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あの虹のように Remake  作者: おわなん
二章:慈雨
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21/22

21. 天国

現在、列車はトンネルの中。

短く激しかった天井の戦いの勝者はそこに存在しない。何者もその場に残っていなかった。




不思議と意識がある。

周りを見渡しても景色がはっきりとしない。心なしか体がフワフワと浮遊感を感じる。


視界がはっきりし始めた。目の前には2つの山が見える。大きすぎず、決して小さくもない、丁度良い好みの大きさだ。

ずっと眺めていると山と山の間に吸い込まれそうだ。


ここは天国?それにしてもこの谷間は絶景である。




ん?谷間?




「うわぁ!!」


クトルの目の前には胸の谷間があった。


「ちょっと!うわぁって何よ!傷つくじゃない。」


この谷間の持ち主はヴィオレだった。




続いて、クトルの隣にいたシアンも目を覚ました。


「ん?なんだ?何が起きてる?てかお前、でかくね?」


シアンの目に映るヴィオレは異様に大きく感じる。ここまで見下ろされる感覚は幼少期に大人を見上げている経験に似ている。


「あんたが小さいの。てか元々小さいか、ごめん!」


シアンは反射的にヴィオレをしばこうとしたが腕がないことに気が付いた。それに、足も。


「あなた達は今魂だけになってるの。私がそうした。そうじゃないと死んでたからね。」


「僕たち…死んだの?短い、人生だった…」


「半分正解ね、魂だけで肉体は存在していない。でも安心して、肉体は透明になってるだけでまだ屋根の上に残ってる。私がこの魂を肉体のあった場所に戻してあげれば、生き返れる。」




ヴィオレはアルニコに首を絞められ少しの間意識を失っていたが、トンネルに入る直前にやっと体が動くようになった。上で行われている会話を聞いていたため状況は把握していたが、2人を一時的に助ける能力に自信がなかった。というより、試したことがなかったのである。


一か八か、祝福で魂だけを刈り取るデスサイスを召喚し、2人の魂だけを抜き取って肉体を透過してその場に保存する「幽体離脱」が成功したという経緯だ。他人の「幽体離脱」を強制的に発動させることが可能になったのは、対象の死期が近づいていた要因もありそうだ。


「助けてくれたってことか!ありがとう!」


「どういたしまして。それこそ、こちらこそありがと、シアン。」


ヴィオレは一呼吸置いた後、真剣な表情に変わった。


「話したいことがあれば今のうちに話してね。このトンネルを抜けたら魂をもとに戻すよ。今、この車体を停めれるのはあなただけなんだから。」


「わかってる。」


クトルが何かを思い出したため、幽霊になった体を激しく動かしてアピールした。


「そうだ!シアン君、後で先生に連絡してほしいんだ。このゲリラ達には専用の戦闘員がいて、特に強い7人は額に強い順に1番から7番まで数字が刻まれてるんだ!」


「なんだそれ...。くそださいな。」


「えぇ、かっこいいと思うんだけどな。それより!さっき戦った磁力の人は額に「4」って書いてたんだ。多分他6人は本部に、つまり先生たちと戦うことになるんだ!」


シアンとクトルの連携を合わせても終始圧倒されたアルニコの実力は上から数えて4番目。クトルの意表を突く不意打ちがなければ倒すことはできなかった。相対している敵対組織の底知れなさにシアンは少し驚いた。


「わかった、警告しておく。」


「準備はいい!?そろそろ抜けるよ!」


トンネルから抜けた途端、クトルは電車の側面、シアンは電車の上に現れた。


「あぶな!そうだった、僕こんなとこにいたんだった。」


クトルは自身を磁力体に変え、車両の側面に張り付いた。新たに磁力を扱えるのに加え、同時に3つまでの異なる自然現象を扱えるようになっていた。


シアンはクトルの無事を確認し、電車の先頭に走って行った。


(早く終わらせないと、教官のことだから今頃…)




=================================数十分前


「教官、シアンと連絡取れません。向こうの班に何かあったに違いありません。」


「うーん、そうか。」


プーリムの班は本部の手前まで来ていた。パンジーからの連絡を受け、頭を悩ませていた。


「こういう時はー、俺の経験で言うとー、うーん、でもこいつらにそんなことさせるのはー。」


プーリムはこのような状況判断は苦手である。彼自身頭脳ではなく、己の身のみで生き残り伝説となっている稀な存在である。


しかし、現在は自身より圧倒的に弱く経験も浅い生徒たちを連れている。考えなしに突っ込むわけにもいかない。何より今、自分は教官という立場である。数多の経験から培った知識や思考の手本として、ひよっこに見せつけなければならない。


「教官、こういう時はどうするんですか?私たちは教官の指示なら何でも遂行できる実力ありますよ!」


メイズは教官を鼓舞する。


プーリムはしばらく悩んだ結果、自分流のやり方で進めることを決めた。


「よし、あっちの班待たずに突っ込むぞ!」


彼はこのような状況判断は苦手である。メイズは先程の発言を後悔するのであった。

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