キーエールのローズ、雨の始まり《ソラ》
《ソラ》
キーエール村は畜産に力を入れているだけあって、新鮮な肉料理が揃っているようだ。
カイは好物だという羊肉のシチューを頼んだ。そう言えば、ロンソ村でも頼んでいたっけなと思い出す。カイ以外もそれぞれが好む料理を選んだ。
最近になって気づいたことだが、カスガは野菜が好きなのか、必ずサラダか、もしくは野菜多めの料理を選ぶ。
それにもう一つ気づいたことだが、文字が読めるようになり、また、ユフィが様々な料理を作ってくれているのもあり、俺は食べることが楽しくなっている。
貧民街に暮らしていた頃は、生き繋ぐために何でも口にした。カビたパンやゴミ屑、犬や猫のエサまでも食べたのだ。もちろん、美味いと思ったことなどない。
俺の好物は、今のところトマトだ。ヴェーゼンで美味いと感じたパスタも、後で知ったことだが、トマトでソースが作られていた。
そんな普通なら楽しいはずの夕食が、全然楽しめないのだ。原因は、やはりあの殉教の魔道士たち。ユフィには見るな、話題にするな、とは言われているが、どうしても視界の端にとらえてしまうし、耳をそばだててしまう。
しかし、殉教の魔道士たちはとても静かだった。
周りが酔っ払い客で騒がしいというのはあるが、会話をする様子もなければ、食器の音すら聞こえない。まるで、夢のように消えたヒューを思い出させる。
「おい、そこの不気味なヤツらよぉ。」
ドンっとテーブルを叩き、椅子が倒れる大きな音がした。酔っ払い客が、のらりと立ち上がっていた。思わず声と音のした方へ、視線をやってしまった。
「僕たちですか?」
殉教の魔道士の一人が、静かに問う。黒いフードから少し見えた顔は眼鏡を掛けており、まだ若く、カイたちとそう変わらない年頃の男に見える。
「お前ら以外、だぁれがいるんだよぉ。」
酔っ払い客は、足元もおぼつかない様子だ。
「不気味なんてひどぉい。」
別の魔道士が声を上げた。こちらもカイたちと同じ年頃の女で、黒づくめの衣装だ。フードで顔は上半分が隠れているが、甲高い声と口を尖らせた表情が、服装と不釣り合いな印象だ。
「お前ら、精霊戦争じゃあ、ソクアヴェスタの手先だったんだろぉ?こんなお天道様の下で飯を食うなんざ、いいご身分じゃねぇかぁ。」
「お天道様って、今は夜だぜぇっ。」
酔っ払いたちは、ドッと大声を上げて笑った。
「ちょっと、バーンズさんっ。」
カウンターの向こうから、威勢のいい女の声がした。
「酔っ払って他のお客さんに迷惑をかけるのは、やめてって言ってるでしょ。」
オレンジのワンピースにエプロンを着けた、店員らしき女だ。吊り目の表情に、気の強さがうかがえる。
「うるせぇ、ローズ。なんだ?仲間意識か?」
ローズと呼ばれたその店員は、酔っ払い客と魔道士たちの間に立ち言う。
「違う。ただ迷惑な客を注意しているだけ。」
「でもよ、ローズ。お前の両親も兄弟も、希望教のヤツらに殺されたんだぜ?この黒い魔道士たちが憎くないのか?」
周囲の酔っ払いが、そうだそうだと囃し立てる。しかし、ローズは一切怯むことなく言い返す。
「そうよ。でも、それは過去のこと。この若い魔道士さんたちが関わっていたよりも、ずっと昔のこと。私は乗り越えて、今を生きているわ。」
ローズが毅然として言い切るが、酔っ払いたちは止まらない。大きく笑ったあと、こう言った。
「まぁ、憎もうと思っても憎みきれねぇか。お前は精霊の形代だもんな?だから希望教がこの村を襲ったとき、お前は助かったんだよな?」
それを言われたローズの顔が、急に強張る。俺は思わず立ちそうになったが、横に座るユフィとカスガに止められた。
