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カラフル

ソム達のチームは、『マジック・マキシマム』の提供しているアパートが1部屋あるが、それは別のチームのために運営に返し、今はここロンドにある3LDKの家を拠点にしている。

 強いチームになると、依頼の指定場所がバラバラになるため、『マジック・マキシマム』が持っている全国のアパートを事あるごとに転々と移っていくということになる。ランクAにもなると帰る場所などなく、依頼指定場所が次の拠点になるのだ。

 ソム達のチームは、まだBになったばかりである。今はロンドを拠点とし、グリフォン便で日帰りで帰れる距離までが活動範囲である。

 「てかランクB!?」

 ソムは衝撃の真実に驚きを隠せない。

 「みんなのいる前で話をしましょうってことになったんです。だからデオンには口止めをしてもらっていたんです!」

 コリンは再び興奮し始めたのか、無意識に声が大きくなる。

 「悪いな」

 デオンも嬉しそうだ。

 「いやでもBだよ!?最初はこんなぎくしゃくしたチームが周りから認められるわけないと思われてたのに?」

 「うるせーよ、たかだかBくらいでそんなはしゃぐなよ。」

 ライエンはイライラした調子で言う。

 「そもそもお前が『俺らの目的は強くなることじゃなくて、人助けをすることだ』って言って、ランク低いお手伝い程度の依頼しか貰ってこないからCのままだったんだよ。その気になりゃ、上を目指せるんだよ。」

「ということは、ライエン。お前が難しい依頼をどんどんと貰ってきてたのか。」

「でもその『人助け』の精神は、大事ですよね。それのおかげでこの家も貰えたわけですし。」

コリンはソムとライエンの仲裁に入る。

家を貰ったというのは、『アルル』の中でも指折りの資産家であるイロストに、ソムの人助けの考えが、最近の子には見かけない心構えだ、と感心されて金銭的に援助してもらっているのだ。イロストは全国に不動産をたくさん持っているとも魔石の効率のよい作り方を開発したとも色んな噂が飛び交う、資産家にはよくある噂をささやかれている、言ってしまえば大富豪の典型的な例であった。だがひとつだけ違う一面を持つ。なんでもお金には困らないはずなのに、自分の優れた能力を宝の持ち腐れにせず、『マジック・マキシマム』の依頼をときどき受けているらしい。

「それとこれとは話が別だ。俺たちが強くなりゃ、その分多くの人を救えることにもなるだろ。今いる少ない人を救うか、これから危機に陥るたくさんの人を救うか、どっちがいいんだよ。」

