表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/20

第5話

 


 ミランダは王都近くの田舎の男爵家の次女である。兄、姉、ミランダ、弟の四人兄弟。両親は貴族らしからぬ木訥とした雰囲気の人柄で、領民達に愛されている。彼女は自然の中でのびのびと育った。スカーレットの家で働き出したのは16歳の時。2つ年下のスカーレットお嬢様とは、すぐに仲良くなった。美しいスカーレットお嬢様との日々は毎日が輝いていた。


「ここまでは良い?」

「…まあ、良いでしょう。よく知っていますね。私の家族構成。」

「雇い主ですもの。当然よ。続けるわ。」


 ある日、ミランダは一人の男性と出会う。


「ここは間違いない?幼馴染枠としてすでに出会済み?」

「いいえ。幼馴染ではありません。実家に出入りしている商人です。」

「出入りの商人ですって!!」

 スカーレットの目が輝く。出入りの商人と言ったら、ぜ…

「絶倫ではありませんよ。」

 ミランダが冷たく言い放った。

「出入りの、農機具を取り扱っている商人です。定期的に飼料を届けたり。」

「なるほど。私のイメージしていた商人とは方向性が違う気がするわ。」

「…。」


 ミランダは家に帰る時に度々会う、その商人のことが気になっていた。商人も、ミランダに会うと笑顔を向けてくる。ミランダはその商人の笑顔から目が離せなくなっていた。


「ねえ、ミランダ。恋人の名前って何?商人って言い続けるの、何か嫌だわ。」

「トーマスです。」


 ある日、ミランダはトーマスから愛の告白を受ける。抱きしめられながらミランダは悩む。私もトーマスが好き。でも私は男爵家といえど貴族。彼は平民。身分の差があるわ。しかしトーマスは言う。僕達の愛に、越えられない壁なんてない。そのまま牧草の上にミランダを押し倒した。


「ちょっとお待ちください、お嬢様。」

「これから良いところなんだけど。ミランダの体に口付けの雨が降ってくる。」

「お嬢様!」

「分かった。ちょっと待つわ。」

「まず告白を受けたシチュエーションが違います。」

「牧草地ではないのね?」

「違います。納屋の前です。」

「納屋の前!それ、いいわ!」

「何が良いんですか…。それに、いきなり抱きしめられたりもしていません。」

「壁ドンね。」

「違いますって。一緒に荷物を運び入れるところです。だから、彼は飼料袋を持っていました。私は球根を。」

「それって…ムードはあったのかしら?」

 ここまでの話で、スカーレットはミランダのことが少し心配になった。納屋と聞いた時は、納屋に引っ張り込まれて押し倒されるのも良いと思ったのだが、両手が塞がっていたら何もできない。

「ムードはなかったかもしれませんが、真剣に思いを伝えてくれましたし…。」

 ミランダはその時のことを思い出したのか、恥ずかしそうに頬を染めた。

「私も好きだったので。」

「きゃー!!」

「うちはしがない男爵家ですし兄弟は他にいるので、私や親は特に身分の差にこだわりもなく。」

「きゃー!!やっぱり愛は身分を越えたのね!!」

「後から聞いたら、私の帰省に合わせて実家に納品に来てたっていうし!!」

 バシッ。ミランダがクッションを投げた。

「きゃー!!!」

 突然ドアが開いた。侍女頭だ。侍女頭の足元にクッションが落ちる。

「騒がしいと思ったら。」

 侍女頭がクッションを拾い上げる。二人にはその動作が妙にゆっくりに見えた。


 お説教。

 何分正座させられただろうか。スカーレットは途中で口を挟みたくなった。

「私はお嬢様よ!」

 と。しかし、言える雰囲気は微塵もなかった。ミランダは神妙な顔付きで話を聞いている。スカーレットはお説教を聞きながら、ミランダとトーマスに思いを馳せた。

 普通萌えのミランダが好きになった、昼間は普通の男トーマス。まだ夜のことを聞いていない。容姿についても分からないから想像の材料が足りない。近いうちに必ず聞き出さなければ。

「お嬢様、聞いてます!?」

「はいっ!聞いてます!」

「とにかく、お静かに反省してください!夕食の後は忘れずに旦那様の書斎に行ってくださいね!」

「書斎?」

「ほら聞いてない!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