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このゲーム、君に届けたい  作者: 天月瞳
大学編

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【絢音】初めての夜【異星食堂】

星野光は翌朝早く、橋の向こう側へと出発した。

橋を渡った先には、荒れ果てた広大な礫地が広がり、さらにその奥には鬱蒼とした森林が見えている。


「ここ、ずいぶん荒れてるね」

絢音はそう感想を漏らしつつ、星野光が、人の背丈ほどもある岩の横を通り過ぎたところで、わざと冗談めかして言った。


「この岩、なんだか人の形に見えない?」


:確かに

:もし本当にそうだったら怖すぎる


森に入ると視界は一気に悪くなり、敵を発見した時には、ほとんど目の前まで迫っていることが多かった。

それでも絢音は反射神経を頼りに、小型の異獣を次々と難なく倒していく。


「おかしいな……リリは大型の異獣が出るって言ってなかったっけ?」


そう疑問に思った直後――

二つの頭を持つ巨大な灰色のクマ――双頭クマが、轟音のような咆哮を上げて突進してきた。


「クマ!?」

絢音は一瞬驚いたものの、手元の操作はまったく鈍らない。

前転で攻撃をかわし、すぐさま反撃の一発を叩き込む。


「硬っ……」


HPの減りは、絢音が想像していたよりもかなり少なかった。


「さすが新しいマップ……」


灰色の双頭クマの攻撃パターンは三種類――

叩きつけ、噛みつき、そして全身を使う突進攻撃。

前二つは問題なく回避できたが、突進の判定範囲はあまりにも広く、かすめただけで――

 HPが一気に半分まで削られたのだ。


「いて!」

慌てて距離を取り、回復しながらも、絢音の目はますます輝いていく。

回避に集中し、隙を見つけては一発撃ち込む。

激戦の末、ついに灰色の双頭クマを倒した。


「回復薬もほとんど使っちゃったし、そろそろ戻ったほうがいいかな……でも、もう少し探索したいなぁ」


:無理せず戻ったほうが安全

:時間もそろそろ……あれ、時計は?


視聴者の一人の指摘に、絢音ははっとする。


「本当だ! 時計、消えてる! いつから!?」

戦闘に集中しすぎて、まったく気づいていなかった。

少し考えた末、絢音は一度基地へ戻ることを決める。


このゲームには、脱出系シューターによくある、いわゆる“撤退ポイント”が設定されている。

しかしマップを開いて確認すると、森の撤退ポイントはさらに奥に位置していた。


「……もう、直接走って戻ろう」


回復薬の量が気がかりで、強敵との遭遇を恐れた絢音は、星野光を操作して森の外へ向かって走り出す。


「……暗くなってきた」

緊張と同時に、わずかな期待も混じる。

外の夜を見るのは、これが初めてだった。


星野光が森の縁に差しかかった、その瞬間――

巨大で細長い節足が、すぐ脇を貫くように突き刺さった。

無数の棘と剛毛を生やしたそれに、空も巨大な黒影によって覆われる。


「ひっ!」

絢音は短い悲鳴を上げ、心の中で悪態をついた。


(瞳、私がクモ苦手なの知ってるくせに、わざと入れてるでしょ……ひどい!)


だが幸いにも――あるいは瞳の良心が働いたのか――

蜘蛛の胴体そのものは見えず、ぞわりと背筋が凍るような移動音を残して、巨大な影は森の奥へと消えていった。


「……ふぅ」

絢音は大きく息をつく。

橋までは、あとほんの少しだった。


「……誰?」


橋のたもとに、人型の存在が立っている。

暗闇の中で、赤く光る双眼だけが不気味に輝いていた。


:赤目の先生?

:あっ


【赤目の騎士 と遭遇しました】



鎧をまとったその人型の存在は、右手に持った長槍を大きく掲げ、構えを取る。


「仕方ない……なら」

戦闘を避けられないと悟った絢音は、自ら前へと踏み込み、攻撃を仕掛けた。


「よろしくお願いします!」



ゲームの主人公・星野光が装備しているのは、標準仕様のライフル。

火力は十分で、安定性と連射性能のバランスも悪くない。


試しに赤目の騎士へ一発放つ――

しかし次の瞬間、相手は長槍を軽く払っただけで、弾丸を弾き飛ばした。


「なにっ!?」


続いて赤目の騎士は跳躍し、右手の長槍を大きく後方へ引く。

その姿は、まるで弦いっぱいに引き絞られた弓のようだった。


激しい風切り音とともに、槍先が一直線に星野光へ迫る。


「っ!」

絢音は即座に回避ロールを入力し、間一髪で攻撃をかわす。


――が、安堵する暇はなかった。


赤目の騎士は左手で短銃身のショットガンを引き抜き、至近距離で星野光に突きつけると、そのまま引き金を引いた。


閃光。


【あなたは死亡しました】


画面はそのまま暗転する。


:どこの一心様だよw

:赤目先生「やっぱこっちだな」


「うわぁ……! つよっ!」

絢音は落ち込むどころか、むしろ目を輝かせていた。


「もう一回! もう一回!」


復活を待つ間も落ち着かず、

次こそは――と、赤目の騎士への再戦に向けて気合を入れるのだった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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