第三十三話 黒い資本のロンダリング
俺の手元には、神崎から強奪した「100億円の無記名債券」がある。
だが、これをそのまま換金すれば、足がついて特捜部に目をつけられる。現代の金融システムにおいて、100億の裏金を合法的なカネ(表の金)にするのは至難の業だ。
俺は再び、小日向颯たちのいる『ギルド(旧文芸部室)』を訪れた。
「小日向。お前たちのファンドに、この100億を投資したい」
俺は机の上に、債券の束を放り投げた。
「……無記名とはいえ、神崎の裏金です。そのままでは日本の金融機関は通りませんよ」
「だから、お前たちの出番だ。大地のハッキング技術と、お前の海外の投資スキームを使って、この債券をオフショア(タックスヘイブン)の複数のダミー法人を経由させ、複雑な金融商品として洗浄する。……手数料として、半分の50億をお前たちにくれてやる」
小日向が、静かに俺を見た。
「50億。……僕たちが作る『才能を保護するための聖域』には、十分すぎる資金ですね。引き受けましょう」
彼らは即座に動いた。
大地のシステム構築と小日向の金融知識が組み合わさり、俺の持ってきた物理的な「黒い紙切れ」は、数日のうちに何重ものデジタルな壁を抜け、完全な「白」な投資資金として、俺の指定するスイスのプライベートバンクへと還流してきた。
これで俺の手元には、完全に合法化された50億円の純資産が残った。
借金に追われ、屋上から飛び降りた霧島誠一の口座には、見たこともないゼロの羅列が並んでいる。




