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第45話『次回のあらすじ』

 ユキホとクーナは物々交換のため、とある街に立ち寄る。

 そこは大規模な農場運営で安定した食糧供給を確保している豊かな街だったが、その背景には『略奪されないための圧倒的な戦力』があった。

 旧文明の軍人たちによって創設されたその街は、銃火器や弾薬を豊富にストックしており、賊を寄せ付けないその安全性から多くの人々にとって安住の地となっていた。


 そして街を牛耳る幹部の一人である古強者の老人は、街中ですれ違っただけでクーナの正体が生物兵器の『餓鬼(グァール)』だと見抜く。

 しかし、その事実を知らされた街の幹部たちはクーナを排斥せず――むしろ歓迎の意を示す。


『我らが安住の地を守る弾薬も無限ではない。この街を賊から守ることに『餓鬼』としての力を振るってくれるなら、望むだけの待遇を以って貴女たちを歓迎したい』


 本来、『餓鬼』は人々にとって恐怖され迫害されるべき存在である。それゆえユキホとクーナは一所に長居せず、あちこちを放浪することで正体の露見を避けてきた。

 だが、ここでクーナの素性を知った上で受け容れてくれる者たちが現れた。しかもその街は、今まで巡ってきたどの人里よりも近代的なインフラが生きており、クーナの延命に有用そうな医療設備も多少なり残っていた。


 その提案を聞いたユキホは苦悩する。

 ここで安住の地を得ては復讐が終わってしまう。この街に馴染んでしまえば、もしユキホが自殺しても、クーナを必要とする街の面々が彼女を支え励ますことだろう。憎き『餓鬼』に絶望を味わわせる復讐が成立しなくなる。


 だから、断らなければいけない。

 体のいい口実を用意してこの安住の地を拒否し、二人だけでの旅を続けなければならない。

 そんな言い訳のような理屈を自分に言い聞かせながら、ユキホは――街の幹部たちへ叫んだ。


『この子にもう、これ以上の罪を背負わせないでくださいっ!』


 いかにも子供じみた、綺麗事の言い訳を。

 賊を容赦なく撃退する街の任務に当たれば、クーナは今後も数多くの人命を奪うことになる。人殺しの道具として利用される。それが許容できない。

 今の過酷な世界の情勢を思えば本当に取るに足らない、幼稚も極まりない断り文句だった。


 ――なのに、ユキホは叫びながら涙を流してしまっていた。


 ただ、安住の地を断るためだけの方便なのに。クーナのことを慮る気持ちなんて少しもないはずなのに。あってはならないはずなのに。

 自分はいったいクーナをどうしたいのか。嗚咽しながらそう混乱するユキホに、傍らのクーナはこう言う。


『大丈夫だよユキホ。罪とか何とかよく分かんないけど、戦うのは慣れてるしへっちゃらだから。二人でずっとこの街に住もうよ。ね?』


 その言葉を聞いた瞬間、ユキホはこれまでクーナに向けてきた穏やかな笑顔の仮面をかなぐり捨てて、腹の底から激昂する。


『戦うのがへっちゃらとか、そんなこと! 二度と言うな!』


 街の幹部の老人たちは、ユキホの感情論に呆れて一旦退散する。

 しかし、唯一無二の存在であるユキホから初めて本気で『怒られた』クーナはその情緒を危うくする。幼児返りをしたように泣きながらユキホに縋りつき、『ごめんなさい』『嫌いにならないで』『これからぜんぶユキホの言う通りにするから』『お願いゆるして』『ずっと一緒にいて』と連呼する。


 泣きわめくクーナは、ユキホが無言のまま用意した食事にも手を付けようとしない。常人では想像ができないほどの空腹に襲われているであろうに、それでもユキホから赦しを得ることを優先してただただ涙を流し続ける。


 このままではクーナが餓えで倒れ、復讐を果たせないかもしれない。

 そう思ったユキホは、クーナを抱きしめてこう囁いてしまうのだった。彼女を落ち着かせるための子守歌として。


『クーナ。私はあなたのことが大好きだよ。ずっと一緒にいよう』


 それを聞いた途端、クーナは救われたようにその表情を晴れやかにして、そっとユキホを抱きしめ返してきた。その温もりを感じながら、ユキホは胡乱に濁った黒い瞳をたたえる。


(私は、この子をどう思ってるんだろう……?)

(このまま二人で一緒にいたいと思ってしまっているんだろうか……?)

(だけど……)


 ユキホがいなければ、クーナは合成食糧を自ら焼き払うようなことはなかった。

 ユキホがいなければ、クーナはこの街の守護神として安寧を得られたかもしれない。


 ――私がいなければ、この子には、もっと別の道が。


(ああ、よかった)


 内心で自責を募らせたユキホは、そこで不穏な笑みを浮かべる。


(こんな最低な私は、死んだ方がいいに決まってる)


 クーナを苦しめるための自殺には躊躇が生まれてしまっていた。もしかしたら、このままだと踏ん切りが付かない可能性もあった。

 だが、復讐のために無垢な彼女を誑かしてしまった醜悪な自分自身を殺すことには――


 もはや、何の躊躇いも感じなかった。


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― 新着の感想 ―
日果が瞳子のアドバイスなしでちゃんと描けるようになったら瞳子は曇りそう
あれ、思ったよりまともに面白い展開なのでは……? 作者は人の心ないんかみたいな流れではあるけど、元々作者人の心ないから問題ないし。百合の有識者水無月瞳子がどう判断するか……。
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