国境の街ヴェーゼン、影の予兆《ソラ》
《ソラ》
「君、絵のモデルにならないかい?」
仕事を探してヴェーゼンの街を歩いていると、怪しいオッサンが声をかけてきた。大きなリュックを背負い、分厚いメガネをかけている。俺が怪しそうに見つめていると、オッサンがさらに続ける。
「僕はレノール。これでも売れてる画家でね、美しい人を描くのが楽しくて絵を描いているんだ。」
うさんくさい。自分から売れてるって言うのも、美しい人を描くって言うのも、うさんくさいうえに、気持ち悪い。
「なかなかの美少年だと思ってね、ちょうどこの剣が似合う少年を探していたんだ。」
オッサンはそう言うと、細かな装飾がされた短剣を取り出した。それは切れ味は無さそうで、ただの模造刀のようだ。
「…報酬はいくらだい?」
「十万ルピーでどうだい?」
「じゅっ…。」
冗談半分で聞いたものの、耳にしたことの無い金額に飛び上がりそうになった。
「君の青い瞳に心惹かれたんだよ。」
気持ち悪さと金欲しさのはざまで揺れ動く。喉から手が出るほど、とはこのことか。
そこで、俺は交渉を試みる。
「服を脱ぐのと、密室で二人はごめんだぜ。」
実は、浮浪児を狙うこの手の、いわゆる変態は多い。大金をチラつかせて密室に連れ込み、悪さをするのだ。よく何も知らない少女が餌食になっている。俺も何度か、騙されそうになったことがある。
「服は僕が用意した衣装を着てもらう。大丈夫、上も下もちゃんと隠れる衣装さ。姫神教会がうるさいからね。」
姫神教会はそんなことまで口を出しているのかと、少し驚いた。
「それと、描くのは宿の部屋なんだけどね、私の助手が同室する。それに扉は開けっぱなしだ。それなら安心だろう?」
オッサンがそう言うと、大きなリュックの後ろから小さな女が顔を出した。
「でもよ、俺は旅の途中でよ、この街にはあと六日しかいないんだ。」
「それだけあれば大丈夫。そんなに大きな絵じゃないからね。」
どうやら条件は揃っているようだ。重要なのは、あと一つ。
「報酬は前払いかい?」
「そうだね、今日一日の様子で事前に払うか決めるよ。」
なるほど、このオッサンはどうやら、こういったモデル探しには慣れているようだ。すると、助手の女が小さな絵ハガキを見せてきた。
「これはね、僕の代表作の一つ。十二星座の乙女さ。十二枚あるうちの一枚だけどね。」
不覚にも、俺は目を奪われた。
描かれている女は見たことのない美人で、優しい微笑みを浮かべている。それに、背景となっている夜空も美しい。満点の星空は、貧民街の路上生活や旅の道中でいくらでも見てきたが、この夜空は、絵ならではの、何かが隠された、神秘的な美しさがあると思った。
「いいね。この仕事、引き受けるよ。」
「おーっ、最高の気分だ。ありがとう。では、宿へ案内しよう。」
レノールたちに案内されると、俺たちが泊まっているのより、かなり高級な宿にたどり着いた。さらに案内された部屋は、ティアたちと出会った、ユージーンの館に負けないくらい豪華な部屋だった。
レノールに指定された衣装を広げる。触り心地が良く、上質な衣装であることが分かる。着替える間、レノールたちは廊下で待っていた。着替え終わり扉を叩くと、レノールたちが入ってきた。
「おっと、ソラ君、靴は脱いでくれないか。」
「えっ、いや、履いたままじゃダメかい?」
「この絵の少年はね、裸足であることが大事なんだ。」
そう言われ、俺はためらいながら靴を脱いだ。
「おや、なるほど。」
「こういうわけさ。悪いな、モデルが形代で。」
俺は靴を履いて四人と旅をするのにすっかり慣れていたが、本来なら俺は裸足のまま馬鹿にされる精霊の形代なのだ。
「いや、美しさの前に、それは関係ない。絵では足は肌色にするがね。」
