ジオリダム、十二星座の乙女《ソラ》
《ソラ》
ジオリダムまでの道中、俺たちはユフィの学院について話を聞いた。ユフィが在籍する国立魔道学院は、エルコトルで言っていた通り、それまでジオリダムにあった多くの上級学校に比べ、安い学費で高度な魔道の知識を与えられると言う。十歳を迎えれば入学試験を受けられると言うが、その門は狭く、合格する平均の年齢は十五、六歳だと言う。
「まあ、俺は十歳で一発合格だったけどな。」
ユフィは得意気になって言った。以前は鼻持ちならなかったであろう態度も、今は照れ隠しだろうと、カイなんかは微笑ましく見守っていた。
安い学費で高度な教育を受けられるとだけあり、異国からの入学希望者も多いらしい。さらにエクラ種の学生もいるため、ジオリダムに居ながら様々な価値観に触れられるのも魅力だとユフィは言う。
「授業って、どんなことするんじゃ?」
カスガが問うと、ユフィは自分の受けたい授業を受けられる、と説明した。魔道の適性によって授業を選べるし、他にも例を挙げるなら、ユフィの精霊が神話や童話を好むため、歴史の授業を選ぶこともできると言う。
「へえ、それっていいわね。私がリベリアで通っていた学校は、受ける授業が決まっていたもの。」
マキが感心すると、ユフィは、そのぶん自分の適性や目標を理解していないと苦労する、と答えた。さらに、人気の教員とそうでない教員、厳しい教員と緩い教員など、学生によって選び方などが出るようだ。
「カイとカスガは、学校に通ってなかったのかい?」
俺が質問すると、カイが答える。
「レシオにいる時は、通ってなかったよ。母に勉強を教わっていたけれど。グランディエに養子に来てからは、家庭教師だったよ。」
俺たちはへー、と反応する。学び方にも、いろいろあるものだ。
そして、俺はカスガは?と聞いた。すると、カスガは目を泳がせた。
「ワシか?まあ、学校は、通っとらんのう。」
久しぶりに出た、明らかに自分を隠し、動揺するカスガ。いつか、ユフィのように、カスガも自分のことを打ち明けてくれるのだろうか。
戦争の影があるとは言え、学校の話を聞いたぶん、俺のジオリダムへの期待は高まっていた。そして、遠くにその城下町を囲む外壁と門が見えてきた。その外壁は、ハッキリとした白色で、夏が近い青空に映えている。
「なんだか、外壁の形がおかしくない?」
マキが指を指す。確かに、ほんの一面から見ただけでも不自然な形をしていそうだ。鳥の目線で空から見下ろしたら、不思議な出っ張りがありそうな外壁だ。
「ジオリダムは、結界魔道と建築の天才と言われたルイ=ガウェラが建国の際に設計した国だ。空からジオリダムを見下ろすと、外壁が大きな魔道陣となっている。それに、見ろ。」
ユフィの指す方を見ると、外壁の上に兵士らしき者が立っている。
「見張りの兵だろうけど、不思議だね。何の武器も持っていない。」
カイが抱いた違和感に、俺たちも同感した。すると、ユフィが説明する。
「あの兵士たちは、結界魔道を使う。敵の侵攻があったなら、あの兵士たちによって強力な結界が展開される。」
俺たちは大袈裟に驚き感心する。今までの国や街と、明らかに何かが違う。ユフィは言う。
「ジオリダムは、ここ百五十年ほどで建国された、比較的若い国だ。ソクアヴェスタから流れてきた人々が様々な国の歴史を踏まえて、外壁の魔道陣や建物の位置を決め、結界を展開できるように計算したんだ。」
「はあ、まさに魔道大国じゃのう。」
若い魔道大国に生まれたユフィを、長い王朝の歴史を持つ国のカスガが感心する。
俺たちはジオリダムへ足を踏み入れた。城下町の門では入国の審査があったが、ヴェーゼンほど厳格ではなく、すんなりと入国できた。
