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第三十四話 嘘が真実になる場所
数ヶ月後。
帝都の超高層ビルの最上階。俺は新しく立ち上げた投資コンサルティング会社『K・ホールディングス』の社長室から、街を見下ろしていた。
神崎コーポレーションという巨象が倒れたことで、帝都の裏社会とビジネスの境界線には、巨大な「力の空白」が生まれていた。俺は合法化された50億円を元手に、その空白にいち早く滑り込んだのだ。
ノックの音がして、秘書が入ってきた。
「社長。帝都銀行の常務から、先日の事業再生ファンドの件でご相談が……」
「繋いでくれ」
応接室に現れたのは、かつて俺が「架空の身分」として利用した帝都銀行の幹部だった。彼らは今、俺の持つ莫大な資金力と情報網を頼りに、頭を下げてビジネスの教えを乞うてきている。
「霧島社長。神崎の解体で浮いた資産の買い取りについてですが……」
「ああ、あの件ですね。ご心配なく、すべて『適正な価格』で処理しましょう」
俺の口から、**一切の赤い靄(嘘)**は出なかった。
詐欺師の極致。俺はついに、自分自身の存在すらも完全に騙し、「一兆円企業を解体した本物のビリオネア」という嘘を、100%の真実に上書きすることに成功したのだ。




