第18話 手がかり
ダンジョンの地図の上で、魔法の駒がまた、止まるべきでない場所で止まった。
DMは駒のひとつを半マスだけ前へ動かし、結果に目を細めて、首を横に振った。
『三十八回目。そして、また全滅だ』
彼がステッキをひと振りして駒を下げると、駒はおとなしく空中に溶け、次の試行でまた現れるのを待った。
オレグちゃんは彼のひざに頭をのせて横たわり、すっかり自分の安らぎに浸りきっていた。
彼の片手はのんびりと彼女の触角のあいだをなで、もう片方の手は地図の上の小さな駒を動かしつづけている。
彼女はごろごろと喉を鳴らしていた――小さく、一定の調子で、いつものように。
「梟がヴェルに来たら、どうするの?」
DMは一瞬、手を止めた。
「まだわからない」
彼はまた駒を動かした。
「ただ、ひとつだけわかっている。犠牲なしには済まない」
オレグちゃんは黙っていたが、その触角がかすかにしおれた。
『王国は今もフェリクスに関わるすべてを探しつづけている。残響、装備、遺産――何でもいい、かけらひとつでも見つかれば』
この捜索の規模に驚くのを、彼はとうにやめていた。
フェリクスは生涯のうちに、残響を大陸じゅうにばらまいただけではなかった――どうやら子供も、ずいぶんたくさん残していったらしい。
今では、ふたつにひとつの地方で、その血を引く者が調べられているほどだ。その血は、それ自体が危険なものだった。
ある者にはちょっとした才能として現れる。
だが別の者には、たった一体のモコで何百人もの死者を出す大惨事を起こせる力として現れた。
『だから殺される。危険を冒すより、殺すほうが簡単だからだ』
DMは、フェリクスが彫像や伝説が描くような非の打ちどころのない英雄ではなかったことを知っていた。
彼について幻想を抱かない程度には、よく知っていた。
だがそれを自分の執務室以外で口にすれば、深刻な厄介ごとを招くことになる。
この王国のフェリクス信仰は、今も信じられている多くの神々よりも、ずっと生きていた。
「ヴェルで騒ぎを起こしたくない」と彼は言った。「ただでさえ、みんな神経が張りつめている」
「あなたの役目は、うちの子たちがとばっちりを受けないようにすること、でしょ」と、オレグちゃんが静かに答えた。
「そのとおりだ」
扉を叩く音が、会話をさえぎった。
カヴェンとケインが入ってきた。
オレグちゃんはDMのひざから起き上がって隣に座り直し、もうすっかりいつもどおりの、仕事の顔になっていた。
カヴェンは腕を組んで壁際に立った。ケインはその隣で止まった。壁そのもののように、動かない。
「かけてくれ」とDMは言い、肘掛け椅子を指した。
カヴェンは座らなかった。
「立ったままでいいか、兄弟」
「まずはダンジョンからだ」DMは地図の別の部分を引き寄せた――今度はテスト用の筋書きではなく、実際のものだ。「図書館。王家の梟の亡骸、パッキーの群れ、ガラクタの山」
「ナエさんとモさんのパーティーが、以前に訪れた場所です」とオレグちゃんが言った。「おとぎ話の本を探す依頼でした。ルッカが見つかったのも、そこです」
DMはうなずいた。
「コイについてわかっているのは、王都から来たこと。そして、カヴェンを倒したこと。それだけだ」
ケインが、重く低い音で鳴った。
ゴーン。
DMは問いかけるようにカヴェンを見た。
「見せたよりずっと強かった、だとさ」とカヴェンが訳した。「こいつの見立てじゃ、手加減してたらしい」
「根拠は?」
「コンテストのあと、モのところで神経毒の小瓶が見つかったんだ、兄弟。王都製だ。高価なやつで、アリーナの消耗品じゃまずありえねえ」
「それで?」
「最初からそいつを持ってたなら、ケインに使ったはずだ」カヴェンは相棒のほうにあごをしゃくった。「つまり、小瓶は戦いのあとに現れた。誰かが置いていったんだ」
DMは手帳に書き留めた。
「ほかには?」
「あいつは俺に押されてた。本当に押されてた」カヴェンは、言葉をより正確に選ぶように、一瞬黙った。「だが、受け身がうますぎた。どこに落ちるか、最初からわかってたみたいにな。本当に制御を失ったのか、そう見せてるだけか――その区別がつくくらいには、俺も戦ってきた」