街は若い国ということもあり、今までの国の風格あるレンガの建物と比べ、新しく洗練された印象を受けた。建物の壁が、鮮やかで深い青色なのである。それも、ただ青いだけでなく、小さな四角形で埋め尽くされた、今までに無い壁だった。
「すごい。綺麗ね。港のあるジオリダムに、ぴったりの美しい壁ね。」
マキもその、海のような青に見惚れていた。ユフィは説明する。
「この壁は化粧レンガと言うものだ。見た目の美しさだけでなく、風雨に強く、耐久性が高いのが特徴だ。精霊戦争の終結以降、この街の景色を見るためだけに訪れる旅人も多い。」
確かに、この景色は一度でも目にする価値がありそうだ。
しかし、ここでカイが疑問を口にする。
「…なんだか、これから侵攻しようと言う国の雰囲気が無いね。バルセールのものものしい雰囲気と正反対だ。」
言われてみれば、街の門を入ってすぐの市場は賑わっているし、武器を装備した傭兵の類いも見かけない。近くの喫茶店では、若い女がお茶を飲んでおしゃべりをしている。
「とてもじゃないが、戦時下には見えんのう。」
カスガがそうこぼすのに、俺たちも同感しながら、今夜の宿を探すことにした。市場を少し歩き、宿のある区域を目指す。その途中で、ユフィが突然立ち止まる。
「どうしたんだい、ユフィ?」
俺が問うと、ユフィは何も答えず、一件の店を鋭く睨みつけていた。どんな店かと注目すると、それはただの花屋だった。花の絵が描かれた看板が見える。
しかし、そこには多くの人が集まっていた。それも、若い男たちが多いように見える。戦時下だと言うのに、余程、繁盛しているのだろう。
不思議な思いで見つめていると、ユフィがその花屋にズカズカと前進した。
「ゆ、ユフィ?」
カイの制止も聞かず進むユフィを、俺たちも追いかける。
「はい、ラベンダーですね。どうぞ。」
「あ、アンナちゃん、この花さ、そのまま君に贈りたいんだ。」
「ごめんなさい。でも、気持ちが安らぐ香りだから学生さんにぴったりよ。」
「はい、スズランですね。どうぞ。」
「アンナちゃん、この花を飾って、一緒にお茶でもどうかな?」
「ごめんなさい。スズランってね、毒性の強い花なの。見た目や香りは好きだけど、お茶の横には置きたくないの。」
若い男の人だかりの先に、そんな会話が聞こえる。人だかりで見えないが、どうやら店員の名はアンナと言うようだ。アンナは次々と、男が贈ってくる花と甘い誘い文句を断り続けた。
「なんだい、そんなにいい女なのかねえ。」
俺が言うと、若い男たちが睨んできて、ギョッとする。そして、ついでのように、気づいたようだ。
「え、あれ?お前、ユフィ?」
「げっ、帰ってきたのかよ。」
若い男たちが、口々に憎まれごとを言う。ユフィはそんな声を物ともせず、人混みを分けて行った。そして、目にしたものは…。
「え、か、可愛いっ。」
マキの目が、完全にハートの形になっている。すると、見たことの無いほどの美少女がいたのだ。セーラなど美しい女はこれまでも見てきたが、目の前の美少女はこの世のものと思えないほど、神秘的なくらいに美しい。
「わあ、ユフィ、帰って来たんだ。おかえり。」
「ああ。」
美少女はユフィに向かって微笑む。周囲に花が咲いたようだ。
「なあ、アンナちゃん、俺たちの名前は覚えてるかい?」
若い男たちが問いかけると、アンナと呼ばれた美少女が少し悩んだあと、名前を言った。
「全然違うよ、アンナちゃん…。」
男たちは肩を落とした。
「ほらほら、買い物が済んだら早く帰ってね。」
店の奥から店長らしき女性が出て来て、若い男たちを追い払った。男たちは、またねアンナちゃん、と言って、走り去って行った。
「あら、ユフィくん、久しぶり。留学の旅に出たって聞いてたけど。」
「はい、一時的にですが、帰って来ました。」
店長とユフィが、挨拶を交わす。
