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あの虹のように Remake  作者: おわなん
二章:慈雨
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14/22

14. 半端者

ここ最近で一番、森林はうねっていた、2人の争いを呼応するように。


(戦いの基本!相手の祝福を予測すること。紋章は「H」。そして素早く切り裂くとこができる。わかってるのはそれだけ)


シアンは教官の教えを思い出しながら分析を行っていた。一方、リンは勢いよくシアンに飛びつく。オオカミのように爪を使って腕を振り下ろす。それを冷静にさばき、腹に蹴りをくらわせた。


(まだ祝福を使ってない。祝福を使ったら紋章が光るはず。余裕か、こいつ)


一瞬リンの紋章が光ったのを見たシアンは警戒し、後ろに下がった。しかし、それは間違いだった。

一定距離離れたがリンは大した動きを見せていなかったため不思議に思った。しかし、右足に痛みを感じた。何かに引っかかれたように右足は出血をしていた。


(これがあいつの祝福!?いったい何をした)


祝福を使って命の取り合いをすることは初めてだった。だが、驚くほど冷静だった。教え方は未熟だが、元プロから教わるものは着々と身についていた。相手に先制されても簡単なことでは動揺しない。


(さっき後方に下がる際に通った藪に血がついてる。葉で足を切ったんだ。紋章の頭文字から推測するに「Hard」。物体を固くする祝福、触れたものに限らず、見たもの、それか一定範囲のものに作用する。つまり、俺の祝福との相性は、最悪)


シアンの祝福は自身や物体を加速させること。

相手の「Hard」は草木を硬化させて、それに触れるものにトラップのように作用する。

シアンの強みを活かすには加速をしなければならないが、それをしてしまうと相手の掌の上だ。不利であることは明確だった。


リンは近くの大きな葉をちぎり、硬化させることで刃物を作った。

祝福の相性を知ってしまったせいか、それからはシアンの圧倒的劣勢だった。むやみに自分の祝福を使い手足がズタズタになるのを恐れたからだ。その様子を見たリンも調子づき、勢いは更に増していった。


(まずい。恐れるな!躊躇うな!相手にペース取られたらダメだろ。あいつはあまり賢くないからこうなると調子づいて止められなくなる)


恥ずかしいほどに一方的なシアンは何故か模擬トーナメントの時のクトルを思い出した。立場が逆転した気がした。

でも、あいつはそれでも俺に食らい付いた。


「なめてたな。」


シアンはタックルをくらい、藪の中に飛ばされた。藪は硬質化し、身動きをとれなくなった。


屈辱的だった。情けなくなった。そして、一人では勝てないことが分かった、今のままでは。


「Game Set、そう思ってるか。人間いつだって、止まったら次どうするか考えるもんだ。」


シアンは稼働範囲ギリギリで指を動かし、空にいくつか石を投げた、加速付きで。


「今から2つ、賭けをする。」


高速で落ちてきた小石は硬質化した葉に当たり、火花を散らした。辺りは一瞬で火の海と化した。


「グアァァァ!モリ!!モエルゥルゥゥゥゥ!!!」


リンは戦いそっちのけで森の鎮火に全力を注いだ。葉を硬化し桶のようなものを作って、近くの川から水を汲んでいたが焼け石に水だった。


(やはり、硬化しても物体の性質は変わらない。1つめの賭けは成功だ)


段々体の自由が利き始めたが、脱出する前に丸焦げになる。


(当然、俺もこのままだと焼け死ぬ。一人だったらこんなこと、実行に移さんかったがな)




山火事を見つけたクトルは多少動揺しつつも、巨大な雨雲を発生させた。


「からのー、風ー!」


雨雲は風に吹かれて原因不明の山火事が発生している地点に動き始めた。


「何なのあれ、行ってみる?」


「行かなきゃ。はぁはぁ、シアン君かも。でも、ちょっと待って。強い風使えるようになったけど、はぁ、体力使うな。」


クトルは遠征初期と比べて成長が著しい。雨雲を動かせるような強い風も発生させることができたが、スタミナの消費も激しい。


「あ、でもこんな暗い中移動して迷子にでもなったら朝になっちゃう...。教官に怒られちゃうよ。」


「それなら安心して。見て!」


クトルの手にはコンパスがのっていた。スマートフォンで済むものをなぜか持ち歩いている。幸い圏外であるためデジタルでないことが役に立った。


「いつも持ち歩いてるから、どっちに宿舎があるか分かるよ。よし、体力回復。


行こう!!」




火災により木々や藪は燃え焦げ非常に臭かったが、辺りは雨により大体の火の気が消えた。

リンが残りの木の消火活動に専念していると、腹に蹴りが入った。


「さぁ次は、お前が考える番だ。」


(風の威力強くなったな。おかげで多少の火傷で済んだ。それでいいんだ、クトル。少なくとも俺は、お前を認めている)


リンはかつてない怒りの表情を放火魔に向けた。


「言いたいことがあるんだ。そんなに他人に森が傷つけられるのが嫌か。お前が葉を折ったことは棚に上げて。そんな半端な正義で俺に勝てると思うなよ。」


右手を握りしめ、振りかぶった。


「それともう、躊躇わない。」


一進一退の攻防が続いた。どれだけ殴られようが、どれだけ切り傷が増えようが互いに躊躇いはなかった。先にどちらが音を上げるかが、この戦いの肝。


それは意外にも早かった。


(やばい、出血が多くて、フラフラす…)


シアンに強烈な一撃が入った。刃が皮膚を切ることはなかったが、防いだ衝撃で滝まで飛ばされ、倒れた。力が入らない体に喝を入れて、滝壺の真ん中にある露岩に立った。


顔を上げると向かいには同じく露岩の上に立つリンがいた。リンはとても息づかいが荒かった。既に怒りが頂点に達していることは明らか。生かしてはくれないのだろう。


(このまま、殴り合えば、確実に、負ける)


クトルに向けて自信が放った喝を思い出した。あれからクトルは実際に著しい成長を見せた。一方、自身はどうだ。戦闘スタイルや祝福を使ってできることは何も変わっていない。「下界」に来て、一番強いからと周りに強気になって、1年後には全員に追い越されても見ろ。一生の恥である。


半端者とは今の自分に最も合う言葉である。


(一番強いからって、自惚れてた。俺はここで一番になるのが夢じゃないだろ。一番強いやつは、過去や自身に弱さを残さない)


過酷な遠征で忘れかけていた母親と共に立てたの目標が頭を巡った。


(そうだ、俺は…)


リンが痺れを切らして飛びかかってきた。シアンは反応が遅れたが、カウンターを放った。


(だめだ、加速だけじゃ追いつかない!)




宙に血しぶきが舞った。

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