レノールは何も気にしない様子で準備を進める。その様子に俺が驚いていると、助手の女が窓辺に案内し、ポーズを伝えてきた。恥ずかしがり屋なのか、目が合わず声も小さい。
俺は椅子に座り、窓辺に片手を置き、もう片方の手に短剣を持った。足は力無く、軽く開いて座った。
「この絵の少年は、この後死ぬ。それを宣告されている。そんな表情をしてくれ。」
思わぬ要求に驚くと、レノールがポーズを崩さずにっ、と厳しく言ってきた。急いでポーズを直しながら、だが気になって聞いてみた。
「なんでこの少年は、この後死ぬんだい?」
部屋はレノールが走らせる筆記具の音が響き、緊張感で溢れた。そして、レノールは静かに答えた。
「何の罪もないが、大人たちによって処刑される。」
再び、部屋のなかは筆記具の音だけとなった。俺はなんで処刑されるのか聞きたかったが、あまりの緊張感に聞けずいた。
しかし、何やら思いを巡らせることはできた。俺の頭に、またキイナの顔が浮かんだ。生きたくても、宗教のために大人によって殺されてしまった少女。その無念な気持ちを思うと恨めしい。
それに、そう、切ない。定食屋でカイが言った切ないという気持ちが、にわかに当てはまってきた。
俺は窓から街の景色を見下ろしているが、見ていない。どこか遠くの、この処刑された少年やキイナのような少女を見つめている気持ちだった。
「うん…、君をモデルにして正解だったようだ。」
夕方になり、今日の仕事が終わった。どうやらレノールは描くのが早いらしく、もうデッサンとやらまでは終わったらしい。そして、着替えを終えた俺に封筒を渡してきた。
「ありがとう、ソラ君。前払いの報酬だよ。明日からも頼むよ。」
微笑むレノールを前に、思わず封筒を覗き込む。お札が入っている。俺はお札を手にするのは初めてだった。
「あ、ありがとうっ。レノール。」
俺が宿を出るとき、レノールたちは笑顔で見送ってくれた。
「も、モデルぅ?」
夜、宿に戻り、それぞれの話をするなかで、俺は胸を張って報告した。四人は心配げに俺を見つめる。
「まぁ、これを見たまえよ。」
そう言って俺は、前払いされた十万ルピーの入った封筒をテーブルに置いた。四人が疑うように覗き、代表してユフィが数える。
「じゅ、十万ルピー…。本物だ…。」
他の三人が大声を上げて驚く。隣の部屋からうるさいぞ、と壁を叩かれた。
「なんじゃあ、お前…。怪しい大人に騙されとるんか?人に言えない格好をさせられとるんか?」
カスガが泣きそうな顔で聞いてくる。
「やめろよ、俺は騙されたりなんかしねぇ。それによ、その画家、レノールって言って有名らしいぜ。」
俺がそう言うと、ユフィとマキがすぐに反応した。
「なんだよ、ユフィまで知ってるのかい?」
「いや、別に…。」
ユフィは知らないフリをするように、そっぽを向いた。マキは興味津々で話に乗る。
「レノールって、今世界で一番人気の画家じゃない?私も何枚か絵はがきを持ってるもの。」
確かに、あの助手が見せてくれた絵は煌びやかで、女に人気が出そうだ。
「へぇ、見た目は怪しいオッサンだったけどな。」
「美しい人間しかモデルにしないことでも有名だがな。」
ユフィがボソッと呟く。
「ユフィ、詳しいんだね。」
カイが言うと、ユフィがふんっ、と、またそっぽを向いた。
「美しい人間じゃとよ、やったのぅ、ソラぁ。」
カスガが俺を肘でつつくので、へへー、とわざとらしく笑った。
「でもソラのお陰もあり、それに私たちが働いているのもありで、当面の旅の資金は困らなそうね。」
マキが明るく言い、カスガも頷く。しかし、カイは表情を曇らせている。
「ブランジェの動向が気になるか。」
ユフィが問うと、カイはそう、と返事した。
