第12話 地獄
お久しぶりです!
あっちの方では投稿していたのですが、中々忙しくてこちらの方に顔を出している余裕がございませんでしたm(_ _)m
少し書き方や長さを最初から変えようと思っているので、あしからず。
意識が肉体に戻り、眼を開こうとしたが……体全身どころか眼すら開ける事は出来なかった。
そう……冷たい氷で閉ざされていたのだから。動きを封じられ言葉も封じられ、残っているのは魔力と思考能力だけだった。
(とにかく……周りを……)
ソナーのように魔力を放出、すぐ真隣りによく知った魔力反応、ルシファーが同じように氷の中で動けずにいた。そして僕は意識を失う前の出来事を覚えていた。つまりここは……。
(コキュートス……地獄の最下層、となるとこの氷は容易く溶けそうにない。魔力も残っているとはいえ僅か、こうなった場合最善な事は……魔力を回復するまでここに居る事か)
再び意識を闇の中に手放し、流れのままに身を任せることにした……皆の事を脳裏に浮かべながら。
ー現世ー
「どうしたら……どうすれば……」
私は険しい表情を浮かべながら氷の上で座り込み、ただ考えていた。この氷は彼の魔力でもどうにもできなかった、つまり自分程度の魔力でも何もすることも出来ない。
「そうだ、エクスカリバーなら……」
そう思ったが、エクスカリバーはあくまで能力を”無力化・無効化”するだけでこれは力でも何でもない。地獄の氷は熱で溶かす事も出来なかった。
出来うる限りひたすら考え抜いた。自分に何ができるか、冬風の為に何をしてあげる事が出来るか。
そうやって考え抜いているうちにとある事に気が付いた。それは今度始まる真竜王激流祭の事だった。冬風はこの祭りの本戦に出場すると言っていた、しかし冬風は今参加できる状態ではない。祭りの前に帰ってきてくれる保証もない……となればユスティア国皇女である夢依を一人で頑張らせてしまう羽目になってしまう結果になる。そんな事彼なら絶対に許すはずがない。となれば自分が出来る事はたった一つだけだった。
しかしその為には一つ確認しなければいけないことがあった。
「龍彦……一つ確認したいことがあるのだけれど」
「何だ」
声をかけると物陰からひっそりと姿を現した。そしてとある相談をした。その相談を聞いた龍彦は思わず吹き出し、そして考え始めた。
「ふむ……確かに前例が無い事は無いが」
「ありがと……」
そう言い残し部屋の奥へと急ぐ。その姿を尻目に龍彦は一人何か考えに更けていた。
~ユスティア王国 若霧魔法学園屋上~
話を聞いてから数分が立っていた。彼女たちは相変わらず何かを楽しそうに話しながら空を眺めていた。話題は冬風の事や数日後に開催される祭りの事だった。夢依は期待に胸を膨らませながら、春香は仕事の忙しさに疲れの色を少し出しながら和気藹々と話していた。しかし私は、少し浮かない顔をしていた。
「どうしたの?」
夢依の問いに
”何でもないわ”
と微笑みながら返した。しかし私の胸にしっかりと刻まれた不安感がどうしても気になっていた。
冬風がグライエンに連れていかれてからその不安感が取り除けない……彼女たちを不安にさせたくないから表情には出していないが、不安になっていたのには理由があった。
それはこの前彼の心臓に打ち込んだ”契約の楔”(けいやくのくさび)が突然断ち切られたのだ。これを私はコネクトと呼んでいる。その理由は単純で打ち込んだ相手の心拍数や血液の速度、魔力の放出量で今どんな状態にあっているのか……どんな場所に居るのか大抵は把握できるからだ。
コネクトに範囲はなく、この世界に滞在している限り断ち切られるなど一切あり得ない事だった。そのコネクトが断ち切られてしまったが為に、心の底でとてつもなく不安を感じていた。
そしてもう一つ……それはいきなり彼が魔力属性を変更したことにあった。普段水の属性を使っているのは、私と冬風の魔力との相性が良く際限なく使う事が出来るから。
遠慮なく上位魔法をぶっ放してもなん十発でも連射可能だ……しかしこれはあくまで自衛や移動等をメインとして冬風が構築したもの、なので戦闘向けに構築されたものではなかった。相手が大した魔力を持つ者……もしくはとんでもない手練れではない限り私の魔力でも無傷で圧勝することは出来る。