「精霊だか形代だか知らねぇが、やっぱりローズ、お前も不気味だぜ?その靴を脱いだら、足は水色なんだろ?」
「しかも、お前が赤ん坊の頃、お前が泣き喚くたびに雷が落ちてよぉ、迷惑だったぜ?」
「可哀想になぁ、一人生き残って、なのに形代ってだけで嫁の貰い手もなくてねぇ。」
そう言ってゲラゲラ笑う酔っ払いを前に、ローズはただ拳を握りしめて耐えていた。しかし、酔っ払いは行き過ぎた発言をしてしまう。
「ローズ、お前もよ、一緒に殺されちまえば良かったなぁ?」
許せない。
その酔っ払いの一言に、俺がユフィたちを振り払い立ち上がった。そのとき。
殉教の魔道士二人も立ち上がった。先ほど声を発した男と女だ。酔っ払いたちは油断していたのか、後ずさりする。
「醜いですね。これが先人たちが命をかけて戦い、残した世界だなんて。」
男の魔道士の方がそう言って、酔っ払いたちをゆっくり指差した。酔っ払いの一人が焦る。
「な、何しようって言うんだ?」
女の魔道士が、甲高い声で笑ったあと、骨付き肉をしゃぶって言う。
「うふふ、この村、お肉が美味しいよね?あたし気に入っちゃった。」
そして、骨付き肉を魔法の杖のように、小さく振り回して続けた。
「ねぇ、この骨で何ができるか、見せてあげようか?」
女のその一言で、酔っ払いたちが小さく悲鳴を上げ、黙り込んだ。
「帰りましょう。お会計をお願いします。」
男の魔道士がそう言うと、座ったままの魔道士が立ち上がった。終始、無反応を貫いており、フードで顔も見えないため、一層の不気味さがあった。
「ローズちゃん、ご馳走様っ。美味しかったよー。」
女の魔道士が愛嬌たっぷりにそう言いながら、三人の魔道士は店を後にした。
俺たちも食事を終え、会計を済ませた。食堂を出る頃には酔っ払いたちも盛り下がっており、帰る客もちらほら見えた。
何とも言えない後味の悪さを抱え外に出ると、すぐ左手に、ローズがこちらに背を向けてしゃがんでいた。夜なのもあり、背中は暗く見える。
思わず、マキが声をかける。
「あ、あの、大丈夫?」
「ん?」
俺たちは小さく驚いた。落ち込んでいるのか、体調を崩しているのかと心配したというのに、振り向いたローズは骨付き肉を口にしていた。
「あ、皆さんさっきウチで夕飯食べてたわよね?」
平気そうな顔でローズが立ち上がる。すると、足元に小さな影が見えた。
「うおっ、犬だっ。」
茶色い小さな犬が、俺に飛びついてきた。不思議なことに、俺は昔から動物に好かれるようで、よく追いかけられるのだ。
「あははっ、その子は私の家族よ。ただ一人のね。名前はダフィ。可愛いでしょ?」
ローズがサッパリと笑って紹介してくれるが、俺の視界は茶色でいっぱいで、さらには顔中を舐められているので全貌が掴めない。カスガがダフィを抱き上げて、ようやく目にすることができた。
「よ、よう、ダフィ。飯をもらってたのかい?」
俺がそう聞くと、ダフィはわんっ、と大きく返事した。
「ローズ、さっきは大変だったな。その…。」
「ああ、あのくらい毎日のことよ。酔っ払いたちったら、私で鬱憤を晴らしているの。」
俺がかける言葉に迷っていると、ローズは何てことないように話した。
「でも、あんなにたくさんのお客さん相手に毅然としていて、かっこよかったわ。」
マキがそう言うと、ローズはありがとう、とニッコリ笑った。
「それにしても、旅人さんたちは何でこんな田舎に寄ってるの?最近、さっきの黒い魔道士さんたちといい、旅人が多いのよね。」
「僕たちは、グランディエからアリアレジスへ行く旅の途中なんだ。グランディエの港が使えなくなってしまったから、陸路でとりあえずは、クルエルを目指しているよ。」
