↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
88/105

第七章第一話

2010年、春。日本海の穏やかな波音と、どこか懐かしい潮風が吹き抜ける島根県西部の小さな町。


バロンドールを受賞し、欧州の頂点に立ち、サン・シーロやカンプ・ノウを沸かせてから5年。30歳になり妻子を持った、響木蒼生は今、一人の公務員となっていた。


プロ引退後、故郷の函館へ戻った響木は、第二の人生として公務員試験に合格。静かな日々を送っていたが、運命の歯車は再び動き始める。


「響木! マジで来てくれたんだな!」


市営グラウンド。夕暮れ時のピッチで、スーツを着た門倉が破顔して駆け寄ってきた。函館時代、共にピッチを駆け抜けた戦友との再会だった。


「門倉さん。転勤の希望が通った時は、自分でも運命かと思いましたよ」


響木が笑いかけると、門倉は感無量といった様子で響木の肩を叩いた。


「この町から本気でJリーグを目指すクラブを作る。そう聞いた時、お前の顔が浮かんだんだ。……けど、本当に良かったのか? お前ほどの男が、こんな地方のアマチュアクラブで」


「何言ってるですか、僕はもう一人のアマチュアサッカー選手ですよ」


響木はスパイクの紐を結び直すと、少し色褪せたグラウンドの芝生を見つめた。


「ヘディングはできない。体もプロの時ほどキレないかもしれない。でも、純粋にボールを蹴る楽しさと、このチームを上に連れていく情熱なら、誰にも負けないつもりだ」


グラウンドには、普段は農業を営む者、地元の信用金庫で働く者、教員を務める者など、様々な背景を持つ選手たちが集まっていた。プロのような洗練された施設も、何万人の大歓声もない。


しかし、夕日を浴びながらボールを追う彼らの瞳には、純粋なフットボールへの愛と、夢を追う熱量が宿っていた。


「みんな! 紹介する、今日から俺たちのチームに加わる響木だ!」


門倉の声に、選手たちが集まってくる。響木は集まった仲間たちに向かって、静かに、だが力強く頭を下げた。


「響木蒼生です。目標のJリーグ昇格に向けて、全力でチームに貢献します。よろしくお願いします!」


バロンドーラーとしての誇りを胸の奥に秘め、アマチュア選手として再びスパイクを履いた響木蒼生。島根の豊かな自然と温かい人々に囲まれた新たな舞台で、Jリーグを目指す彼の新しい物語が、静かに幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。