しかし先程遠くの方で冬風の魔力属性が変わるのを肌で感じた。冷たく暗い魔力へと……。これはルシファーの属性の性質で、闇に属性変化したことを指し示す。だがそれと同時に太陽の日のような、暖かい魔力を彼から感じたのも事実だった。これが意味するのはたった一つ……時雨を使うにまで至らずともルシファーの力を使わなければやられてしまうような手練れに出くわしたとしか考えられなかった。
でも頭の中ではその位想定すること等造作も無い事で、フェルニアが冬風に接触しグライエンへと連れ去った所を見ると……十中八九あそこのトップが彼に何らかのちょっかいを出したと想定できる。だが問題はその後だった、戦いが終わったかと思いきや突然魔力反応を見失った。それも一時的なものだっ たので思い過ごしだろうと思った直後だ……急激に冬風の魔力が跳ね上がるのを感じた。それもとてつもなく大きく、しばらく魔力開放状態だった。その後急激に萎んでいき……やがて消え去ってしまいコネクトが断ち切られてしまったのだ。
本当だったら今すぐにでも冬風の元へと駆け寄りたいところなのだが、夢依の事を任された以上彼女の傍から離れる訳にはいかなかった。
その瞬間、突如として屋上の鉄扉の真ん前に魔法陣が現れた。春香は何が起きたか分からないような驚きの表情、私と夢依は彼が帰ってきたかもという期待の表情だった。しかしその期待も呆気なく砕かれた。鈍く光る魔法陣の中から出てきたのは、1人の少年だった。しかし魔力の質や来ている衣服等から、ただの少年ではない事は明確だった。
「貴方は一体……」
夢依が尋ねると、少年は頭を下げ自己紹介をし始めた。
「私はグライエン第一皇子……グレイアス・クラウディオと申します。緊急の用がありここに来ました」
「えっ……」
夢依が間抜けな声で呟いた。あの時冬風は彼に……グレイアスに会いに行くと言っていた、しかしそのグレイアス本人がこちらに出向いたと言う事に驚いた。
「な、何故他国の皇子殿下がこちらに……?」
春香が尋ねると、グレイアスは少し表情を曇らせながら答えた。
「止むを得ぬ事情があって……。貴方がユスティア王国皇女、渚夢依ですね?」
彼ははっきりと夢依の方に顔を向けて話した。驚きで言葉を発する事を忘れていた夢依は、ただひたすらに頷く事しか出来なかった。
「彼の契約精霊……貴方もこちらに、少し込み入った話があります」
深々と頭を下げ、夢依と私を屋上の物陰へと誘う。最初は何が何だかと言うような感じだったが、私の表情を尻目に捉え何が起こってるのか、夢依はあらかた察しがついたようだ
。
グレイアスは春香と十分に距離が取れた所で足を止め、2人もそれに続いて足を止めた。
そして彼が振り向いた時その表情は……今にも泣き出しそうな程に目元に涙を溜めていた。2人は只ならぬ事があったと確信し、息を飲んだ。そして……ゆっくりとグレイアスの口からグライエンで起きた出来事を話していく。
話の半ばで堪えきれずに涙を零したが、それを必死に拭いながらも話を続ける。夢依は話を聞いても尚理解出来ない様子で、私は深いため息をつきながら頭に手を当てていた。そして話が終わり2人にどうすればいいのか聞く為に私の方に視線を向けたのだが……私は呆れた様にため息をつくしか出来なかった。
「そんな……どうして」
「貴方はルシファーがどうしてコキュートスに堕ちたか分かる?」
「そ、それは……」
反論したが私の問に答えることは出来なかった。何故なら精霊の知識はあるが、神や悪魔……それも大魔王クラスともなれば本来居ないものと同義なのだ。当然の如く悪魔や天使の知識などこの世界にはあまり無かった。
「やれやれ……彼が元は天使長だと言うことは分かるわね?」
「えぇ……」
「そんな高位の天使が堕天した理由……それは傲慢という罪を背負ったからなの。そしてゼウスの座を狙い……返り討ちにされ地獄に落とされた。そしてその落とされた地獄こそがコキュートスなのよ」
説明に少しついていけないグレイアス、夢依は全く分からない様子だった。しかしグレイアスは1つ疑問を感じた。