『つまり、戦いの一部は芝居だった』
DMは椅子の背にもたれた。
「何かを隠している」
誰も反論しなかった。
「ナエについては?」と、彼はオレグちゃんに聞いた。「あれも王都の出だ」
「ご指示どおり、記録を調べました」彼女は小さな手帳を取り出した。「古い記録がございます。かつて、王都の武器庫襲撃への関与を疑われていたようです」
「疑われた」とDMは繰り返した。「証明はされていない」
「されておりません」
彼はケインの装備を見た――重い青銅の鎧。その下から、見覚えのある白っぽい鉱物がのぞいていた。
『骨鉱。梟の鎧に使われているのと、同じ素材だ』
「カヴェン、キーとジャンは何と言っている?」
「危ないやつには見えねえってさ。順応が早い、それだけだ。コンテストじゃ、あいつのチームの撃破はほとんどルッカがやってた。本人じゃなくな」
DMは数秒、黙って考え込んだ。
『証拠のない古い記録。金級の冒険者二人の目から見た、落ち着いた性格。告発するには足りない。今のところは、まだ』
「わかった。では、モだ。あれは、いったい何者だ?」
「見つけたのは俺たちだ」とカヴェンが言った。「俺と、ケインと、キーと、ジャン。あのダンジョンで、フェリクスの遺産に関わるものを探してた」
「それで?」
「何も見つからなかった」カヴェンは肩をすくめた。「唯一変わってたのは、どこかの冒険者の古い装備だけだ。牢屋の中にな」
「牢屋ですから」とオレグちゃんが口をはさんだ。「牢の中に古い装備があるのは、ごく普通のことです。記録と台帳で照合いたしましたが」と彼女は付け加えた。「何の情報もございません。ただの未登録の装備です。不思議なところは、何も」
DMはまた地図の上の駒を動かした――反射的に、今の話とは何の関係もなく。また一体、二手目にたどり着いたところで倒れた。
彼は小さくため息をついて、盤面をまとめて消した。
ソファの背にもたれる。オレグちゃんが、まるでこの瞬間を待っていたかのように、また彼のひざに頭をのせた。
「わかった」と彼はようやく言った。「では、二人に頼みたいことがある」
カヴェンが背筋を伸ばした。
「ヴェルで、コイについての噂が広がらないようにしてくれ。あの子のまわりに、疑問が溜まりすぎるのは避けたい」
「誰かが、何か大事なことを掘り当てると思ってんのか?」とカヴェンが聞いた。
「十分に深く掘れば、知るべきでないものが出てくると思っている」DMは窓の外を見た。ヴェルの屋根の上に、夕闇が濃くなりはじめていた。「それが梟をここへ呼び寄せることになるなら――そうならないほうがいい」
「わかった、兄弟。やっとく」
ケインが、同意のしるしに短く鳴った。
ゴン。
DMは、もうしばらく窓の外を見ていた。
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別の場所――暗く、静かで、一本のろうそくの炎だけに照らされた場所で、コイが手紙を手に座っていた。
読むのは、もう二度目だった。
もしいつか、またヴェルに来ることがあったら――それか、僕が王都まで行けたら――一緒に街を歩きたい。前に話したみたいに。
彼女は小さく笑った。
「……ばかだなあ」
その声に、軽蔑はひとかけらもなかった。
むしろ何か、やわらかく、ほとんど優しいものだった――もう長いあいだ、誰にも向けられることのなかった、まっすぐな気持ちへの反応。
彼女はろうそくの炎を見つめて、ダンジョンの中心の焚き火を思い出した。自分がした質問を思い出した。
『きみの夢って、なに?』
そして、彼の単純で、ぎこちない答え。
彼女自身の夢も、ほとんど同じくらい単純だった。穏やかな暮らし。自分のすることを、自分で決める権利。
大それたものは、何もない。
『不思議ね。こんなに、あいつの夢と似てるなんて』
コイは手紙をたたんで、袖の中にしまった。バツ印のボタンの、すぐそばに。
「……待ってて」と、彼女はほとんどささやくように言った。
ろうそくが、暗闇の中で小さくはぜた。
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第一章 チュートリアル 完




