第五章第五話
セリエA第5節。クラブが乗り込んだのは、強固な守備陣とスピード豊かなアタッカー陣を擁し、セリエA「7姉妹」の一角として猛威を振るう難敵・パルマの本拠地スタディオ・エンニオ・タルディーニだった。
ホームのサポーターが放つ怒号のような歓声と、イタリア特有の重厚な戦術的圧力がピッチを包み込む。
ワールドカップ優勝、セリエAでのゴールラッシュ、そして2002年バロンドール受賞――世界最高峰のストライカーとしてその名を轟かせる響木蒼生に対し、パルマ守守備陣は並々ならぬ執念で牙をむいてきた。
「バロンドーラーだろうが関係ねえ! ここはタルディーニだ!」
パルマの屈強なCB陣は、響木がボールを受けるやいなや二人掛かりで激しいボディコンタクトを浴びせ、前線での自由を極限まで奪いにかかる。セリエA屈指の戦術的ディフェンスが、クラブの攻撃の芽を摘み取ろうとしていた。
しかし、ミランの中盤は慌てない。
「ヒビキ、相手の集中が削れる一瞬を逃すな」
トップ下のマエストロが優雅にいなしながら声をかけ、中盤の底では若きレジスタが長髪を揺らしながら冷徹に盤面を俯瞰する。
前半を0-0の緊迫したスコアで折り返し、迎えた後半14分。試合が動く。
自陣深くで「闘犬」ボランチが、相手の攻撃の芽を強烈なスライディングで刈り取ると、こぼれ球を拾った若きレジスタが即座に前線へ長距離の低空スルーパスを放つ。
パルマのDFラインが一瞬、ラインを押し上げようと足足を止めたそのコンマ数秒――。
響木は相手CBの死角から滑り出るようにオフサイドラインを破り、ペナルティエリア右の「エアポケット」へと侵入していた。
「……捉えた」
追撃してくるCBのタックルよりも早く、響木は右足のノーモーションの一閃!
ドスッ――!
濡れた芝を滑るような弾丸ライナーが、パルマの守護神が伸ばした手の先を掠め、逆サイドのゴールネットを揺らした!
『1 - 0』!
「ゴーッッール!! 響木蒼生!! 難敵パルマの堅守を破る値千金の先制ゴール!!“BOX THE POACHER”の冷酷な牙が、タルディーニを沈黙させました!!」
咆哮をあげる闘犬ボランチが駆け寄り、響木の頭を激しく撫でまわす。
勢いに乗るミランは後半32分にも、マエストロの極上スルーパスに抜け出した響木が相手GKを引きつけて冷静に横パスを送り、交代出場の味方FWの追加点をアシスト。
試合はそのまま『2 - 0』でタイムアップ。
パルマの徹底マークと激しいフィジカルコンタクトをあっさりと攻略し、チームを勝利へ導いた響木。セリエA得点王、そしてトレブル達成に向け、新絶対的エースの進化は止まらない。