「まぁ、自分の所属する国が戦時下にあっちゃあ、気が気でないよのぅ。」
「どうやら前線が押されていて、グランディエに不利な状況が続いているらしい。それに、それだけじゃないんだ。」
カスガの言葉を受け、カイが話す。
「今日、定食屋で用心棒をしながら、お客さんと話をしていたんだ。旅人の方だったりから情報も集まるしね。そうしてたら、お客さんのなかにいたんだ。希望教の人が。」
その言葉に、室内の空気がひりついた。
「ブランジェが希望教を信仰しているから怪しいってことかい?でもよ、希望教の人間って見た目だけで分かるのかい?キイナたちは普通の格好してたぜ。」
「なんだ、ソラ、少しは賢くなってるな。」
俺の疑問にユフィが嫌味を言ったので、睨みつける。しかし、カイが話題を戻す。
「彼らは…、三人だったんだけど、黒づくめの衣装を纏っていた。こう、マントのように大きな。何より手の甲に刺青が見えたんだ。」
それを聞き、俺以外の三人が小さく声を上げる。そして、ユフィは思わず声を漏らした。
「それは…、思いの外、妙な事態になっているな。」
俺はその事態が飲み込めず、深刻な四人の顔を不思議な思いで眺めた。すると、ユフィが説明をし始める。
「ちょうどいい、ソラ。魔道の勉強だ。」
俺は予想外の展開に驚きつつ、内心、魔道のことを知れるのが嬉しかった。
「魔道はあらゆるものに宿る精霊の力を借りる、ということは、前に話したな?」
「えーと、ユフィは森羅魔道で自然の精霊から、マキは結界魔道で空気中の精霊から?」
ユフィの問いかけに、俺は旅籠での会話を思い出した。マキが覚えててすごい、と褒めてくれて、ちょっとくすぐったい。
「よく覚えていたな。ただ、精霊の力を借りるのは簡単じゃない。多くの魔道士は【媒介】を使う。」
ユフィの説明に、バイカイ?と俺が問うと、マキは笛を取り出した。
「私の場合はこの笛ね。音楽を奏でることで精霊が集まって、結界を作ってくれるの。」
俺が感心していると、今度はユフィが本と指輪を三つ、テーブルに並べた。
「俺の場合は本と指輪だ。精霊の力を借りるために詠唱、まあ、おまじないを唱えるわけだ。すると精霊が、本や指輪に乗り移って力を貸してくれる。この本や指輪、マキの笛など、精霊と魔道士を繋いでくれるものを【媒介】と呼んでいる。」
俺がなるほど、と納得していると、ユフィが話題を戻した。
「そこで、黒づくめの希望教だ。ヤツらは刺青を媒介にして、魔道を扱う。」
俺は思わず、げっ、と口にした。城下町の貧民街で暮らしていたとき、刺青をした悪党にタコ殴りにあったことがあるからだ。
ユフィは淡々と説明を続ける。
「さらに、希望教の信者が使う魔道は【殉教の教え】という、非常に厄介な魔道だ。」
また難しい言葉が出てきた。ジュンキョー?と俺が首を傾げると、ユフィが説明した。
「殉教とは、神のために身を捧げることだ。希望教の、刺青が入ったヤツらが使う【殉教の教え】という魔道は、何かを犠牲にして相手に悪影響を与える、危険な魔道だ。俺たちはそれを使う魔道士を【殉教の魔道士】と呼んでいる。ヤツらには極端な話、誰かを生け贄にして敵を殺す、そんなことまで可能だ。」
知識としては理解できるが、そんな魔道があるなんて、信じられない。俺は魔道を、勝手にカッコいいものだと思っていた。
俺は思わず疑問を口にする。
「な、何でそんな危険な魔道があるんだよ。」
「そういう魔道が必要な時代があったのさ。」
淡々と、カイが説明する。
「ヴァルクシェンナとソクアヴェスタが戦った、いわゆる精霊戦争。それは、姫神教と希望教との戦争でもあったわけだけれど、希望教としては、そんな危険な魔道を使っても勝利したかったのさ。」
