vsブルーランド
「何か策はあるか!?」
ソムはアスマスに叫ぶ。
「わかりません。ブルーランドの鱗は頑丈ですから、そこらの攻撃じゃ効果がないと思います。電気もほとんど通しません。」
ソムとアスマスはブルーランドを睨みながら、一歩一歩後ずさりする。
両者はお互いの様子をうかがう。
「背中向けたら、攻撃してくるよな・・・。」
「気をつけてください。ブルーランドのさっきの魔法は、大地や無機質属性の魔法を水に変えてしまいます。体に当たっても、その部分も水になります。つまり急所に当たったら、即高度な治療をしてもらわないと、死んでしまいます。」
「はっ!?」
あの時とっさに避けてなかったら、どうなっていたことか。
それに無機質属性の魔法を水にする。それは一般的な『マジック』が使う、基礎の基礎の魔法、バリアがあの魔法に当たったら水になり、防御の役割を果たしてくれないということだ。基礎の基礎のバリアは、無機質属性の魔法なのである。
「何か足止めできるものがあればな・・・。」
そうこうしているうちに、ブルーランドが己がつくった水路へ入り込んでいく。水路の幅はブルーランドの体の幅ぎりぎりのところである。深さは川とあまり変わらないのか、体の後半部分は沈んだままである。
ソムは水色の横3本縦1本を書き、剣を右上から左下へ振る。斬撃がブルーランドの水面近くの体へ飛ぶ。
ブルーランドは避けようと水の中へ潜ろうとするが、頭が地面に当たり、潜ることに失敗する。
斬撃がブルーランドに当たる。しかし傷もつかない。
「くそっ、やっぱダメか。」
矢が飛んできて、ブルーランドの頭に当たるがはじかれる。
「僕の矢もダメです。目つぶしも期待できそうにありません。」
「・・・。」
ブルーランドのような水属性のモンスターに効きそうな電気がダメ。自分の最大火力のかまいたちもダメ。他には・・・。
「アスマス、痺れ粉はダメか?」
「この大型モンスターには無意味だと思います。」
水、火、闇、光、木、無機質・・・。
「ちくしょう!」
文句を吐きながらも、次の作戦を実行する。水色の横1本縦1本と青色の横3本縦5本を組み合わせる。
「逃げるぞ!」
「えっ!?」
ソムがアスマスを引っ張り、ブルーランドを背に走り出した。
数秒して、後ろから大きな音がした。
そのすぐ後に、ブルーランドの光線が地面をえぐる音がソムたちのかなり後ろからする。
「何をしたんですか!?」
「簡単な子供だましだ。」
騒音を出す波属性魔法に、数秒先の未来に魔法が発動する水属性魔法を組み合わせたのだ。ブルーランドから背を向けて逃げることで、注意を引いて、その直後にブルーランドの後ろから音を出すようにしたのだ。
ソムとアスマスは水路から距離をとりながらも、水路に沿って走る。水路が他のメンバーがいるところの最短距離だからである。
作戦は成功。しかし結果は所詮子供だまし、すぐに追いつかれてしまう。
ブルーランドはしびれを切らしたのか、光線を続けて出してくる。
「仕方ない!水路から離れるぞ!なるべくあいつから離れるんだ。遠くにいたらあの光線もなかなか当たらないだろう!」
ソムとアスマスはかわしながらバリアで守りながら、上から見れば水路から垂直に離れていく。
「そんなことしても・・・、」
意味はない。ブルーランドはその名のごとく大地を青く染め上げてしまう。ブルーランドは水属性魔法を何発も放ち、ソムとアスマスの周りを青い直線で囲んでしまう。
「ちくしょう・・・。」
もう何度目とも知らない文句が出てくる。
「もう魔力も使い切りそうです・・・。」
無理もない。ブルーランドの高威力の光線を何度もバリアで防いでいるのだ。バリアに消費する魔力も半端なものではない。
ブルーランドはソムたちの一番近くの水路へ移動してきた。獲物を追い詰めた蛇はどっちから食べようか迷っているのか、ソムたちを睨んだままゆっくりと移動してくる。
「これはどうだ!」
ブルーランドが目の前に来たとき、水属性レベル2ソート3を発動し、剣を水路に突っ込む。
とたんに剣の周りから水路の水が凍り始め、ブルーランドの周りの水も凍り始めた。
しかし、ブルーランドは何ともないようにガリガリガリッと氷を削って、進んでくる。
