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第三話 0.3%の境界線

借金を無事に完済し、俺の手元には「自由」と「100万の軍資金」が残った。

だが、この世界を観察するうちに、俺はある違和感に気づき始めていた。


(この能力……俺だけじゃないのか?)


ネットの深淵、秘匿された裏掲示板。そこで囁かれる「真理の眼」という都市伝説めいた噂。

この世界には、ごく稀に特異な感覚を持つ者が生まれる。その確率はわずか0.3%。彼らは政財界のトップや裏社会の支配者として、その力を隠して君臨しているという。

俺が手に入れた「赤い靄」も、その一種に過ぎない。


さらに、能力には「段階レベル」があることも分かってきた。

最初は相手が明確に「言葉で嘘を吐いた時」に反応するだけだった靄が、最近では「沈黙」や「視線を逸らす行為」にまで混じるようになっている。言葉に出さずとも、相手の思考の歪みが視え始めているのだ。


俺はまず、神崎コーポレーションの幹部・遠藤忠雄の懐に入るため、自分を「偽装」することにした。

裏社会のブローカーに50万を支払い、「帝都銀行 法人営業部・霧島誠一」という完璧な架空の経歴ゴーストをネット空間と銀行のダミーデータベースに構築させる。

精巧な名刺と、それらしいオーダーメイドのスーツを用意し、探偵を雇って遠藤の徹底的な行動調査を行った。


「……堂嶋探偵事務所です。遠藤氏、毎週金曜は桐ヶ丘の会員制サウナ『碧水』へ。その後、隠れ家バー『澤村』が定位置です」


金曜の夜。俺は「碧水」のラウンジで、わざと遠藤のすぐ隣のロッカーを陣取った。

彼がビールを買おうと小銭入れを探し、焦っている隙を見逃さない。


「あの、これ……落ちてましたよ。クレジットカードですよね?」


差し出したのは、あらかじめすれ違いざまに彼の鞄から抜き取っておいたブラックカード。


「おおっ! 助かった! 君、名前は?」

「帝都銀行の霧島です。お気になさらず。私もここのサウナにはよくお世話になっていますから」


遠藤の口から出るのは、感謝と安堵の青いオーラ(真実)。

だが、俺が「帝都銀行」と名乗った瞬間、彼の瞳の奥にわずかな赤い火花が散った。


(ほう……銀行員と聞いて、何かを『隠そう』としたな?)


これが進化した能力の成果だ。遠藤は神崎の裏資金を扱っている。銀行員という存在は、彼にとって「利用価値がある」と同時に「極めて警戒すべき」対象なのだ。警戒心の強いエリートに、まずは俺という存在のフックを強烈に引っ掛けることに成功した。


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