若き旅人たち《ソラ》
《ソラ》
ユフィに魔道を教わり、自分なりにも魔道書を読んでいくうちに、世界の見方が変わってきた。
火の精霊は相変わらず俺に敵意剥き出しで、俺の中で氷の精霊?と喧嘩ばかりしている。しかし、俺はユフィの教えである《学んだことを繰り返し実践すること》を守り、歩きながらナイフを構え、その切先に火を灯し続けた。
最初は数分で、火を点ける体力が無くなっていた俺だったが、数日経つうちに、火を灯せる時間が長くなった。さらには火の形を変えて、ちょっとした遊び心を持って歩くことさえできた。
アルデールを出発してから一週間、俺たちはルグレシアへの国境を越えた。
その一週間も、盗賊や影は襲いかかってきた。俺は何もできないままでいたが、ただ戦闘が終わるのを待つのではなく、四人の姿を観察することにした。
カイとカスガの身のこなしは、俺にも真似できることがありそうだ。
ユフィは俺と同じく森羅魔道に適性があるというが、詠唱は何を言っているか分からない。ユフィ曰く、それぞれの精霊が好む神話などを古語や異国語で語りかけることで、その力を借りているという。きっとユフィは、ユフィの努力を重ねたのだろう。学の無い俺には、どうも敷居が高い。しかし、あるときユフィは俺にこうも言った。
「魔道士が百人いれば、百通りの精霊への歩み寄り方がある。」
確かに、魔道を扱うユフィとマキでさえ、適性が違うとはいえ、精霊への歩み寄り方は違う。しかし、俺はマキが得意とする結界魔道や補助魔道、それに笛の演奏はあまりにも畑違いで、真似をできる隙を見出せなかった。
ルグレシアに入った頃には、精霊の声が自然と耳に入るようになっていた。風の精霊は少しいたずらっ子で、水の精霊は穏やか。もちろん、そのなかでも性格の違いはあるが。なんとなく、精霊たちの方から俺に興味を持ってくれている気さえする。
「自然に宿る精霊は、基本的に人間に関心がある。神話や音楽、人間が作る武器や装飾品など、精霊にとっては珍しいものばかりだ。」
ユフィがそう言うので、俺は四人の武器や装飾品に興味を持った。
ユフィは左耳にピアスを二つ、右耳にピアスを一つ、指輪を三つ、左手首にブレスレットを一つ。
「改めて見ると、ユフィは洒落とるのぅ。ジオリダムでは、若いのはみんなそうなのかい?」
カスガが問うと、ユフィが答えた。
「俺は衣服や装備品は好んだものを身につけているし、こだわりもあるな。同じような銀でも素材感が違う。ジオリダムの若い連中は、洒落っ気が好きだ。それと同時に、装飾品は精霊が力を宿しやすい媒介でもあるし、魔力制御の役割も持っている。」
「マリョクセイギョ?」
俺が問うと、ユフィが答える。
「精霊の力を借りるとき、俺たちは無意識に魔力…、つまり、体力を消耗している。その消耗を効率よく抑えるためにも、俺は魔力制御のピアスをつけている。」
なるほど、確かに、ナイフの切先に火の精霊の力を借りているとき、俺は無闇に体力を使っていたのか、いつもより歩き疲れやすい気がした。
「じゃあ、俺もそのうちピアスとかつけるのかい?」
俺がそう聞くと、ユフィとマキが答えた。
「まぁ、そうなるな。ピアスだけに限ったことではないが。」
「私の場合は、エルターニャ笛に描かれた紋様が魔力制御の役割を持っているわ。」
そう聞いて、少し期待外れな気もした。何となく、ピアスがかっこいいと思うのだ。
「マキのピアスの石、綺麗だよね。」
カイがそう言うと、マキは耳たぶを触りながら言った。
「ありがとう。これ、私も気に入っているの。モルガナイトっていう安い石だけど、淡いピンクでいい色でしょう。」
そう言うマキの耳にはモルガナイトが光り、紫の瞳も相まって、異国を思わせる色合いだった。
