第四章第五話
宮城スタジアムを激しく叩きつける、降りしきる大雨。雨水を含んで重くなったピッチと激しい水飛沫が、歴史的な一戦の独特な緊張感を物語っていた。
2002年FIFAワールドカップ、決勝トーナメント1回戦(ラウンド16)。
グループHを無敗の首位通過で突破した日本代表は、ベスト8という領域をかけ、強豪トルコ代表との運命の決戦に臨んでいた。
チュニジア戦で温存され、万全のコンディションで戻ってきた日本の点取り屋・響木蒼生。そして最前線で再びタッグを組むのは、泥臭く身体を張り続けるフィジカルコンタクトの強いFWだった。
中盤の底には、赤い髪をなびかせる対人守備の強いボランチと黄金世代の大型ボランチ。右に守備の鉄人、左にユーティリティープレイヤーを揃えた強固な布陣で挑む。
しかし前半12分、雨のピッチが試練をもたらす。
トルコが得たコーナーキック。激しい雨で視界が遮られる中、相手の大型FWに打点の高いヘディングシュートを叩き込まれ、日本は痛恨の先制を許してしまう。
『0 - 1』。
濡れたピッチに落胆の色が広がりかけたその時、絶対的エースが静かに声を張った。
「焦るな! ピッチが重い分、相手の足腰も削れている。僕たちのサッカーで押し返すぞ!」
絶対的エースの冷徹な言葉に、中央の響木が深く頷き、チーム全体に再び熱が宿る。
対人守備の強いボランチが濡れた芝を滑りながら魂のタックルでトルコの攻撃の芽を摘み、セカンドボールをことごとく回収。日本の【フラットスリー】がラインを押し上げていく。
そして前半38分、大雨を切り裂く同点劇が生まれる。
中央の絶対的エースが相手の激しいチャージに耐え抜き、前線へ地を這うグラウンダーのパス。
雨でボールが止まりかける絶妙な「エアポケット」へ、フィジカルコンタクトの強いFWがトルコCBを強烈な体躯で薙ぎ払いながら滑り込み、泥まみれになりながら右足で前線へフリック!
相手CB陣が潰れ役となった相方に引き寄せられたそのコンマ数秒――死角から水飛沫を上げて抜け出したのは、響木だった。
「……捕まえた」
バウンドする濡れたボールに対し、響木は一切のタメを作らず右足のトゥーキックを放つ!
ドスッ――!
水滴を弾き飛ばす弾丸シュートが、相手守護神の脇下をすり抜けてネットに突き刺さった!
『1 - 1』!
「ゴーッッール!! 響木蒼生!! 雨の宮城スタジアムで同点ゴール!! 身体を張ったFWの泥臭いポストプレイから、“BOX THE POACHER”が冷酷に叩き込みました!!」
咆哮を上げる響木のもとへ、泥まみれの相方やチームメイトたちが駆け寄り、固く抱き合う。
後半に入ると、雨脚はさらに激しさを増し、両チームの体力が限界に達する激しい肉弾戦となった。
トルコの激しいアタックに対し、右の守備の鉄人と左のユーティリティープレイヤーが極限の連動でサイドを封鎖。交代で入った天才プレーヤーが巧みなパスワークでテンポを変える。
そして後半40分、歴史の扉を開く運命の瞬間が訪れる。
自陣深くで対人守備の強いボランチが泥臭く相手から奪い取ったボールを、前線の絶対的エースへ。絶対的エースは前線へ鋭いアーリークロスを供給する。
ペナルティエリア内、フィジカルコンタクトの強いFWがニアサイドへ果敢に飛び込み、相手CBふたりを引き連れて潰れ役となる。
宙に浮いたこぼれ球。誰もがコンマ数秒足をとめたその瞬間、誰よりも早く落下点へ滑り込んでいたのは、響木だった。
雨混じりのピッチで、身体を極限まで捻ったダイレクトボレー!
ドカン――――――!!
「行けえええっ!!」
叩きつけられた一撃が雨を切り裂き、ゴール天井へと突き刺さった!!
『2 - 1』!!
「入ったアアアッ!! 響木蒼生!! 劇的な勝ち越しゴール!! 本日2ゴール目!! 日本を未踏の地へと導く、価値千金の一撃―――ッ!!」
狂喜乱舞するベンチから選手やスタッフが雪崩れ込み、響木を揉みくちゃにする。
そのままタイムアップの長笛が、宮城の雨空に轟いた!
『ピーーーッ! ピーーーッ! ピーーーッ!』
「試合終了!! 『2 - 1』!! 日本代表、欧州の強豪トルコを撃破!! ワールドカップ『ベスト8(準々決勝)』進出決定―――ッ!!」
降りしきる大雨の中、抱き合い、涙を流しながら歓喜を爆発させる日本のイレブン。
「サンドニの惨敗」から守備強度を高めた新布陣、泥臭く身体を張り続けた相方、そして冷酷な決定力で試合を仕留め続けた日本の絶対的ストライカー・響木蒼生。
日本サッカーの歴史を塗り替えたサムライブルーは、さらなる高み――準々決勝の舞台へと勝ち進むのだった。