「ちょうどいいわ。昼時だし、アンナちゃん休憩入っちゃいなさいよ。ユフィくんとお昼でも行って来たら?」
「わあ、ありがとうございます。」
店長の提案に、アンナがニッコリ微笑む。
その一連のやり取りの間も、俺たちはアンナに見惚れてしまっていた。カイだけは、珍しい花を眺めていたが。エプロンを外したアンナが、ユフィに声をかける。
「ユフィ、いつものご飯屋さん行こうよ。」
「ああ。」
ここで、マキがあっ、と大きな声を上げる。そして、アンナを指差して叫ぶ。
「じゅ、十二星座の乙女っ。」
俺たちもあっ、と大きな声を上げる。
アンナこそが、ヴェーゼンで目にした、あの絵はがきの少女だったのだ。
「ユフィがなかなか留学から帰って来ないから心配してたけど、こんなに友達が出来てて安心した。」
アンナがパスタをくるくる巻きながら微笑む。
「友達ではない。」
ユフィがぶっきらぼうに言う。
「でもびっくりしたわ。まさか、十二星座の乙女のモデルになった子と出会えるなんて。」
マキが感激していると、アンナは照れ臭そうに俯いた。俺も自慢してみる。
「俺も、レノールのモデルになったことあるんだぜ。」
「そうなんだ、私はいきなり街中で声をかけられてビックリしたなぁ。」
「俺も俺も。でも、一枚十万ルピーだからよ、もう喜んで引き受けたぜ。」
俺とアンナが盛り上がっていると、ユフィがボソリと呟く。
「アンナの報酬は、お前以上だったぞ。」
それを聞いて、俺たちは驚いてアンナを見る。
「まあ、でも確かに、十二枚の絵のモデルだものね。私が持ってるのは絵はがきだけど、実際は大きな絵画らしいし。」
マキが言うと、俺たちはなるほど、と納得する。
「でもそのおかげで、孤児院の雨漏りを直せたから良かったな。」
「その代わり、妙なファンがついて厄介だがな。」
アンナの言葉に被さるように、ユフィが恨めしく言う。
「アンナは孤児院の育ちか。苦労してるんだな。」
俺がシチューの肉を頬張りながら言うと、アンナは首を横に振って言った。
「確かに裕福な孤児院ではないけど、国立魔道学院の学生さんが無償で勉強を教えに来てくれるし、国の支援は受けられているよ。」
「なるほど、それでユフィとは出会ったの?」
カイが何気なく聞くと、ユフィとアンナは顔を合わせて、アンナが心無しか恥ずかしそうに頷いた。
これは、余程の鈍感で無い限りは、二人の間にある空気感を察することができるだろう。
「たまたまだ。古代ユリフユ語を勉強しているアンナと、それを教えられる俺が、たまたまいただけだ。」
ユフィが何かの感情を誤魔化すように、サラダのトマトを二つ続けて口に入れた。俺は初めて耳にする言葉を聞いてみる。
「古代ユリフユ語?」
「今は絶滅してしまったユリフユ族の使っていた言語でね、語順も単語も難しい言語なの。でも、残された詩や物語がどれも美しくてね、私はその翻訳者になるのが夢なの。」
アンナが説明をして、マキが素敵ね、と相槌を打つ。俺はもう一つ質問する。
「ユフィが魔道の詠唱で使う、不思議な言葉がそれかい?」
「ユリフユ語も使っている。俺の詠唱には、各国で昔使われていた言語を、精霊の好みに合わせて使っている。」
それを聞いて、改めてユフィをすごいと感じた。俺は共通語の文字を覚えるのにも苦労をしたのに、ユフィはいくつもの言語を扱うと言うのだ。カイは言う。
「そうか、だからユフィは留学をしたんだね。」
「ああ、言語もそうだし、各国に残る神話や童話を集めるために留学に出た。グランディエで思わぬ事態に巻き込まれて遠回りの旅となったが、そのおかげで色々な学びを得られた。」
そう言って、ユフィは腰に下げた本に手を触れた。この本に、さまざまな言語で多くの神話や童話を記録しているのだろう。
