精霊戦争について《ティア》
《ティア》
昔、西のハモリア大陸に二つの国がありました。
一つはソクアヴェスタ。希望教を信仰する、青い国旗が目印の国でした。
もう一つはヴァルクシェンナ。姫神教を信仰する、赤い国旗が目印の国でした。
二つの国は、人類の歴史上、一番古くからあると伝えられています。その歴史に相応しく、両国とも大きく立派な国でした。
そして、どちらも慈愛に満ち溢れた国でした。貧しい国があれば物を施し、病気で苦しむ国があれば医療を伝えました。
多くの国は、この二つの国を中心に発展していきました。グランディエも、ヴァルクシェンナの人が作ったとされています。
しかし百年ほど前、二つの国は戦争状態となりました。
魔道に優れたソクアヴェスタ。
武術に優れたヴァルクシェンナ。
大国どうしは激しく争い、戦争は泥沼状態と化しました。
他の国も戦争の影響を大きく受けました。特に、希望教と姫神教を信じる人どうしが争うことが、世界各地で起こりました。
そして三十年ほど前でしょうか。ソクアヴェスタは大きな力で持って、世界全体に宣戦布告したのです。ソクアヴェスタは世界から恨まれました。もちろん、希望教を信じる人も疎外されました。
世界全体が戦争状態となり、たいへんな混乱に陥りました。
しかし、諦めずに戦ったのがヴァルクシェンナと姫神教です。ソクアヴェスタは強大な力を持っていましたが、最後にはヴァルクシェンナが勝ちました。
ですが、その代償は大きなものでした。ソクアヴェスタはもちろん、ヴァルクシェンナも滅びてしまったのです。
それが、十年前のことです。
この百年の、ソクアヴェスタとヴァルクシェンナの間に起きた戦争が、そして世界各地で起きた悲劇の数々が、【精霊戦争】です。
精霊戦争の終結から十年経ちますが、世界にはまだ多くの傷が残っています。
一つは、希望教を信じる人への差別。
世界各地にあった希望教会は次々に焼かれ、信仰する人々が命を奪われることが続きました。
また一つは、【精霊の形代】への差別。
精霊の形代は、ソクアヴェスタがより強い兵士を得るため、【禁術】を使って生み出したとされています。禁術の内容は明かされていません。
精霊の形代は、習得が難しい魔道を容易く扱う力を生まれつき持っており、その力を人々は恐れたのです。
どちらへの差別も、今は姫神教が定めた国際法で禁じられています。ですが、戦争の傷跡と差別は、今も世界に悲しい影を落としているのです。
あら、もうこんな時間。そろそろランプに火を灯しましょう。
え?ソラ、灯してみたいですって?
ふふ、どうぞ、マッチを擦ってごらんなさい。