ローズの問いにカイがそう答えると、彼女はすごい、と驚いて言う。
「そんな遠くから来たのね。いいなぁ。私はこの村と王都ヒルセンしか知らないから羨ましい。」
「でも俺だって、きっかけさえなきゃ、多分今もグランディエにいたと思うぜ。」
「きっかけ?」
俺は聞かれたのを好機と思い、片方の靴を脱いだ。
「え、あなたも形代?」
ローズは目を丸くして驚いた。俺はそうさ、と言って笑った。
「へー、自分以外の形代って初めて見たわ。あなた、名前は?」
「ソラっていうんだ。」
「いい名前ね。」
その流れで、俺以外の四人も自己紹介をした。
「五人で同じ国を出発していながら、生まれた国は様々なのね。そして、同じ国を目指している、と。なんだか、子どもの頃読んだ冒険譚みたいでいいね。」
「確かに。劇団に合流したら作曲してみようかしら。いい音楽劇になりそう。」
ローズとマキが和気藹々と話していると、ユフィが問いかける。
「ローズ、黒い魔道士が、この村に立て続けに訪れていると聞いたが。」
「来てる来てる。私が子どもの頃はたまに立ち寄ってたけど、精霊戦争が終わってから見るのは初めてだったわ。」
そう聞いて、俺は気になったことを口にした。
「え?ローズっていくつだい?」
すると、カイが首にチョップを、マキには蹴りを入れられた。
「ソラ、前も言ったけど、女性に年齢は尋ねないものだよ。」
そう言えば、ティアに聞いたときもカイに言われたな。
「あははっ、いいよ。別に。二十六歳だよ。だから、精霊戦争の終わりの頃はみんなくらいね。私が子どもの頃はソクアヴェスタが世界のあっちこっちを侵略しようとしててね、この国は姫神教の国だから被害も大きかったよ。」
そのなかにローズの家族もいるのだと言うことを聞くのは、さすがに無神経が過ぎると思った。そのくらいのことは、俺にも分かる。
「この国は、ルグレシアは政治が下手でね。それに、戦争も弱いんだ。精霊戦争で弱ったところを周りの国に攻められてね、どこもボロボロよ。」
それを聞くと、妙に納得する。コーダやカルデアと比べて、毛皮を剥がれた獣の死体や、追い剥ぎにあった人間の死体が多く見られたのも、そうした国の弱さによるものなのだろう。
「ローズは、この国を出ようとかは思わないのかい?」
俺がそう聞くと、ローズはすぐに答えた。
「思わないね。家族の墓があるのはこの村だし、孤児となった私を育ててくれた村長夫婦の墓もあるしね。まぁ、いつか素敵な旅人が来て、この村で結婚…なんて、夢はみるけどね。」
最後のほうは冗談っぽく笑っていたが、ローズは潔く答えた。そんな話をしていると、食堂からローズを呼ぶ声が聞こえた。
「いけない、店の片付けしなきゃ。あ、あなたたち明日も食堂来る?」
ローズが慌てて戻ろうとするので、俺たちは早口で行く、と答えた。彼女は軽やかに、またね、と食堂へ入って行った。ダフィは主人を待つように、食堂の扉の横に座った。
「利口な犬じゃのぅ。」
カスガはダフィの頭を撫で、俺たちは宿へ戻った。
俺は、ローズの姿に驚いた。そして、どこか自分が恥ずかしくなった。同じ形代として生まれ、差別を受けながら生きてきたはずなのに、さらには家族も失っているのに、ローズは自分の運命を受け入れて、こう言っていた。
《私は乗り越えて、今を生きているわ。》
俺は改めて、貧民街に生きていた自分を思い出した。
馬鹿にされてたまるかと、ナイフや氷の魔道で強くなったつもりだった自分。俺を苦しめたのは、空腹と暴力、そして差別。俺はローズのように、家族を失った記憶は無い。でも、それは自分自身が傷つくよりも苦しいんじゃないか。五人での旅が楽しくなった今、なんとなくそう思うのだ。
