第四章第二話
埼玉スタジアム2002の超満員のスタンドを覆い尽くす、鮮やかなサムライブルーの波。巨大なビッグフラッグが揺れ、地鳴りのような「ニッポン!」コールがスタジアム全体を激しく震わせていた。
2002年FIFAワールドカップ、グループステージ第1戦。
母国開催の初戦という未体験の重圧の中、日本代表は欧州の雄・ベルギー代表との大一番に臨んでいた。
フランス人監督は、「サンドニでの激闘」を経て守備の強度を高める決断を下していた。
バックラインにはお馴染みの【フラットスリー】。中盤の底には黄金世代の大型ボランチと、赤い髪をなびかせる対人守備の強いボランチのダブルボランチを配置。右ウイングバックには本職のボランチからコンバートされた守備の鉄人、左には黄金世代のユーティリティープレイヤーが顔をそろえる。
そして前線、日本の絶対的エース・響木蒼生の相方を務めるのは、最前線で泥臭く身体を張り続けるフィジカルコンタクトの強いFWだった。
主審のホイッスルとともに始まった試合。
ベルギーは圧巻のフィジカルと得点力を誇る主将を中心に、強固なブロックと激しい身体能力で日本に襲いかかる。
しかし、新布陣の日本は強固だった。対人守備の強いボランチが中盤で相手のキーマンを潰し、守備の鉄人とユーティリティープレイヤーがサイドのスペースを徹底的に打ち消す。
だが後半5分、一瞬の隙から相手主将のアクロバティックなボレーが叩き込まれ、日本は痛恨の先制を許してしまう。
『0 - 1』。
重苦しい雰囲気が漂いかけたその時、最前線でフィジカルコンタクトの強いFWが咆哮した。
「まだ終わってねえぞ!!」
泥臭く相手CBと激しくぶつかり合い、セカンドボールを生み出す相方の気迫。響木は静かにボールを拾い上げると、センタースポットへと向かった。
「そうですね。相手CBの意識が前がかりになっている……死角だらけだ」
直後の後半14分、日本の反撃が実を結ぶ。
中央の絶対的エースからの縦パスに対し、フィジカルコンタクトの強いFWが相手CBを力づくで背負い、潰れ役となって泥臭く前線へフリック!
ボールはペナルティエリア手前で浮き球となる。
相手CBふたりが慌ててカバーに入ろうとしたその瞬間、影のように「エアポケット」へ侵入していたのは響木だった。
バウンドするボールに対し、響木は右足アウトフロントで繊細なタッチ。飛び出してきた相手守護神の頭上を越える冷酷なループシュートを放つ!
ふわりと浮いたボールが、吸い込まれるようにゴールネットを揺らした!
ドスッ――!
『1 - 1』!
「ゴーッッール!! 響木蒼生!! 電光石火の同点ゴール!! 身体を張ったFWの泥臭いポストプレイから、“BOX THE POACHER”が冷酷に仕留めました!!」
歓喜に沸くスタジアム。勢いに乗る日本は後半23分、大型ボランチが力強い中央突破からそのまま豪快な逆転ゴールを叩き込む!
『2 - 1』!!
スタジアムは狂乱の渦と化したが、ベルギーも譲らない。後半30分、ロングボールから裏へ抜け出され、同点ゴールを許してしまう。
『2 - 2』。
残り時間は15分。両チームの選手たちが極限の疲労で足を止める中、新布陣の守備陣が耐え忍ぶ。対人守備の強いボランチが魂のタックルで相手の攻撃の芽を摘み、セカンドボールを拾い上げる。
そして後半41分、決着の時が訪れる。
右サイドで守備の鉄人が粘り強くキープし、中央の絶対的エースへ。絶対的エースからのパスを受けたフィジカルコンタクトの強いFWが、相手CBふたりを引きつけて激しいコンタクトを受けながらも、必死に右足でペナルティエリア内へ流し込む。
泥臭く生み出された最後のチャンス。
誰よりも早くそのこぼれ球の落下点に入り込んでいたのは、響木だった。
「……捕まえた」
背後からの激しい圧迫を意に介さず、響木は右足のノーモーションの一閃!
ドスッ――!
相手CBの股下を抜けた弾丸シュートが、右サイドネットのわずかな隙間へと吸い込まれた!!
『3 - 2』!!
「入ったアアアッ!! 響木蒼生!! 劇的な勝ち越しゴール!! 前線の相方が泥臭く繋いだボールを、冷酷にネットへ突き刺した!! 本日2ゴール目―――ッ!!」
狂喜乱舞するベンチから選手たちが雪崩れ込み、響木とフィジカルコンタクトの強いFWを揉みくちゃにする。
そのままタイムアップの長笛が響き渡り、日本代表はW杯初戦で価値ある勝ち点3を獲得。
守備重視の新布陣と、泥臭く身体を張る相方との絶妙な連携のもと、日本のストライカー・響木蒼生が圧巻の決定力で母国に勝利をもたらしたのだった。