「カスガもいろいろつけてるよな。」
俺が話を振ると、ユフィが興味深そうに見つめる。
「ああ、メウィティカは男女とも、好みで身につける者ももちろんおるが、成長とともに親などから装飾品を受け継いでのぅ、右耳の飾りはワシの祖父の形見じゃ。」
そう言われて見てみると、耳たぶから短く三つ編みを垂らして石をつけたそれは、正直言うと邪魔にもなりかねないように見えた。カスガの左耳には、針水晶のピアスが二つ着いているが、それは好んでつけているという。
「俺が気になるのはこれだ。この右腕の珍しい数珠。青にも緑にも見える、不思議な色の石だ。」
ユフィが前のめりに食いつく。そう言う通り、石一つ一つは小さいが、鮮やかな色は存在感がある。
「これはのぅ、旅人の無事を祈って贈られた、まぁ、甘い思い出のある良いものじゃ。話してもいいがのぅ…。」
四人は察した。何だかカスガが、聞いて欲しそうにしている。しかも、妙に頬を赤らめている。
俺たちはあえて話題を避けて、カイを見た。
「カイはあまり装飾品とか興味なさそうね。」
カスガのもったいぶった態度を断ち切るように、マキがビシッと言った。
「そうだねぇ、服装の清潔感には気を配るけど…。僕は前に見せた、この入団の証くらいさ。」
カイはそう言って、手首に巻いた皮のブレスレットを見せた。鉄のプレートと繋がっており、それぞれが上質な素材でできていることを感じさせる。
「あ、そう言えばっ。」
俺は思い出して、勢いよく立ち上がった。四人は驚いて、俺を見る。
「マキ、これ。」
俺はズボンの隠しから、マキがアルデールで貸してくれた指輪を差し出した。迷子にならないように貸してくれたお守りだ。
「ああ、それならソラにあげる。私には必要ないものだから。」
「え、でもお母さんがくれたものだって…。」
俺が戸惑っていると、マキが指輪を取り、俺の親指にはめた。
「ぴったりっ。この指輪なら、精霊も興味を持ちそうね。」
俺は、マキがはめてくれた指輪を見つめた。マキの瞳と同じ、紫の色をした石がはめられている。俺は尋ねてみた。
「マキ、これ何て石だい?」
「アメジスト。直感力を高めたり、魔除けになったりするそうよ。」
直感力、魔除け。俺に必要なものばかりな気がして、たちまち指輪に愛着が湧いてきた。
「マキ、ありがとよ。これでもっと多くの精霊と仲間になるぜ。」
そう言う俺を、四人は見守ってくれた。
ルグレシアに入ったものの、人の住む街は遠いらしく、またも数日間歩いた。俺はユフィの言いつけ通り、ナイフの切先で火を灯し続けた。
ルグレシアは、紫の紛争地帯のなかでも特に荒んで感じた。あちらこちらに動物や人間の死体が転がり、それらは獣の皮や見ぐるみを剥がされていた。
政変の熱狂が根深く残るコーダ、二つの教会が対立するカルデア、それとは違う殺伐とした雰囲気を感じたのだ。
「クルエルも近いと言うのに、この殺伐とした雰囲気。紫の紛争地帯の端にある国だというのに妙だ。気を抜くわけにはいけない。」
ユフィがそう言いながら地図を見ると、村が見えてきた。俺たち五人は、大きく安堵の息を吐いた。
そう大きくなさそうな村とはいえ、屋根のあるところで眠れ、水や食料も揃えられる。何より身を清められるのがありがたい。もう、あっちこっちがかゆいのだ。
しかし、村に入ると異様な雰囲気を感じた。まだ昼間を迎えたばかりの村は人で賑わい、数少ない商店には食料品などが並んでいる。
村の名前はキーエール。俺たちは村の通りを歩いた。
しかし、村人の視線は冷たい。どこかアルデールを思い出す。
どうやら、この小さな村に宿は一つらしい。急いで抑えねば、と宿の扉を開くと、あいつらがいた。殉教の魔道士だ。三人組だ。ヒューやあの美しい女はいない。どうやら、アルデールの四人組とは違う連中のようだ。