翌日は大雨が降った。体を休めるのに二、三日は滞在する予定だったが、こんな大雨のなか旅立つわけにはいかない。紫の紛争地帯は、道が悪いのだ。
俺たちは昼食をとるために、ローズのいる食堂へ走った。
「あら、いらっしゃい。」
ローズは昨日のように、サッパリとした笑顔で迎えてくれた。さらには、ダフィの熱い歓迎が待っていた。
「うおっ、ダフィ、待て待て。」
「ははっ、ソラ、気にいられとるのぅ。」
「お前の顔、何か出てるのか?」
顔中を舐められる俺を、カスガとユフィがからかう。それを見て、カイとマキが笑っていた。
俺たちは昨日と同じ席に着き、昼食を注文した。
食堂は客が他になく、ローズとはまた、この国や子どもの頃の話をした。特に、ローズは子どもの頃、影が怖かったと話した。
「影って、結局良く分からないよな。」
サンドイッチを食べながら俺が言うと、ユフィに食べながら話すな、と注意をされた。ローズは話す。
「影は私が生まれる前からいて、私が子どもの頃…、精霊戦争が終わる前にはもっと現れていたわ。とにかく正体が分からないから、夜は外に出ないように、とだけ姫神教会から言われていたわ。」
「影なら、俺たちも戦って来たぜ。まぁ、こっちの四人がね。」
俺が調子に乗って言うと、みんなが明るく笑ってくれた。
「影は神海に行けない、死者のさまよう霊だなんて話があるよね。」
「おう、そりゃユフィが前に言っておったな。」
カイとカスガがそう言うと、ユフィはサラダを飲み込んだあと、話を続けた。
「ジオリダムには百年前から影を研究する者たちがいて、その研究は代々引き継がれている。しかし、その正体が霊なのか、生きている者の力によるものなのかは何も分かっていない。」
「えーっ、じゃあ成果が無いってことかよ?」
俺がそう言うと、ユフィは気まずそうに、研究はそういうものだ、と小さく言った。
「でもさ、こんな世界じゃあ、安心して神海なんて行けないよね。」
ローズらしくない、沈んだ表情だった。
「差別とか貧困とか、世の中、人間を悩ませることばかりじゃない?私の家族はダフィだけだけど、もし私が今死んじゃっても、ダフィだけを残して神海へなんて行けないわ。」
ローズのその言葉を受け、俺は《神海へ行く》とは、死ぬことだと実感した。コーダ国で、ドーラも神海へ行ったあとのこと、つまり、死んだあとのことを話していたが、神を信じない俺にとって神海の存在には疑問が残る。
そして、その疑問を口にしてみた。
「ローズは、神海を信じるかい?」
すると、ローズは迷いなく答えた。
「信じると言うか、あるとしか思えない。子どもの頃から、そう教えられてきたからね。」
俺が釈然としなく、うーん、と唸っていると、ローズは続ける。
「だって、良い生き方をしたら、この世界よりも美しい神海で幸せに生きられるのよ?私はどんなにひどいことがあっても、それを信じて生きるわ。」
その言葉を受け、新たな疑問が湧いたので、またも口にしてみる。
「じゃあ、悪い生き方をしたら、どうなるんだい?」
俺の質問に、ローズを含め、五人が驚いて俺を見た。そんなにマズイ質問だったのかと少し萎縮していると、ローズが静かに答えた。
「それはね、ソラ。【煉獄】よ。」
「レンゴク?」
それは確か、ユージーンが言っていた言葉だ。そして、ロンソ村の惨劇に感じた予感だ。
食堂が静まり返る。ローズはさらに話を続ける。
「悪い生き方をして死を迎えるとね、煉獄にたどり着くの。火や寒さ、痛み、あらゆる苦痛を経験して、罪を洗い流す道を歩むのよ。」
「どのくらいの悪さで、煉獄に送られるんだい?」
俺がそう問うと、五人がまたも驚いた。そして、ローズは小さく笑って答える。
