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第三十話 怪物の陥落

『……御子柴先生か! 罠だ、何者かにハメられた! 今すぐ警察を動かしてこのシャッターを開けろ!』


密室のトンネル内。神崎隆が衛星電話で怒鳴り散らす音声は、小日向のチームによって完璧に傍受され、大地の書き起こした「裏献金リスト」と共に全国のメディアと特捜部へ一斉送信された。


数分後、外部からの操作で防煙シャッターが上昇し、赤色灯の光がトンネル内を照らし出した。

踏み込んできた特捜部の捜査員たちに包囲され、神崎は車から引きずり出された。俺は事前にすり替えておいた「ダミーのアタッシュケース(裏献金リスト入り)」を大人しく捜査員に引き渡し、ただの出向銀行員として身を潜めた。


だが、逮捕された瞬間でさえ、神崎隆の目にはまだ「絶対者の狂気」が宿っていた。

特捜部の車両に押し込まれながら、彼は俺を睨みつけて叫んだ。


「……霧島! 貴様が仕組んだな! だが、私がこの程度で終わると思うなよ! 神崎コーポレーションの資本と私の人脈がある限り、こんな容疑はすぐにひっくり返る! 私は必ず戻ってくるぞ!」


神崎の口から、赤い靄は出ていない。彼は本気で、自分の築いた一兆円の帝国が自分を助け出すと信じていた。

俺はパトカーの窓越しに、彼に向かって深く一礼した。


(……だが神崎。資本主義のバケモノは、お前だけじゃないんだよ)


俺の懐には、本物の100億円の無記名債券が眠っている。

そして、この逮捕劇は「神崎の終わり」ではない。一兆円の帝国に群がるハイエナたちの、血で血を洗う「解体ショー」の始まりの合図に過ぎなかった。

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