狂っている。俺はそう思ってゾッとした。
希望教が狂っているのか、それとも戦争が狂っているのか、今の俺には判断できない。
「まぁ、難しい話が続いたが、カイの違和感、いや、危機感に戻ろう。」
ユフィが本や指輪を戻しながら、話を続ける。
「精霊戦争が終結し、ソクアヴェスタが敗戦して以来、希望教は世間の差別のもと暮らしているのは、もう分かるな?」
俺は頷く。グランディエの希望教会が壊されていたのも、キイナたちが死んだのも、そのせいだ。
「姫神教会が定めた国際法で、宗教による差別は禁止されているが、それでも差別をしてしまうのが人の性分だ。希望教の信者や殉教の魔道士は、人の目につかないよう、ひっそりと生きてきたはずだ。」
「それなのに、こんな大きな街の店に現れた…。」
俺がそう言うと、四人は深刻そうな顔で頷く。
「私はこの数年、巡業のためにいろいろな国へ行ったわ。でも、殉教の魔道士は見たことがない。」
マキが不安そうに言うと、カイが続く。
「女王陛下がおっしゃっていたよ。世界は今、大きな変化を迎えていると。自然災害、姫神教会への襲撃、形代狩り…。」
「そこに、殉教の魔道士、か…。」
無学な俺ですら、世の中に静かな変化が、危機が迫っていることをひしひしと感じた。
「のぅ、思い出したんじゃが…。」
重い空気のなか、カスガが呟く。
「ワシらが出会った次の朝、旅籠でソラが言った、ブランジェの裏にいる希望教。それがあながち、的外れでない気がするんじゃ。」
四人がハッとした。発言した俺ですら、忘れていた。
「敗戦以来、力を失っていた希望教が、再び力をつけている…?」
ユフィが呟くと、カイが同意するように言う。
「でも確かに、ブランジェの予想以上の強さは、他に説明がつかない気がする。」
それぞれに、それぞれの嫌な予感が重なっていく。
「ソラ、すまんっ。」
突然、カスガが謝り出した。俺は驚いてしまう。
「な、何だよ。」
「ヌシが旅籠で希望教の可能性を話したとき、ワシゃ頭ごなしに否定してもうた。申し訳ねぇ。」
「俺もだ。」
ユフィが静かに話し始めた。
「魔道士たるもの、少しでも可能性があるのにそれを否定することは、己の見識を狭める言動だった。すまない。」
「な、なんかユフィまで謝ると調子狂うぜ。」
俺はかえって、居心地が悪い気がした。
「本音を言うと、全てがいらぬ心配であってほしいんだ。ブランジェの強さも、希望教と殉教の魔道士が再び力をつけることも…。」
普段ポヤポヤとしているくらい穏やかなカイが、深刻そうに呟いた。無理もない、自分の国が危機にあるというのだから。
この日は気づいたらもう遅い時間だったので、眠ることにした。それぞれが不安を深めたまま、朝を迎えることになった。
俺は次の日も、レノールの絵のモデルの仕事に行った。ポーズを維持するのはキツイが、あの高い報酬を見た四人の顔を思い出すと、頑張れる気がした。
しかし、やはり退屈が襲ってくるので、俺は思い切って、質問をしてみることにした。
「なぁ、レノール。なんでこの少年は、罪もないのに処刑されるんだい?」
俺が聞くと、レノールの筆が止まった気配がした。
「聞く勇気はあるかい?」
意味深なレノールの問いに、俺はポーズを解き、深く頷いた。
「この少年は、ソクアヴェスタ最後の王子だよ。」
「え…。」
予想外の答えに、俺は驚いた。
「十年前、ソクアヴェスタが敗戦したのは学校で習っただろう。」
学校なんた行ったことがないが、俺は嘘で頷いた。
「ここからは学校が教えない話だ。殉教の魔道士は知っているかい?」
ちょうど昨日知ったことだ。俺は二回頷いた。
「ソクアヴェスタは追い詰められた末に、最悪の決断をしたのさ。王子を生け贄に捧げ、ヴァルクシェンナと姫神教会を倒そうと。」