俺たちは緊張感のなか、殉教の魔道士が宿の手続きを済ませたのを見届けた。魔道士たちは、俺たちをチラリと見ただけで、すぐに部屋に入っていった。
「いらっしゃい、お客さん。」
宿の主人が挨拶をしたので、俺たちも返す。
「あいにく、部屋は少なくてね、そちらのお嬢さんも一緒に五人部屋になってしまうが…。」
「ええ、大丈夫です。」
マキはサラリと答えた。そう、マキは、気にしないのだ。大所帯の劇団ブロタールで生活をしていたのもあり、旅や異性との関わりも慣れている。俺たちの前で平気で着替えようとするし、俺たちと平気で並んで、一番に寝る。マキはいわゆる紅一点だが、俺たち四人よりも男らしい気さえする。
「…殉教の魔道士が来ていましたね。」
ユフィが小声で尋ねると、主人は深く頷いた。
「先ほどの人らが初めてではない。この一カ月ほどで、三組は泊めたよ。」
「そんなに多くですか?」
カイが驚いて聞くと、主人は続けた。
「妙だろう?私も精霊戦争以来、久しぶりに見て驚いたが、三組続けて目にしたものだから、村の者も困惑している。まぁ、悪さをしているわけじゃないんだが…。」
今の俺なら、宿の主人たちが困惑する気持ちも分かる。アルデールでの命を命として見ていない価値観、死体を残らず魔道に使おうとする倫理観、悪さをしていなくとも、得体は知れない。警戒はして当然だろう。
「失礼だが、彼らはいわゆる日陰者だろう?そのくらい、こんな田舎の者でも分かっている。それに、この村は姫神教会しかないのに…。本音としては、関わりたくないところだよ。」
主人は殉教の魔道士たちが入った部屋のほうを窺いながら、小声で言った。
俺たちも宿で受付を済ませ、部屋に入った。街の宿と比べれば質素だが、屋根の下ベッドで眠れるだけで充分ありがたい。五人で荷物を置いて、一息ついた。
「あー、地面でのうて、椅子に座れるってのはありがたいのぅ。尻が痛うない。」
「ベッドもふかふかだぜー。」
カスガと俺がはしゃいでいると、カイとユフィはテーブルに新聞紙を広げていた。宿の主人から、さっき借りてきたものだ。二人は難しい顔をして、しばらくすると納得したように顔を見合わせた。
「答え合わせという感じだね。」
カイが暗い口調で呟いた。ただ事でない雰囲気に、俺たちも新聞紙を覗く。
《ブランジェ、グランディエ、平和条約へ向けた話し合いへ》
「ヘイワジョーヤク?」
初めて聞く言葉だが、悪い言葉では無さそうに感じた。すぐに、ユフィが説明をしてくれる。
「戦争の終了に向けて、話し合いが始まったということだ。」
それを聞き、俺とマキとカスガは明るく声を上げた。
「えっ、いいじゃん。それなら一つ、心配事が無くなるな。」
「いや、そう簡単な話ではなさそうなんだ。」
喜ぶ俺に、カイが深刻そうに話を続けた。
「戦争終了のためブランジェが出した条件が、どうもグランディエに不利なんだ。例えば、賠償金を支払うのはグランディエになっている。」
「バイショーキン?」
またも分からない言葉に、ユフィが説明に入る。
「戦争によって起きた損害を、敗戦国が支払う金のことだ。つまり、グランディエが負けたことを意味している。」
その説明で、カイとユフィ以外で大きな声を上げてしまった。
「でも、前にカイは言うとったじゃろ?戦力的にはグランディエの方が有利じゃと。アリアレジスも同盟国としてついとるわけじゃし…。」
カスガが困惑して問う。しかし、カイも片手で額を抑えており、新聞の伝える事実を受け止められない様子だ。そんな様子でも、何とか俺たちに説明をしてくれる。
「僕も正直、信じられない。でも、賠償金だけじゃないんだ。他にも領土の割譲。港町ハーリーやロンソ村を含む、広い土地をブランジェのものにしようとしている。それと、希望教。」
