第三章十四話
ラ・リーガ最終節。混戦を極めたシーズンも、ついに最後の90分を迎えていた。
首位に立つエル・ブランコと、2位のチームがわずか勝ち点1差で追う極限のプレッシャー。そして個人タイトルでは、響木蒼生が29ゴールで得点王の単独トップに立ちながらも、2位のライバルが28ゴールで背後にピタリと迫っていた。
「勝てば優勝、引き分け以下なら終わりの一戦だ。そしてヒビキ、お前が名実ともにラ・リーガ最高のストライカーであることを世界証明してこい」
主将であり闘将の力強い言葉を受け、響木は静かに、しかし燃えるような意思を宿した瞳でピッチへ向かった。
勝負を決する一戦。超満員のサンティアゴ・ベルナベウは、白いフラッグと地鳴りのような大歓声で揺れていた。
試合序盤から、勝利しか許されないエル・ブランコが怒涛の攻勢を仕掛ける。中盤の底で黒いエンジンが圧倒的な奪取力で相手の芽を摘み、右サイドの悪魔と左サイドの悪魔が両脇から破格の推進力で切り込んでいく。
そして前半27分、ベルナベウを揺らす先制点が生まれる。
至高のエースが相手CBを引きつけながらペナルティエリア手前で横パスを送ると、走り込んだ響木が相手DFの意図を突く冷酷なワンタッチでDFラインを置き去りにする。
キーパーとの一対一。響木は落ち着き払った動作でキーパーの動きを見極め、右足のインサイドでゴール左隅へ正確に流し込んだ。
ドスッ――!
『1 - 0』!
「ゴーッッール!! 響木蒼生!! ラ・リーガ第30号ゴール!! 大一番でついに大台の30ゴールへ到達!! エル・ブランコが悲願のラ・リーガ制覇へ大きく近づきます!!」
響木は咆哮しながらコーナーフラッグへと走り、駆け寄ってきた至高のエースやチームメイトたちと固く抱き合った。
後半に入っても、響木の「捕食者」としての本能は留まることを知らなかった。得点王を確実なものとし、そしてチームの勝利を決定づける瞬間が後半35分に訪れる。
右サイドからのFK。右サイドの悪魔が蹴り込んだピンポイントのクロスに、中央で相手CBと激しく競り合った闘将が頭で折り返す。
ペナルティエリア中央、混戦の中でボールがポツリと浮いた一瞬の「エアポケット」。
誰もがコンマ数秒反応が遅れる中、死角から影のように跳躍したのは響木だった。
空中でしなやかに体を捻り、鋭い右足のジャンピングボレーを一閃!
ドスッ――!!
放たれた弾丸シュートが相手キーパーの手を弾き飛ばし、豪快にゴールネットを揺らした!
『2 - 0』!!
『ピーーーッ! ピーーーッ! ピーーーッ!』
タイムアップの長笛がベルナベウの夜空に轟いた瞬間、スタジアムは狂喜乱舞の渦に包まれた。
「試合終了!! 『2 - 0』!! エル・ブランコ、混戦のラ・リーガを制し、堂々のリーグ優勝達成!! そして……シーズン31ゴールを叩き出した日本の誇るエース・響木蒼生が、移籍1年目にして圧倒的な成績でラ・リーガ得点王を獲得しました―――ッ!!」
ピッチ上で抱き合い、喜びを爆発させる選手たち。至高のエースが響木を肩車し、ベルナベウのサポーターたちから万雷の拍手と歓声が降り注ぐ。
重厚なラ・リーガの優勝トロフィーを掲げ、胸に刻んだピチーチの栄誉。
前代未聞の「1年契約」という極限のプレッシャーの中、響木蒼生はラ・リーガの頂点にその名を刻みつけたのだった。