レノールは静かな口調だったが、正直、俺がこれまでに聞いた話のなかでも衝撃は大きかった。
やはり、狂っている。そうまでして勝利する戦争に、何の意味があるのか。俺はその戦争の醜さに、思わず顔を歪めた。そして聞いてみた。
「王子の、名前や年は?」
「それは知られていない。どんな容姿だったかもね。ただ、君のどこか寂しげな青い瞳を見て、その王子はこんな容姿だったんじゃないかと、まぁ画家の勘が働いたのさ。」
寂しげな青い瞳、俺はそう見えるのか。そんな疑問も湧いたが、もっと聞きたいことがあった。
「なんで、そんな王子を描こうと思ったんだい?ソクアヴェスタも希望教も、たくさんの人に憎まれてるんだろ?」
レノールは少し考えて、丁寧に答えた。
「やはりね、一人の大人として少年の最期に思いを馳せてしまったのだよ。世間ではそういう感情を、同情というかもしれないが。しかし、絵くらいにしてあげないと、あまりにも可哀想だと、そう思ったのさ。」
俺にはレノールの答えが、ストンと胸に落ちた。俺もキイナに対して、同じように祈ったからだ。
きっとレノールにとっては、この少年を描くことが祈りなのだろう。
今日の仕事が終わり、俺は着替えた。ポーズをとっていたから、体はバキバキだ。そうだ、レノールにあの話をしてみよう。
「なぁ、レノール。昨日あんたの話を旅の同行者にしたのさ。そしたらさ、マキって女がファンらしくてよ、絵はがきとやらを何枚か持ってるって言ってたぜ。」
俺の話を聞いて、レノールは顔をパッと明るくした。
「本当かい?嬉しいねぇ。」
そう言うと、紙に何かを書いて俺に渡してきた。
「これは僕のサインさ。その方に渡してくれ。」
それは、あの美しい女や星空が描かれた小さな絵はがきだった。女は大きな瞳を輝かせて、こちらを向いて微笑んでいる。
「わぁ、ありがとよ、レノール。また明日な。」
宿に帰ると、それぞれの仕事の話で盛り上がった。
「あ、そう言えばよ、マキ。これ。」
俺はレノールのサインが入った絵はがきを出し、マキに渡した。
「え、これって…。」
少し眺めて、マキの紫の瞳がまん丸になる。
「じゅ、十二星座の乙女っ。サイン入りっ。」
「なんだとっ。」
ユフィまで大声を上げて、隣の部屋からうるさいぞ、と壁を叩かれた。俺たちはそれぞれの顔を見て、ユフィに視線を集める。
「…ユフィ、やっぱりファンなのかい?」
俺が聞くと、ユフィは違う、とそっぽを向いた。
「この女の子のファンなのかもしれないよ。」
カイがのんきな声で言うと、ユフィは大きな声で違う、と言った。
「まぁ、こんなに可愛いしのぅ。そりゃマキもユフィも見惚れるじゃろうのぅ。ワシもな。」
カスガがわざとらしく大げさに言うと、ユフィがカスガにタオルを投げつけた。
「…ユフィ、見る?」
マキが問いかけると、少しの間、沈黙が流れた。
「…見る。」
ユフィが小さく返事したので、俺たち四人はニヤニヤ笑う。マキがユフィに絵はがきを見せると…。
ユフィはしかめっつらのまま、ボッと顔を赤くしたのだ。そして、すぐに顔を背けた。その様子を見て俺たちはへー、とさらにニヤニヤ笑った。
「まぁ、お前も魔道だけの男じゃないってことじゃな。」
「僕もこの女の子、可愛いと思うよ。」
カスガとカイが、ユフィの両肩に手を置くとユフィは全力でそれを払った。
「レノールはモデルにした人物を公表しないのよね。でも、こんなに綺麗な子がいるなら一度会ってみたいわぁ。」
マキがそう言うのを聞いて、俺は衝撃を受けた。
「えっ。じゃあ俺有名になれないじゃん。」
有名になりたかったのかとカスガたちに突っ込まれながら、俺たちはその日を終えた。