「でも、ユフィが帰って来なくて心配したのよ。学生さんから、グランディエの戦争のことも聞いたし…。」
「…ごめん。」
俺たちは顔を見合わせて驚いた。アンナの言葉に、ユフィが短い言葉で素直に謝ったのだ。もちろん、俺たちにだって謝ったことはある。先日のバルセールの件の後も、謝罪と礼の言葉はあった。しかし、こんなにも年相応の少年らしい言葉で謝るなんて、見たことがない。
「アンナ、ジオリダムは今どうなっている。なぜ戦争なんて始めるんだ。」
ユフィが問いかける。すると、アンナは次のように説明した。
ジオリダムの発表によると、一ヶ月ほど前からバルセールで殉教の魔道士が見られるようになったと言う。そこで調査をしたところ、希望教会に不審な動きが見られた。祈りの日や時間でも無い深夜の時間などに、人が不自然に出入りしていたらしい。
ジオリダムは諜報員を忍ばせ、出入りする者を追った。すると、殉教の魔道士が、アリアレジス希望教会本部の者やアリアレジス兵とやり取りする様子を抑えたと言う。
カスガが問う。
「なぜ、アリアレジスが関わってくるんじゃ?」
ユフィが答える。
「アリアレジスとジオリダムは、元々敵対関係にあった。およそ百年に及ぶ精霊戦争中、何度も軍事衝突があったんだ。だが、精霊戦争の末期、疲弊した両国の間で平和協定を結んだ。ただ、それはジオリダムに不利な条件で、ジオリダムの魔道の知識をアリアレジスに伝えると言う、魔道大国としては屈辱的な内容だった。」
ユフィの説明を聞いたが、なかなかその関係は複雑なようだ。
「戦略的に考えた場合、バルセールとアリアレジスが同盟を組んで攻めて来ると、地理的にジオリダムは挟み撃ちにあうね。海上からアリアレジス、地上からバルセールが攻めて来ることになる。そうなる前に、独立したバルセールを自分の手中に入れようと、ジオリダムは考えんだね。」
カイが噛み砕いて説明してくれた。なるほど、確かにそれは脅威かもしれない。
ここで、俺は一つ疑問を持つ。
「ちょっと話が逸れるけどよ、アリアレジスには姫神教も希望教も本部があるのかい?それって、国のなかで混乱が起きないのかい?」
すると、カスガが説明する。
「アリアレジスもジオリダムと同じで、ここ百五十年ほどで出来た若い国でな。ジオリダムが魔道で大国に成長したのと違い、アリアレジスは様々な人の力で大国に成長したんじゃ。各国から移民をどんどん受け入れ、その移民たちの得意分野を生かして強国へと成長した。そんな様々な移民がいる国では、姫神教も希望教も、それ以外の小さな宗教も必要なんじゃよ。」
そう言われて、俺はアリアレジスへの興味がより強くなる。
「でも、この城下町に入ったときから感じたことだけど、これから戦争をするとは思えないほど、平和な雰囲気よね。」
マキの疑問に、ユフィが水を一口飲み、答える。
「まあ、国力の差が歴然としているのはあるな。ジオリダムが本気を出せば、バルセールはあっという間に制圧できるだろう。」
「じゃあ、なんでエイベルは国を出たんだい?」
俺が問うと、ユフィはアンナをちらりと見て、その後、俯いて答えた。
「エイベルは、十七歳のエクラ種だ。きっと、真っ先に戦場に駆り出される。ジオリダムでエクラは、そういう扱いだ。エイベルは人を殺したくなかったんだろう。」
その答えに、カイだけがなるほど、と頷いた。
「アンナ、お前は何も起きていないか。」
ユフィがアンナに問いかける。すると、アンナは俺たち四人の顔を、少し曇った表情で見た。
「四人には、俺のことは話してある。」
ユフィがそう付け加えると、アンナは大きな目を丸くして驚いた。そして、少し考えたあと、こう言った。
「そっか、ユフィがいい人たちに出会えて良かった。…実は、私もユフィと同じなの。」
