第四章第七話
2002埼玉スタジアムを満たす、7万人を超える大観衆の地鳴りのような手拍子と歓声。
2002年FIFAワールドカップ、準決勝(ベスト4)。
未知なる頂点へ挑む日本代表の前に立ちはだかったのは、奇しくも前回大会で準決勝で当たり敗退した対戦相手、サッカー王国ブラジル代表だった。
前線には、圧倒的な個の力と異次元の破壊力を誇る「3R」――怪物FW、鬼才アタッカー、そして若き天才が君臨。世界最強の攻撃陣がサムライブルーの前に立ちはだかっていた。
「相手はサッカー王国だ。だが、ここまで勝ち上がってきた我々の組織力と魂は、決して王国に劣っていない。ファイナルへの切符を掴み取ってこい!」
フランス人監督の激を受け、日本のイレブンは静かにピッチへと足を踏み入れた。
日本のピッチには、絶対的エース・響木蒼生と、最前線で肉弾戦を挑み続けるフィジカルコンタクトの強いFWのツートップ。中盤の中央には赤い髪をなびかせる対人守備の強いボランチと黄金世代の大型ボランチ。右に守備の鉄人、左にユーティリティープレイヤーを配し、中央の絶対的エースがタクトを振るう。
主審のホイッスルとともに始まった世紀の一戦。
序盤、王国の力は圧倒的だった。「3R」の流麗かつ圧倒的なスキルに日本の【フラットスリー】も防戦一方となり、前半29分、怪物FWに一瞬の隙を突かれたつま先立ちのシュート(トーキック)で先制を許してしまう。
『0 - 1』。
世界最高峰の壁の厚さにスタジアムが息をのむ。しかし、日本イレブンの眼光は死んでいなかった。
対人守備の強いボランチが激しいスライディングで王国の攻撃の芽を摘み、セカンドボールを泥臭く回収。最前線ではフィジカルコンタクトの強いFWがブラジルの世界最高峰CB陣と肉弾戦を繰り広げ、前線で身体を張り続ける。
そして後半18分、日本の執念が結実する。
中央の絶対的エースが相手の圧迫を耐え抜いて前線へ送ったスルーパスに、フィジカルコンタクトの強いFWが猛然と突進。ブラジルCBと激しくぶつかり合いながらも泥臭く粘り、ペナルティエリア手前へボールを流す。
ブラジル守備陣が潰れ役となった相方に一瞬目を奪われたコンマ数秒――その「エアポケット」に滑り込んでいたのは、響木だった。
「……捕まえた」
バウンドするボールに対し、響木は一切のタメを作らず右足を振り抜く!
ドスッ――!
無回転の弾丸ライナーが、ブラジル守護神の手を弾き飛ばしてゴールネットを激しく揺らした!
『1 - 1』!
「ゴーッッール!! 響木蒼生!! サッカー王国ブラジルから同点ゴール!! 泥臭いポストプレイから、“BOX THE POACHER”が冷酷に叩き込みました!!」
歓喜の咆哮をあげる響木。長居から横浜へと続く激闘の波が、ブラジルベンチに衝撃を与えていた。
そのまま試合は両者譲らぬ壮絶な削り合いとなり、90分で決着がつかず、熱狂の延長戦(ゴールデンゴール方式)へと突入する。
極限の疲労がピッチを支配する延長前半11分。決着の時が訪れる。
自陣深くで守備の鉄人が魂のタックルでボールを奪取し、交代出場の天才プレーヤーへ。天才プレーヤーは優雅なタッチで相手をかわすと、右サイドのスペースへ絶妙なスルーパスを供給。
走り込んだ右の守備の鉄人が、最後の力を振り絞って低いグラウンダーのクロスを配球する。
ペナルティエリア中央、フィジカルコンタクトの強いFWがニアサイドへ飛び込み、相手CB陣を引き連れて空間を作り出す。
その背後、影のように滑り込んだ響木。
高鳴る鼓動。研ぎ澄まされた冷酷な眼光。響木は流れてきたボールに対し、右足を一閃!
ドカン――――――!!
「決めろッ――!!」
シュートがブラジルのゴールネットを激しく突き破った!!
『2 - 1』!!
『ピーーーッ! ピーーーッ! ピーーーッ!』
ゴールデンゴールが適用され、タイムアップの長笛が横浜の夜空に鳴り響いた!
「ゴーッッール!! 響木蒼生!! 劇的なゴールデンゴール!! 日本代表、サッカー王国ブラジルを破り、ついに……ついにワールドカップ決勝進出です―――ッ!!」
狂喜乱舞する日本の選手たちがピッチへとなだれ込み、響木の上に折り重なっていく。
世界最高峰の王国を退け、サムライブルーと日本の絶対的エース・響木蒼生は、ついに世界の頂点を決める「決勝戦」の舞台へと王手をかけたのだった。




