第五章第三話
欧州最高峰のアンセムが、スタジアムの夜空に響き渡る。
UEFAチャンピオンズリーグ(CL)グループステージ第1戦。
欧州各地から集結した強豪たちがしのぎを削る本大会の幕開けにおいて、クラブがホームに迎えたのは、堅牢な組織力と強烈なカウンターを誇る欧州の強豪クラブだった。
「ヒビキ、ここからが本当の戦争だ。」
ウォーミングアップ中、「国防大臣」が静かな熱を込めて語りかける。ピッチの向こう側では、屈強なCB陣や世界屈指の司令塔たちが冷徹な眼光で日本の背番号9を見つめていた。
「望むところです。世界最高峰の舞台で、僕たちのフットボールがどこまで通用するか……確かめましょう」
響木蒼生の言葉に、隣に並ぶトップ下のマエストロが優雅な笑みを浮かべ、若きレジスタが静かに頷いた。
主審の澄んだ笛の音とともに、CL初戦の火ぶたが切って落とされた。
序盤から相手は鋭いインテンシティでミラノのクラブに襲いかかる。中盤の底で「闘犬」ボランチが身体を張って激しいボール奪取を見せるものの、相手の素早いパスワークと強烈なミドルシュートにより、前半18分に先制を許してしまう。
『0 - 1』。
アウェイの歓声が響き渡る中、若きレジスタが静かにボールを抱え上げ、中央のスポットへ置いた。
「ヒビキ、相手のCBは対人能力が高い分、前に食いつく癖がある。裏のスペースを一瞬で突く準備をしておけ」
「了解。コンマ数秒の隙があれば十分」
前半35分、ミランの反撃が牙をむく。
自陣深くで「国防大臣」が鮮烈なパスカットを見せると、ボールは若きレジスタへ。若きレジスタは相手の激しいプレッシングをキャンディを舐めるような余裕でかわし、前線のマエストロへ地を這う縦パスを通す。
ボールを受けたマエストロが、芸術的なキャンバスを描くように相手DFラインの背後へ浮き球の極上スルーパスを配球。
相手の巨漢CBふたりが一瞬だけボールに目奪われたそのコンマ数秒――。
響木は影のように相手の視界から消え、完璧な「エアポケット」へと抜け出していた。
「……捕まえた」
落下してくるボールに対し、響木は右足のアウトフロントで極上のトラップ。飛び出してきた相手守護神の頭上を越える、冷酷極まりないループシュートを放つ!
ふわりと浮いたボールが、吸い込まれるようにゴールネットへと収まった!
『1 - 1』!
「ゴーッッール!! 響木蒼生!! マエストロの極上パスから、“BOX THE POACHER”が冷酷に仕留めました!!」
大歓声に包まれるスタジアム。闘犬が咆哮しながら響木の背中に飛び乗り、若きレジスタが拍手を送る。
後半に入ると、欧州最高峰の意地と誇りがぶつかり合う息詰まる攻防となった。相手も粘り強いサイドアタックで何度も脅威を与えるが、ミラノのクラブの堅守がそれをことごとく跳ね返す。
そして後半42分、決着の時が訪れる。
右サイドで相手の攻撃を食い止めた闘犬ボランチからボールを受けた若きレジスタが、黄金の右足からロングフィードを放つ。
ペナルティエリア手前、響木は相手CBと激しく身体をぶつけ合いながらも、巧みなボディコントロールでボールをキープ。相手DF陣が警戒して囲い込もうとしたその一瞬の隙を見逃さず、右足をノーモーションで一閃!
ドカン――――――!!
相手CBの股下を射抜いた無回転の弾丸ライナーが、ゴール右隅へと突き刺さった!!
『2 - 1』!!
「入ったアアアッ!! 響木蒼生!! 本日2ゴール目!! 劇的な勝ち越しゴール!! 欧州の強豪を相手に、日本の絶対的ストライカーがその牙を見せつけました―――ッ!!」
タイムアップの長笛が響き渡り、ミラノのクラブはCLグループステージ初戦で見事な逆転勝利を飾った。
欧州の強豪たちがひしめくグループステージで、響木蒼生とクラブの欧州制覇に向けた伝説が、鮮烈に開幕したのだった。