「だ、だけど……冬風までそこに連れて行かれる理由なんて無いはずですが……」
グレイアスの疑問に、更に深いため息をつく。
「確かに冬風はルシファーの件とは関係ないわ……でもね、契約している以上あの子も同罪になるのよ。恐らくルシファーと契約を結んだ時点で覚悟は決めていたと思うけどね……」
「どうすれば……」
私に助けを求めるもコキュートスを管理しているのは閻魔とそこを担当している悪魔であり、唯一干渉することが出来るのは唯一神のゼウスのみ。いくら高位の神だろうが干渉することはままならないのだ。だから私がどうこう出来る問題ではないという事になる。
その事に絶句としたグレイアス……そして何も理解出来てない夢依に説明すると、全く同じ反応を示していた。
「じゃあ……祭りはどうするのよ」
そう……夢依と共に出るはずだった真竜王激流祭、だが冬風が居ないのでは1人で出ることになってしまう。かと言ってこの前みたいに私が代わりを……としても無理がある。代理者を立てようにも彼と同等の実力を持っている者など、この学園には一人もいない。そんな時だった……。
「私が……彼の代わりに出場します」
その言葉に2人共唖然としていた。
「とある人に聞いたんです……前例はあると、ですから……」
その先を口にする前に夢依が止めた。そして少し考え……。
「ごめんなさい……それは出来ません」
「どうして……」
理由はいくつかあった……まず一つは身分だ。グレイアスは他の国の国王、その王が国を放置してこのユスティアの祭りに参加するのはとてもではないが危ない。グライエンの国民からの反乱で国家転覆というのもありえなくはないし、こちらとしても他の国の王を一生徒と入れ替える事などほぼ不可能に近い。それこそ両国の人々に不安や反感を買う事はある。
そして2つ目に能力の違いだ。冬風は本来水属性の魔力を使うが、他にも多色魔法等を使う。それに比べグレイアスは光属性……普段からあまり使わないからとても目立つし、仮に名を変えて変装して出場したとしても正体を見破られるのにそう時間はかからないかもしれない。
そして3つ目……これは私情になるのだが、夢依はグレイアスの事を知らないし信用もしきれていない。小さい頃に国同士の話し合いの場で会った事はあるかもしれないけど、その事など覚えているはずもない。
「じゃあ……どうするのですか?」
「それはこちらで何とかします、ですが……冬風の代わりに出てくれようとした事に関してはお礼を言います」
夢依は頭を下げ、グレイアスは慌ててそれを止めた。そしてその場で少し話した後祭りの時にまた来ると言う約束をし、グレイアスはグライエンへと戻った。そしてそれを見送った後夢依は早足で女子寮へと戻った。
その後に続き、春香は生徒会室へと戻った。廊下越しに外を見ると、既に日は落ちかけ空が真っ赤に染まっていた。
夢依はそそくさと校門を出て寮へと向けて歩き続けた。脳裏に冬風の事を思い浮かべながら……私はそのすぐ後ろを歩いていた。
「どうするの……?寮に戻った所で状況は変わらないわよ?」
しかし夢依は何も答えなかった。特に考えがある訳でもなくあんな事を言ってしまった……でもこうなった以上もう後戻りは出来ない。女子寮が後少しという所で1人の女性とぶつかりそうになった。考え事をしていた夢依は咄嗟に反応出来ずによろけ、盛大に転倒しようとしたが……そのぶつかりそうになった女性が腕を引っ張り上げてくれて何とか転倒を免れた。
「すいません、考え事をしていたもので……」
支えてくれた人の顔を見て少し驚いた。夢依を支えてくれたのは時雨の妻……紅映だった。彼女もまた驚いた表情で2人を見つめた。
「夢依さん……それに雅も、どうかしたんですか?」
こうして私から詳しく事情を聞くことにした。グライエンの事やルシファーの事、そして冬風の事を。
「なるほど……通りで昨日あの人が"冬風と連絡が取れねぇ……"と言っていた訳です」