「ソラって、面白いわ。姫神教の教えで育った私とは大違いね。神海も煉獄も、何も知らないのね。」
「なにぶん、ほんの少し前まで浮浪児だったものでね。」
俺は俺なりの茶目っ気を込めて答えた。俺とローズ以外の四人は笑っていない。
「残念ながら、分からないわ。煉獄へ行って帰って来た人と会ったことがないからね。」
俺は水を一口飲み、さらに聞く。
「へぇ、じゃあ神海が美しいのも、誰も知らないんじゃないかい?」
その一言で、一瞬だけローズの顔が強張る。しかし、すぐに元の笑顔に戻った。
「ソラ、あなた大切な人を亡くしたことはある?」
「無い…、けれど、死を目にしたことは何度も。」
「あなたがいつか、大切な人を亡くしたら信じるはずよ。姫神教が語り継ぐ、神海の美しさが。」
ローズにそう言われると、何も言い返せない。ローズは神海の美しさに、それを語り継ぐ姫神教に何かを感じているのだ。
俺たちは昼食を終え、会計を済ませると、足早に宿へ戻った。
そして濡れた体や服を乾かしていると、四人に怒られてしまった。
「ソラ、姫神教の人に神海の疑問を投げかけちゃダメよ。」
「なんだい、マキ。そんなにまずかったかい?」
「大問題だよ。」
いつもは穏やかなカイですら、短く突き放すように言った。そして、続けてこうも言ってきた。
「ソラ、神海がなぜ信じられているか、分かるかい?」
そうは問われても、全く想像ができない。死んだことがなければ、神海の存在も最近初めて知ったばかりだ。
「神海は、良い生き方をした死者がたどり着くところと言われているけれど、僕の、あくまでも僕の主観だけれどね、神海は生きている者のためにあると思うんだ。」
カイにしては、珍しい力説だった。
「僕は、実の父を亡くしている。」
カイは、力説のままの力強い口調で語る。俺たちは、その重い事実に対して、反応に戸惑う。
「本当に小さな頃だけれども、優しくて家族思いだったと聞いている。そんな父が煉獄へ行くはずがない。きっと、今頃神海でのんびり暮らしているはずだ。僕はそう信じている。」
カイの突然の告白に、誰も何も言えなくなってしまった。暗く重い、緊張感。
俺は、宗教の力を感じてしまった。少しの間旅を共にしたが、カイは特別に姫神教徒ではないように感じた。そんなカイですら、父の死後の幸福を願う。その柱に姫神教がある。
人は結局、何かを信じたり縋ったりして生きているのだ。
そんな話をしていると、窓の外の雨はより一層激しさを増していた。いつまでこの村に釘付けになるだろうと心配していると、窓の外に影が二つ見えた。
大人と、動物。
「ローズと、ダフィ…?」
俺はすぐには信じられなかった。こんな雨のなか、雨用の装備もせずに、まるで酔っ払いのようにフラフラ歩く彼女は、別人に見えた。
四人にもその様子を伝え、違和感を共有した。ローズとダフィは村の外れの墓地を目指しているように見える。
「すぐに行こう。」
俺がそう言うと、ユフィが止めた。
「本当に行くのか?」
「行くさ。ローズもダフィも、もう他人じゃない。」
俺の言葉を受け、ユフィは短くため息をついて言った。
「あれは、普通の様子じゃない。関わらずにアリアレジスへ行くほうがいい。」
「でも、もしも形代狩りだったら、俺は後悔をする。」
俺は食い下がった。他の三人を見ると、その目にはやる気が溢れていた。
「何もなけりゃ、それでいい。何かあったら助け立ちしようぞ。」
カスガの援護射撃もあり、ユフィが折れた。
「分かった。近くへ様子を見に行こう。ただし、危険を感じたらすぐに戻るぞ。」
ユフィの承認が得られたので、俺たちは最低限の雨具を身にまとい、ローズたちを追いかけた。