俺たちはその言葉の裏にある事情を受け止め、静かに頷いた。アンナはユフィを見て、今のところは大丈夫、と答えた。ユフィは言う。
「ジオリダムは、出産の際に子どもの遺伝情報を正しく届け出る法律がある。俺は育ての父と母の元に籍があるが、産みの父と母の情報は、国に抑えられている。」
「もしも偽ったらどうなるんじゃ?」
「厳しい罰則がある。もっとも、産まれたての赤ん坊の血を、すぐに検査するから偽ることはできないけどな。」
カスガはその答えを聞き、そんなことができるのか、と大きく驚いた。
「純粋なエクラに比べれば、戦場に出る優先順位は低い。…はずだ。」
ユフィにしては、自信無さげに言う。エルコトルを出発したときと同じだ。気持ちは分かる。もう、どの国でも何が起きてもおかしくない予感がある。
そんな話をしていると、鐘が鳴った。
「あ、私そろそろお店に戻らないと。」
アンナがそう言って立ち上がる。俺たちは軽く挨拶をし、アンナを見送った。しかし、アンナが少し遠ざかったところでユフィが追いかけて呼び止め、少し会話をしている。
「いやぁ、それにしても現実にあんな美しい子がいるんじゃなぁ。」
「本当。十二星座の乙女を実際に見れて感激よ。どうやったら、あんなに小さな顔にあんなに大きな瞳がつくのかしら。」
カスガとマキが、遠目にでもアンナに見惚れている。正直、俺も同感だ。アンナは手足も長くて肌も白く、紫がかった銀髪も上質な布のようだ。非の打ち所がない、と言うよりも、優れた所しか目に入らない。
「ねえ、カイも驚きよね?」
「うん?そうだね、さっきのお店のサラダのドレッシングは美味しくて驚いたね。」
マキは同意を求めたものの、この騎士は興味が無いようだ。
「花より団子じゃな。」
カスガがボソリと呟いた。
アンナと話を終えたユフィが戻って来たので、俺たちは宿を探すことにした。俺は問う。
「なあ、ユフィ、アンナと何を…。」
そこで、カスガに口を止められて、耳打ちされる。
「やめとけ、やめとけ。野暮っちゅうもんじゃ。」
「ヤボ?」
「気が効かないくて、いい男じゃないっちゅうことじゃ。」
俺は口を尖らせつつ、なるほど、と頷く。
バルセールと違い、宿はすぐに見つかった。洗練された街並みに似合う、清潔感のある宿だった。
「あまり言いたくないだろうけど、ユフィはご実家で過ごさなくていいのかい?」
カイが問うと、ユフィが荷物を整理しながら答える。
「一度は顔を出すつもりだが、基本的には帰らない。十歳で入学してからは、学院の寮で暮らしてきたしな。」
カイは軽くそっか、と返事した。
そして、滞在中の予定を確認した。今日のところは、とりあえず一休み。明日はユフィが学院に顔を出すのに着いて行くが、真っ先に確認するのはアリアレジス行きの船の便だ。あとの予定は、その船の便次第で食糧の買い出しをする。とは言え、バルセールと違って物価も安定しているし、滞在は快適そうだ。
しばらく休んで、夕飯の時間が近づく。
「そろそろご飯にでも行きましょうか。」
マキの意見に、俺たちは賛成、と立ち上がる。しかし。
「今日は四人で行ってくれないか。俺は少し、用事がある。」
ユフィがそう言ってきた。せっかくユフィの故郷なのだから、彼の勧める店などを知りたかったのだが。俺は不思議がるが、カスガとマキがすぐに了承した。
俺たちは散策がてら、少し早く宿を出た。
「ユフィの用事って何かね?」
「まあ、彼にも友人とかいるだろうし。」
俺とカイがそう言っていると、カスガとマキは、分かってないなぁと言う顔でこちらを見て来た。
青い化粧レンガで彩られた街が、夕焼けに照らされる。俺たちは、活気のある飯屋へ入った。店の窓が開いた、開放的な風を感じる良い店だ。俺たちは、テーブルを囲って席に着いた。