苦しげな表情のカイを心配気に覗き、マキが問う。
「希望教が、どうしたの?」
「グランディエ城下町を始めとする、国内の街や村に、希望教会を置くよう条件を出している。」
それを聞き、部屋の空気はさらに重くなった。
「グランディエは、精霊戦争が終わる前からずっと、姫神教が盛んな国よね?元々、姫神教が強く信仰されている国なのに、そこに希望教会を置くということは…。」
「ブランジェはどうやら、武力だけでなく、宗教からも国を侵略しようと企んでいる。そう考えるのが自然だろう。」
不安気に話すマキの結論を、ユフィが端的に話す。しかし、彼の表情も強張っている。
「希望教が力をつけていて、殉教の魔道士が表に出るようになっている…?」
俺の問いかけに、四人が迷うように顔を見合わせたあと、静かに頷いた。
「僕にはもう一つ、気がかりがある。アリアレジスの動きだ。」
カイはそう言って、新聞紙に改めて目を通すが、小さくやっぱり、と呟いて、話を続けた。
「今回の戦争で、グランディエの同盟国であるアリアレジスが何も動いていない。」
カイの話を受け、ユフィが新聞紙の上に、世界地図を広げて話す。
「見ての通り、グランディエとアリアレジスは国としては遠くに位置している。しかし、それでもアリアレジスには、グランディエに三つの支援ができたと考えられる。」
一つ目、港町ハーリーに魔道士を中心に編成した軍を船で派遣し、ハーリーを取り戻す。
二つ目、陸路でグランディエの支援をする。(ただし、時間がかかるうえに紫の紛争地帯を通る必要があるため、現実的でない。)
三つ目、ブランジェに武器や兵を支援する国を攻める。
「なるほどのぅ、二つ目は確かに現実的には難しいのぅ。アリアレジスの危険が多い。しかし、一つ目、特に三つ目なんかはすぐやれそうなもんじゃがのう。」
「確かに。ブランジェを支援している、このシルヴェルなんて、アリアレジスの近くじゃない。」
ユフィの丁寧な説明と、カスガとマキの付け足しで、何とか俺も話題についていける。
「だから、不可解なんだ。」
カイが沈痛な面持ちで言う。
「僕は一度、女王陛下の近衛として、陛下とともにアリアレジスへ行ったことがあるんだ。アリアレジスも、姫神教会本部があるくらいに姫神教の力がある国でね。それに、そのときにお目通りしたアリアレジスのディーン皇王は義に厚いお方だった。」
「確かにのぅ、あのお方が同盟国への侵攻を易々と許すようには見えんのぅ。」
カスガがそう言うので、思わず四人でその顔をみてしまった。
「お前、アリアレジス皇王に会ったことがあるのか?」
ユフィがそう問うと、カスガが見るからに慌てて言った。
「いやいや、そういうな、お方じゃと有名じゃろうて。」
カスガの謎は深まるが、今はそれよりもカイだ。
「劇団ブロタールは、今みんなアリアレジスにいることが分かっているけれど、カイのご家族や友達は?無事は分かっているの?」
マキの問いに、カイは首を横に振った。
「旅に出てから新聞紙はマメに見ているけれど、大まかな戦況しか分からないから…。それに、その戦況すら事実かは判断できない。」
「しかし、この平和条約の話は事実だろうな。いくら紛争地帯の新聞紙とはいえ、これだけ大きな話題に間違いはないだろう。」
ユフィの冷静な説明に、俺たちは現実へと立ち返った気分だった。
俺としては、四人に守られながらだが、文字や魔道を覚えるなどして、順調に旅路を進んでいる気になっていた。
しかし、そもそも俺たちの出会いは、あのロンソ村での惨劇がきっかけだった。そして、紫の紛争地帯に、殉教の魔道士など、盗賊や影だけでなく、俺たちの旅は危険と緊張に満ちたものだったのだ。
