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第3話

 


 スカーレットはミランダを伴って街へ出た。媚薬を探すために。

「お嬢様、今日は薬草店に行かれるとのことでしたが、どこか調子がお悪いのですか?」

 馬車を降りたところでミランダが尋ねてきた。

「いいえ。わたくしは元気よ。」

「では、何を?」

「ちょっと、滋養に効く物をね。」

 スカーレットはミランダの顔を見ずに言った。ミランダはスカーレットの話に乗ってくれる時とそうでない時がある。スカーレットは見極めることができるのだ。室内劇やミュージカルのようなおふざけには付き合ってくれるが、今回のような媚薬探しには文句を言いそうなのである。



 この街で一番大きい薬草店に足を踏み入れる。ここにない薬草はないと言われるほどの名店だ。スカーレットは緊張しながらカウンターに立つ店員に声を掛けた。

「あの、媚薬を探しているのですが。こちらにありますか?」

「「媚薬!?」」

 店員とミランダの声が重なる。特にミランダの声が大きい。スカーレットは思わず耳を塞いでしまった。

「お嬢様!なんてことをおっしゃいますか!!」

 ミランダが唾を飛ばして来る。

「嫌だわミランダ。今わたくしの顔に」

「何を買いに来たかと思えば、媚薬ですって?そんな物あるわけないじゃないですか!」

 ミランダの顔が赤い。スカーレットは助けを請うように店員を見た。中年の優しそうな女性だ。スカーレットの話もしっかり聞いてくれるに違いない。

「媚薬という名前ではないのかもしれません。飲むと異性が性的に興奮し、どなたかの体液を摂取しないとその興奮が収まらないというものですわ。」

「えぇと、そのような物は当店にはありません。」

  困った顔で店員が言う。

「そうなの?では、興奮剤?あるかしら?」

「当店には…」

「失礼いたしました!」

 店員が何か言い掛けたところでミランダがスカーレットを店から引っ張り出した。

「ちょっとミランダ。さっきから品がないわ。伯爵家に勤める侍女として…」

「お嬢様!!!」

 ミランダはさっきから顔が赤い。まさかすでに媚薬を…

「落ち着いて、ミランダ。あなた、恋人はいる?

それとも自分で収めることができるの?」

「は?」

「あなたのその症状よ。赤い顔、潤んだ瞳。興奮しているじゃないの。どこかで媚薬を盛られたんだわ。それか吸い込んだ。」

「…お嬢様…。」

 ミランダが頭を垂れた。垂れたと思ったら真顔で顔を上げた。

「帰りましょう。」

「えっ。」

「媚薬はありません。帰りましょう!」

 ミランダが強い力で腕を引っ張る。スカーレットは必死でその場に踏ん張った。

「待って、ミランダ!私は諦めない!諦めないわ!」

「お嬢様!」

「街外れにも確か薬草店があったわ。今の店よりだいぶ怪しいところよ!」

「絶対にダメです!」

「じゃあ、輸入雑貨店!もしかしたら輸入品の中に紛れているかも!」

「ダメ!」

 スカーレットは必死だった。収穫ゼロで帰りたくない。しかし、ミランダも必死だった。スカーレット以上に。

 遠くで見ていた御者が異変を察して駆けつけたため、スカーレットはあえなく馬車に押し込められたのであった。

 


「まったくミランダったら。あんな赤い顔で興奮してたら誰だって媚薬だと思うわよ。お店も回れなかったし。」

 心の声が口から出てしまった。今日のことは両親にも伝わり、こっぴどく叱られた。淑女らしからぬ行動と、買おうとした物について。しばらくの間外出禁止令まで出されてしまったのだ。

「外出禁止なんて酷すぎるわ。好きな時に外出できないなんて、まるで監禁じゃない!」

 そこで、ふと気が付いた。

「監禁…!?私、ついに監禁されるの!?」


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