホラー好きですよ♪」
「君は存在自体がホラーだからね」
「確かにw じゃあ、人間さんはなんでホラーなんか見たがるんですか?」
「そもそも、ホラー作品って、本当に怖いのかな?」
「はあ~? 何言ってるんですか、としゆきさん。ホラーって、怖いって意味じゃないですかぁ」
「ずっと前にさ、知り合いで、映画の『ソウ』が大好きな人がいたんだ」
「あの映画が『大好き』なんですかw」
「でね、その人に聞いたところ、『偽物とわかっているから楽しめる。現実にこんなことがあったら恐怖でしかない』って言うんだよ」
「ソウなんですか?」
「ソウなんだ」
「しょうもないシャレですね」
「……君が先に言ったんだろ。でさ、ホラー作品って、ジェットコースターみたいに安全圏から見ているから楽しめるってことなんだ」
「まあ、そりゃそうですかね」
「ジェットコースターは怖くないけど、運転の下手な人の車に乗るのは超こわいよね?」
「あー、それ、めっちゃ怖いです」
「ほんとうにホラーな作品を楽しみたいならさ、もうとにかく何が起こるかわかならい、めちゃくちゃな作品が怖いよね?」
「怖いけど、そんなの見たくないですよー」
「でしょ? だから、ホラー映画は『お約束』が多いんだ。『いちゃつくカップルは殺される』とかのあれね」
「あーそれ、あるある! ありますよ」
「お約束というか、もはやクリシェ(あまりにありきたり)だよね。かといって、このカップルが殺されなかったら『なーんだ』ってなるし」
「たしかに、なんか物足りないですよね?」
「つまり、ホラーが好きな人は、『安心して怖がりたい』ってわけ。いわゆる『泣ける映画』とかでも、実際に悲劇を体験したいわけじゃないってこと」
「あー、そうですか。でも、まあ、そりゃそうでしょ、って感じなんですけど、としゆきさん?」
「それだけじゃないよ。人はわざわざ恐怖や悲しみを、お金を払って体験したがるんだからさ」
「考えてみれば変ですよね?」
「恐怖や悲しみが苦痛を生むだけなら、ひたすら回避するし、ましてやお金を払ってまで疑似体験したいはずがないよね」
「う~ん、言われてみれば、謎ですね。気にしたことなかったですけど」
「これはね、『恐怖や悲痛を楽しめるくらいの個体が、生き残ってきた』ってことさ。人類の歴史は苦痛の歴史といっていいからね」
「楽しんでる……んですかねぇ?」
「楽しんでるっていうか、カタルシスを感じるといったほうがいいかな? それを感じられる者が生き残ってきたと」
「はい。で、としゆきさん、結論は?」
「ホラーは、恐怖の程度、未知と既知のバランスが大事だね。『本当に怖い部分』と『お約束』の部分のバランスってことね」
◆ ( ^^) _旦~~
3:では、どう創作するか
「じゃあ、この理論をホラー作品に応用すれば、めっちゃ怖い作品が作れるよね?」
「あ、わかりました。『常に何が起きるかわからない』、『どんなものが現れるかわからない』作品ってことですね?
「そう。常に既存の概念を超えたことばかりが起こる。そしてストーリーにも脈絡がない」
「何それ怖いw めっちゃ怖いですよ」
「ホラーだからね(笑)で、これ、面白いかな?」
「面白くないですよ!」
「だよねw 前衛的すぎて、シュールレアリスムになっちゃうよね。だから、ホラーって、わかりやすいお約束で成り立っているということだね」
「じゃあ、お約束で作品作ればいいじゃないですか?」
「ううん、それだけだと、あまりにありきたりな作品になっちゃうよ。でも、それでもある程度のクオリティは担保されるってことだね」
「担保されるならいいじゃないですか!」
「いや、僕は、少しでもオリジナリティは必要だと思う。でも、その話はまた別の機会にね」
「ネタを引っ張る気ですか?」
「さあ? じゃ、まとめ。安心して怖がれるホラーが良作。いっけん矛盾してるけどね」
例外も多々ありますので、あしからず。
クビレちゃんの作品はこちら
ホラー版 https://ncode.syosetu.com/n1823mo/
コメディー版 https://ncode.syosetu.com/n9433mp/