夕食まではまだ早いだろうと、俺たちは買い出しへ出た。食材などはユフィとマキが、薬や包帯などは俺とカスガで担当する。
カイは少し一人にしようと、四人で自然と示し合わせ、そんな担当となった。
小さな村ではあるが、少し遠くを見れば牧草地が広がっており、畜産で食べていることがうかがえる。その景色だけを見ればのどかな気分になれるのだが、やはり村人たちの視線は冷たく、どうも居心地が悪い。
俺とカスガは、村で唯一の雑貨屋に入った。小さな店だが、旅に必要なものは充分に揃えられそうだ。カスガが薬や包帯などを選んでいる間、俺は珍しいものがないかと探索してしまう。
すると。
「えっ、お、おい、カスガ。これ見ろよ。」
「なんじゃなんじゃ、いきなり…、えぇっ。」
見覚えのある人物が、雑貨屋の壁に貼られていた。俺たちは会計がてら、その貼り紙を宿に持ち帰ることにした。
宿には、ユフィとマキとも同じ頃合いに戻ってきた。二人とも、両手に食材をたくさん買っている。
俺とカスガはと言うと、雑貨屋での衝撃を早く口にしたくてウズウズしていた。そして…。
「ちょっと、こいつを見てほしいんだけどよ…。」
部屋に戻り五人揃ったところで、俺は満を持して発表しようと思う。カスガが早く、と急かす。
「こいつぁ、いったいなんだい?」
俺は、雑貨屋からもらった貼り紙をテーブルに置いた。その内容は…。
尋ね人 メイカーディア=ロブロイ 十五歳
茶髪 紫の瞳
情報求む リベリア国 ロブロイ家の元へ
情報提供者には十万ルピー
そんな文とともに、女の似顔絵が載っている。その女は、どう見てもマキの顔だった。
「ま、マキ、お前お尋ね者になってるぞっ。」
「な、何をやらかしたんじゃっ。」
「何よ、何もやってないわよっ。」
焦る俺とカスガの頭に、マキがチョップを食らわせる。
「いや、でもこの絵の女性はどう見ても…。」
「に、似ている子がいるものね。世界って不思議ねぇ。」
カイが、絵の女とマキを見比べる。しかし、マキはあからさまに目が泳いで、嘘をついている。
「それにしても、情報提供だけで十万ルピーは、金持ち具合といい、捜索の本気度といい普通じゃないぞ。」
ユフィがそう言って、四人でマキをじっと見る。どう見ても、探されている女だ。
「め、メイカーディアさん?」
「違います。」
カイが尋ねるも、即否定された。
「もういいじゃない。私に関係ないことだわ。この子、世界のどこかで無事だといいわね。」
マキはそう言いながら貼り紙を取り上げ、折りたたむと自分のカバンにしまってしまった。
カスガといいマキといい、どうやら秘密を抱えているらしい。しかし、本人が隠しているのなら、そこに踏み込むのは無神経だ。
口に出すのは恥ずかしいが、俺はアルデールの夜明け以来、この五人でいるのが楽しいし、ただの同行者ではなく旅の仲間だと感じている。たぶん、大切というのはこういう感情なのかな、とすら思っているのだ。
結果として、貼り紙は新たな謎を生んだものの、ブランジェとグランディエの話題で重くなっていた五人の雰囲気を少し和らげてくれた。
俺たちは腹が減ったので、宿の主人オススメの食堂に行くことにした。
食堂に着くと、やはり部外者である俺たちを、客たちが冷めた目で見てきたが、店員によって丸いテーブルに案内された。仕事終わりの客が多いのか、酒で酔っ払って声の大きい客で溢れていた。
その賑わいのなかに、ヤツらはいた。
「いいな。見るな、話題にするな。」
ユフィが俺たち四人に向けて、静かに呟いた。
ユフィはそう言うが、俺は気になって仕方ない。
酔っ払い客の奥に、殉教の魔道士が三人座っている。黒づくめの刺々しい刺青。
異様な緊張感のなか、俺たちはメニューを見た。