苦笑い気味にため息をついていた。突然契約主が姿を消したのだ、どんなものだろうと驚くに決まっている。それは鬼神とて例外ではない。コキュートスほど落とされてしまったら、契約したものの魔力はおろかリンクすらも切れかねない。酷い場合には裏切られたとしてリンクを強制遮断、そして契約主を殺そうとしてくるケースも無くはないのだ。
夢依と話していると、突然物陰から時雨が姿を現した。話を聞いてみると紅映さんを探していたらしく、暫くこっちの世界から離れ自分の居た世界に戻ると言っていた。……と言っても1~2日で戻ってくるらしく、そのまま別れた。
夢依は私とそのまま寮の自分の部屋へと戻り、2人でしばらく考え合っていた。その前にまずコキュートスの事を夢依に細かく説明した。
~コキュートスとは~
神に逆らった天使長”ルシファー”が落とされた地獄の名である。地下(地獄階層)9層に位置し一面氷だけの世界。大罪を犯した魂はここへ流れつき、永久に氷の中へと封じ込められる。ルシファーもその一人で、下半身だけだが氷に埋もれて動けずにいた。
ここの管理者は閻魔とそこの管轄の鬼(悪魔など)や唯一神のゼウスしかおらず、例え大魔王の力であろうとそこから抜け出すことは絶対に有り得ない事なのだ。
何故ルシファーがコキュートスを抜け出しサタンを名乗っていたのかはあまり分かってはいないのだ。
冬風がこの世界の氷に封じ込められてしまった事により事態は最悪、このまま永久に帰ってくることは出来ないかもしれないという絶望感だけが残った。このまま真竜王激流祭を出場するのを諦めるか、代役を立ててもらうか……選択肢はこの2つだけとなっていた。
しかし夢依は諦めるという気持ちはなく、何処かに代役の人がいないかなと探していた。そして、一つの結論へとたどり着いた……。
「そうだ……それしかない」
「どうしたの?」
突然立ち上がった夢依を見て、正直驚いた。そしてこの後もっと驚くことになることも知らずに……。
「冬風の代わり思いついたわ……時雨さんも確か冬風の契約精霊よね」
「え……えぇ、確かにそういう事になっているわ」
その答えを聞き、ますます期待は大きくなっていった。
「その時雨さんに……代役をお願いしたいのよ」
「……はぁ?!」
思いっきり転げそうになった、そして夢依の表情を見てみると……無邪気な笑顔を浮かべてた。
「確かに時雨は強いわ……でもね、鬼神の存在はもはや伝説クラスなのよ?そんなのが学生たちの大会に出場してごらんなさいな……大惨事確定よ?」
確かに雅の言い分も正論ではある。人間の……しかも学生ともなると所持している魔力量はすごく限られている、その為時雨のもつ鬼神特有の魔力に耐えられるわけがない。
冬風が使っている時は1000分の1まで抑えても尚この力に抵抗出来る者はいない……それがどうだ、本人がそのまんま力を使ったら……相手の契約精霊の加護を無視してそのまま圧死させてしまう事間違いなしだ。
しかも鬼神特有の魔力とは……他の魔物を引き寄せてしまう事だ。殆どの魔族や魔物は鬼神の魔力に誘き寄せられて返り討ちにあうことがある。では何故誘き寄せられるか……理由は単純で強さを他の種族に思い知らせるためだ。神クラスの鬼を倒したともなれば確実にそいつには逆らうことは出来なくなる、そして生物上のヒ エラルキーがバランスを崩してしまうのだ。それは何としても死守すべきことで、生態系が崩れる心配も……。
そして何より私が心配なのは一番大事な祭りで魔族などの乱入で全て台無しにされた挙句、他の学生たちをも皆殺しにされて人間は皆魔族に蹂躙されるかも知れない。その場合冬風の望みは永劫に叶わぬ事になってしまう……それだけは何としても止めたかった。
しかし夢依は他の事なんて頭に入っておらず、こうして一日過ぎていくのであった。
~何処かの火山の中~
ここはユスティアからちょっと離れた所にある火山、毎年のように噴火し大陸地をどんどんと広げていっている場所だ。しかし今年は例年とは何かが違った……本来ならもうじき噴火するはずなのに、今年はその気配すらない。おかしいなと思った近くの島の住人が様子を見に行った。そして……。
「グオォォォォォォ!!!」
