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第三章第十五話

ラ・リーガ優勝、そしてUEFAチャンピオンズリーグ制覇。

1シーズンでの栄光を掴み取り、見事にピチーチ(得点王)を達成したエル・ブランコでの「1年」が、終わりを告げようとしていた。


契約上決められた、前代未聞の退団。

サンティアゴ・ベルナベウのクラブハウスは、どこか寂しげな空気に包まれていた。


荷物をまとめ終え、ロッカールームの扉を開けた響木蒼生を待っていたのは、この1年をともに戦い抜いた「白い巨人」の仲間たちだった。


「本当に……本当に行ってしまうんだな、ヒビキ」


そう言って最初に歩み寄ってきたのは、至高のエースだった。寂しさを隠すように爽やかな笑みを浮かべ、響木の肩を力強く抱き締める。


「お前とプレイしたこの1年間は最高だった。来シーズン、お前が『青と臙脂』のユニフォームを着て僕たちの前に立ちはだかるのは正直想像したくもないが……ピッチの上で再会できるのを楽しみにしているよ」


続いて、右サイドの悪魔がニヤリと笑いながら手を差し出す。


「向こう(ブラウグラナ)の空気も悪くないぞ。まあ、俺の時のようにブーイングは飛ばさないでおいてやるよ。最高のパスを送ってくれた相棒に感謝する」


左サイドの悪魔は豪快に響木の背中を叩き、「寂しくなるぜ! 次にお前の足を削るのは俺だからな!」と笑い飛ばし、闘将と黒いエンジンも静かな眼光の中に温かい敬意を込めて固い握手を交わした。


仲間たちとの別れの言葉を終え、廊下に出ると、そこには温厚な眼差しでたたずむ名将の姿があった。


包容力溢れる老監督は、響木のもとへ歩み寄ると、その両手を優しく包み込むように握りしめた。


「ヒビキ。君という稀代のストライカーを指揮できたこの1年は、私の監督人生においても実に誇らしい時間だった。世界中からスターが集まるこのエル・ブランコにおいて、君ほど静かに、そして冷酷にゴールを狩り続けた男はいない」


名将は慈愛に満ちた笑みを浮かべ、響木の瞳を真っ直ぐに見つめて言葉を付け加えた。


「君にふさわしい異名を贈ろう。――“BOX THE POACHER(ペナルティエリアの密猟者)”。ペナルティエリアという静寂の領域で、一瞬の隙も見逃さず冷酷に命を奪い去る、最高のストライカーだ」


“BOX THE POACHER”――。


「……光栄です、監督。ここで学んだすべてを胸に、次の場所へ向かいます」


響木は深く頭を下げた。


白い巨人のマスターたち、そして温厚な名将に深く見送られながら、響木蒼生は栄光に満ちたベルナベウを後にした。


胸に刻まれた誇りと新たな異名を携え、舞台はいよいよ「青と臙脂」――ブラウグラナでの2年目へと移っていくのだった。

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