「二人ともやめなよ。帰って早々もめるな。喧嘩するほど仲がいいってのも呆れるね。」

エーヴァが口を挟む。

「別に喧嘩してるわけじゃないよ。ただ俺は犯罪者をとっ捕まえるより、目の前で小さなことでって理由で振り向いてもらえない困っている人がいるのが許せないんだよ。」

「じゃあなにか、このまま底辺で居続けた方が良いっていうのか?」

「・・・。」

「ありゃりゃ」

「ああ、もう駄目ですね。」

「こうなると歯止めが利かなくなっちゃうんだよな。まったく『エルフ』っていうのは、こう融通が利かないのかねぇ。」

アスマス、デオン、コリン、エーヴァの4人は、ただただ二人の話を聞いているだけだった。

二人が息を切らしているその隙を狙って、

「ソムさん!そういえば『リーヤー』はどんな感じでしたか?」

アスマスは割って入る。

「ああ?」

「そ、そうですよ。私たち『リーヤー』についてはほとんど知らないんです。教えてください!」

「3年もいたんだ。土産話はひとつやふたつじゃ済まないんだろ?」

コリンとエーヴァも渡りに船と話に乗っかる。

「ええと、そうだな何から聞きたい?」

ソルも乗っかる。

「おい待てよ、話はまだ─」

「『リーヤー』では魔法が使えないって本当なんですか!?」

ライエンの不平を遮るように、アスマスが大きな声で言う。

「そうなんだよ。魔法が使えないってのは、日常生活に支障をきたすと思うだろ?だけど『リーヤー』には魔法の代わりになるものが存在する。『電気』だ。」

どこかでチッと舌を鳴らした音がしたが、誰も気にしない。

「そうだ!これをみんなに見せようと・・・」

ソムが縦8cm横20cmの薄型の機械を取り出し、アスマスに渡す。

「これは?」

アスマスはみたこともない物をあらゆる角度がじっと見つめる。

「ボタンを押すと、起動するんだ。」

「ボタン?これですか?・・・起動しませんよ?」

「ああ、その大きいボタンは操作のときに使うんだ。その左上の小さなボタンを押すんだ。」

「・・・、起動しませんよ?」

「充電が必要なんだ。」

ソム以外の顔がデオンの方へ向く。

 それを見るや、ソムは頭を抱え、デオンはパッと明るくなった。

 「やっぱそうなるよな!俺もそう思ったんだよ!」

 「違うんだよ、充電にはそれ専用のバッテリーとコードが必要なんだよ・・・。それなのにこいつがゲーム機に直接電気を流しやがって・・・。」

 「それじゃ、ダメなのかい?」

 エーヴァが不思議そうに言う。

 「アスマスには分かると思ったんだけどなぁ・・・。だからアスマスに最初に渡したんだけど・・・。」

 「つまりこれはもう、壊れているんですか?」

 コリンはソムに尋ねる。

 ソムがうつむいて黙ってしまったので、コリンは慌て、そしてまだ膨らんでいるソムのバックを見つける。

 「でもまだ、何かあるんですよね!?」

 ソムの顔がより一層暗くなる。

「こいつ・・・、あとはそのバッテリーしか持ってきてないんだ。しかも大量に。」

デオンが全く信じられないという様子で言う。

「これがあれば、少なくとも3か月は仕事を終えた後に、遊べるはずだったのに・・・。」

「もうずっと『リーヤー』に引っ込んでろよ。」

ここぞとばかりに、ライエンがとどめの一撃を食らわす。

コリンもアスマスもこのままではまずいと思ったが、フォローのしようがない。

「こいつはしばらく干さなきゃダメだ。しばらく俺がリーダーのままでいく。依頼も俺が良いと思ったやつを選ぶ。『マジック・マキシマム』の人助けは、危険な程度が丁度いいんだ。」

「・・・。」

この状況では、何も言い返せない。

「そういえばアンタ、魔法の方はどうなんだい?『リーヤー』で魔法を一回も使わなかったわけだろう?ブランクがあるんじゃないか?」

「その話なら大丈夫だ。最初は魔法が使えなくなって焦ったが、今は普通にモンスターを倒せるほどぐらいにはなった。進歩はしてないが、衰えてもいない。つまり3年前のままってことだ。」

エーヴァの疑問にデオンが答える。

「3年前のままなら、ライエンさんとは力に差が生まれたのではないですか?」

アスマスがソムに言う。

「いや、それは─」

「ないとは言わせないぞ。俺はあれからレベル3の技をいくつか習得したんだ。」

うっ・・・と、ソムは呼吸が止まる。自分はレベル3は波属性の魔法ひとつしか習得できていない。

「なんなら勝負してもいいんだぜ?今やってもいいんだぜ?」

「今は歩き疲れたからやめとく。」

「はいはいそうかよ。」

「それとお前の方は強いのは明らかだ。リーダーは一番強いやつがなるべきってのは、俺のポリシーに反するけど、お前は3年間リーダーやってきたんだろう?それなら俺はそれに倣うべきだ。」

「でも、ライエンさんがリーダーになってから、ひとりで突っ走ることが多々あって・・・、時々どうしようもなくなるんです。私の守備魔法がかけられなくなるほど遠くまで行っちゃうこともありますし。いつも言っているんですが聞かなくて・・・。」

コリンが不満を漏らす。

「じゃあ、作戦担当はソム。決定はライエンだな。なんだかんだ言って、前のと変わんねえな。」

一同は特に何も言わない。

「じゃあ、今日は休んで─特にソムさんとデオンさんは─、明日からでも依頼をこなしましょう!」

「あいよ」

「そうですね」

「おう」

「ふん」

「ああ」


ソムを加え、チーム「カラフル」は動き続ける。

─ちなみにこの「カラフル」は適当につけているので、名前は(主にデオンの)気分によってころころと変わっている。

読んでくださりありがとうございました。

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