打つ手なしか。ソムは周りを見回す。周りは平原と直線の水路だけ。ソムは交差している水路を見た。
「ん?」
ひとつ、賭けともいえる案を思いつく。
「アスマス!バリアがもつまで俺を守ってくれ!」
「何か思いついたんですか?」
「一か八かだ。」
また抵抗されてもめんどくさいのだろう。それとも品定めが済んだのだろうか。
ブルーランドは光線をソムたちに撃ってくる。
アスマスがソムを守るようにソムの前に来て、バリアを張る。
しかしすぐにバリアにひびが入る。
「アスマス!退くんだ!」
言われるがままアスマスは退く。
アスマスが防いでいた光線が、ソムの方へ来る。ソムもバリアを張り、光線を防ぐ。
埒が明かないと思ったのか、ブルーランドは光線を撃つのをやめ、口に魔力を溜め、光線を撃ってきた。
「そいつを待ってたよ!」
ソムは水属性レベル2ソート1の魔法を発動し、水をまとって、ブルーランドの頭へ飛んだ。
ブルーランドは光線を飛んでくるソムの方へ照準を合わせる。
「あぶない!」
アスマスは叫ぶ。
光線がソムに当たる。しかし、
「効いてない?」
アスマスは不思議そうに言う。
ソムはひやひやしていた。思った通りだったが、もし違っていたら死んでいただろう。
あの水属性魔法の光線は大地をも水に変える力を持つが、水に対しては全く効果がないのだ。それを利用して、『マジック』の基礎の無機質属性のバリアを応用した水属性のバリアを張った。
ブルーランドは普通の光線を無機質属性のバリアで防がれて無駄なことだと思うと、あの大地をも水にする光線を撃つはずだ。ソムはそう考えたのだ。
水属性のバリアは光線に当たっても、バリアを壊すことはなく、増してはバリアを溶かすこともなかった。
ブルーランドの頭に乗ったソムは、予めありったけの魔力で電気を帯びさせた剣をブルーランドの口に刺す。
さすがに体の内側まで耐電作用になっているわけではないようで、ブルーランドは大きく痙攣したかと思うと、その巨体は地面に倒れてしまった。しかしまだ息がある。
「やりましたね!」
アスマスは嬉々としてこちらに駆け込んでくる。
「まだだ。」
「え?」
「まだ息がある。なにか追い打ちできるものはあるか?」
「僕の魔法じゃ、あまり意味はないかもしれないですけど・・・。あっ!」
ソムはギョッとして倒れているブルーランドの方を見る。しかし目に映るのは痺れて動けなくなっているブルーランドだけだ。
「すいません・・・、驚かせてしまって、毒があります。正確には毒を塗った矢が。」
「何本ある?」
「今回はピランの駆除としか聞いてなかったので、いつも装備している10本しかありません。」
「よし、全部刺すぞ。」
「それで殺せますかね?」
「どうだろうな。死ななかったとしても毒の分でさらに動けない時間ができるはずだ。念のためだ。その時間を利用して、デンゼルさんと合流だ。」
「はい。」
ソムとアスマスは動かないブルーランドの開いた口に10本毒矢を刺した。
「よし、今のうちに逃げるぞ。」
「早くブルーランドを倒してもらわないと。」
「おい!」
遠くから声がした。
ソムとアスマスは声の方向へ向く。2頭のグリフォンがこちらに飛んでくる。乗っているのは、コリンとライエンだ。
コリンとライエンを乗せたグリフォンが地面に着地すると、
「今すぐ俺たちを乗せて、デンゼルさんのところへ飛ぶ。」
ソムは急いでいる様子で言う。
「なんだよいきなり。それにこれおまえがやったのか?」
ライエンはブルーランドを指して言う。
「まだ生きてるかもしれないんだよ!あいつが動ける状態になる前に早くここから離れなくちゃならないんだ!」
ライエンは再びブルーランドを見て、状況を理解したようだ。コリンもこのでかいのがまだ生きていると聞いた瞬間、真面目な顔になる。
4人で2頭のグリフォンに2人ずつ乗って飛んでもらう旨を説明したら、グリフォンたちは納得した。
「ちゃんと説明させてくれよ。」
ライエンはソムに向かって言う。
4人はユス湖と水路の合流地点へ向かう。
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