第二十三話 反逆の狼煙
「……これで全部だ」
都内のセーフハウス。
大地が、ホワイトボードと何十冊ものノートに、脳に焼き付けた『神崎の裏帳簿』のデータを猛烈なスピードで書き出していく。
そこに記されていたのは、数十年にわたり神崎コーポレーションがばら撒いてきた、現職の総理大臣を含む大物政治家や警察幹部への「賄賂の記録」だった。
「ひどいな……」
奏が、書き出された数字の羅列を見て顔をしかめた。
「この帳簿の構造、完全に腐ってます。神崎は会社を大きくするためじゃなく、この国そのものを自分の所有物にするために金を使っている」
「ああ。これが神崎の『絶対権力』の源泉だ」
俺は書き出されたノートを手に取った。
だが、これだけでは神崎を法的に完全に追い詰めることはできない。「記憶から書き起こしたメモ」には証拠能力がないからだ。
「証拠能力は、私が担保します」
部屋のドアが開き、氷室の元部下であり、今は俺の手駒となった沢渡が入ってきた。
彼女の手には、神崎の本社サーバーから極秘に抽出したデータが入ったハードディスクが握られている。
「大地の記憶データと、実際の神崎コーポレーションの『使途不明金』のキャッシュフロー。この二つを私の会計知識で突き合わせれば、言い逃れのできない『完璧な裏金ルートの証拠』が完成します」
沢渡の言葉に、赤い靄は出ない。彼女は氷室を裏切った後、自分の身を守るための最強の盾として、俺の計画に完全に加担することを選んだのだ。
「……霧島さん」
小日向颯が、静かに口を開いた。
「僕の未来視の条件が、今、揃いました。これで神崎隆を完全に盤面から引きずり下ろすシナリオが組めます」
「ああ。神崎が次に動かす最大の資金……『次期総裁選への、百億円規模の裏献金』。それが動く瞬間を狙う」
俺は集まったチームの顔を見渡した。
復讐の孤独なペテン師だった俺に、いつの間にかこれだけの手札が揃っている。
神崎隆。一兆円の怪物を殺すための、最後のコンゲームの準備はすべて整った。
反逆の狼煙が、静かに、だが確実に上がろうとしていた。
やっと、颯のチームと霧島が合流できました。
ちょこちょこ、編集しながら書いているので、今まで読んでくださった方は読みづらく誠に申し訳ございません。
これからもよろしくお願い致します。




