第二十一話 五つの異能
その夜、俺は小日向颯に呼び出され、都内の貸し会議室へ向かった。
中に入ると、小日向の他に三人の見知らぬ高校生がいた。
「霧島さん、紹介します。僕の『チーム』です」
小日向が静かに手で示した。
「構造の崩壊を感知する『奏』。氷室のシステムに34円の端数エラーという『脆弱性』を見つけたのは彼女です」
黒髪の少女が、軽く会釈をした。彼女の目には、物事の理を見透かすような鋭さがあった。
「そして、見たものを一瞬で完璧に記憶する『大地』と、感情の波を安定させる『凛』です」
大柄な少年(大地)が照れくさそうに頭を掻き、小柄な少女(凛)が不安そうにこちらを見つめている。
「……高校生の仲良しグループで、一兆円企業を本気で潰す気か?」
俺が鼻で笑うと、凛という少女が一歩前に出た。
その瞬間、俺の胸の奥で常に煮えたぎっていた「前世の復讐心」と「焦燥感」が、まるで凪いだ海のようにスッと静まった。
(……なんだ、これは。頭が、異常にクリアになる)
「私の異能です」と凛が言った。「霧島さん、ずっと一人で、怒りと嘘に囲まれて疲れていたでしょう。少しだけ、休んでください」
彼女の能力は、本物だった。俺は深く息を吐き出し、ソファに腰を下ろした。
「……小日向。なぜお前は、俺に自分の手札をすべて見せる?」
「明日の夜、あなたが神崎の私邸に行くからです。……僕の未来視では、あなたはそこで神崎の罠に落ち、社会的にも肉体的にも抹殺される結果が出ています」
小日向の言葉に、部屋の空気が張り詰めた。
「神崎の私邸の地下にあるアナログの裏帳簿。あなたはそれを盗み出そうとしているはずだ。ですが、あの地下室は電子機器の持ち込みが一切不可能。紙の束を物理的に持ち出せば、即座に重量センサーで感知され、あなたは蜂の巣になります」
「……」
図星だった。渡辺から間取りを聞き出したはいいが、そこからどうやって膨大な帳簿データを持ち出すか、俺の詐欺師の頭脳でも完全な解は出ていなかった。
小日向が、隣の大地をポンと叩いた。
「そこで、彼の出番です。霧島さん、明日、彼をあなたの『カバン持ちの助手』として屋敷に潜入させてください」
大地の能力、『完全記憶』。
カメラが持ち込めないなら、「人間の脳」にすべてを焼き付けて持ち帰る。
異能と異能が、神崎隆を屠るための一つの刃として組み上がっていく。