水面を揺らし大気を震わせるほどの咆哮と共に、その村人は行方を晦ませた。その咆哮主に何かされたのか、それとも火山の中へ落ちてマグマに溶けて消えたのか……それは誰にも分からない事だった。だけど一つだけ誰でも分かることが……それはこの世界の大陸の何処かにとてつもない危機が迫っているという事だった。そして、かつてこの世界の頂点を統べていた者が復活する兆しでもあった。
~コキュートス~
魔力も大分回復し、意識もはっきりとしてきた。しかしどんなに回復しようとも……この氷を壊すことが出来そうに思えなかった。ため息をつきながらどうしようか悩んでいると、とてつもない違和感に襲われた。
「何だよ……これ」
”氷が動いていた”……まるで意思でも持っているかのように。僕とルシファーを飲み込むときも同じ感じで動いてたのを思い出したからこそ不思議に思った。何故この氷は自分を
”上半身だけ吐き出そうとしているのか”
と。だがその答えはすぐそこにあった……。
「貴様がルシファーの契約者か」
そこに居たのは伯父様と同じくらいの身長に、白くて長い髭と手にしていた物を見てその人が誰なのか一発で分かってしまった。
「まさか貴方は……ゼウス?!」
手に持っていたのは雷霆という名の……ゼウスのみが持つことを許された伝説の槍。雷を操りどんな罪人でも瞬殺してしまうほどの威力だと何かで見たことがあった。しかし実物で見るのは初めてだった。
「うむ……如何にも。それでは儂の問いにも答えてもらうぞ、人間……貴様はルシファーの契約者か?」
今にも雷を繰り出しそうな殺気に、言葉を出す事すらままならなかった僕は無言で頷いた。
「……そうか」
すると先ほどまでの威圧感や殺気などは消え去り、ゼウスは目線を僕の所まで低くしてまるで品定めするかのようにじっくりと見た。そしてしばらくするとゼウスはこんなことを口にする。
「中々面白い事をしてきたではないか……好きな人を、好きな国を守りたいとは。そしてその為には自らの感情を殺す事さえも厭わないとは……面白い」
「なっ……」
”何故その事を……”
そう言いかけた瞬間、その口を閉じさせられた。
「儂を甘く見過ぎだ、そのくらい見ただけで分かる」
「……」
見ただけで分かってしまう、つまり何を隠そうとも喋らずともすべて見通されてしまうという事だ。
「面白いが……残念なことにあの国はもうすぐ滅ぶじゃろうて」
「?!」
とても想像したくない……最悪な事実がゼウスの口から発せられた。
「眠っていた黒龍は目を覚ました……近いうちに近くの国から滅ぼしていくじゃろうな」
その言葉に居てもたってもいられずに、退かす事の出来ない氷を必死に退かそうとしていた。そしてそれと同時に思い出したくない悪夢を……海に行く時に電車の中で見た悪夢が脳裏を横切った。それだけは何としても阻止したかった。
「無駄じゃ……じゃが、一つ問いたい。何故にそこまで戦う、どうして人間などの為にそこまで必死になる」
「……どういう……ことですか……」
「そのまんまの意味じゃ、貴様なら天使にでも神にでもなることは可能じゃ……なのにそこまで人間にこだわる理由は……あの娘か」
図星をつかれ黙り込んでしまった。その様子を見て呆れたようにため息をついた。
「目覚めた黒龍は鬼神と神にしか止められん……貴様が行ったところで、被害を無くすこと等出来ぬぞ」
「それでも……守りたいんだ!」
迷いなく叫ぶ、その姿に何を思ったのか氷から解放した。冬風はゼウスの方に顔を向けると……。
「貴様がルシファーと契約していなければ”そんな無謀で救えるものなど無いと知れ、自惚れるな!”と怒鳴りつけていたんじゃがな……行くがいい、あの娘の元へ。そして全てを守ってこい、これはあくまでルシファーへの罰を貴様にも与えてるだけにすぎんからな」
そういってゼウスは姿を消した……ユスティアにつながる扉を残して。ルシファーを魔界へと戻し、少しでも休息をとらせることにした。そして……。
「夢依には……後で謝っておかないとな……」
そう呟きながら扉の中へ走り出した……。
書き溜め文もありますが、その前に修正及び変更などを先にやってしまいたいので次のお話はそれが終わってからということになります。




