出典
一覧には、十二点あった。
研究者は、先に抜き出した参照番号を発掘記録へ戻した。
題名。
著者。
推定刊行時期。
発掘地点。
発見された時期。
著者は一人ではない。
刊行時期にも幅がある。
発掘地点は三か所に分かれていた。
発見された時期も違う。
十二点が、一度にまとまって出たわけではなかった。
最初に研究対象となったのは一冊だけだった。
復興期の研究者が、創作上の表現である可能性を残したまま、身体利用の候補として保留した資料。
その後、別の発掘調査から二冊目が加わっている。
著者は違う。
刊行時期も違う。
さらに後の調査で、別地点から同種の記述を含む出版物が追加された。
研究記録の評価が変わったのは、その後だった。
単独作品に固有の表現として除外するには、同種の記述が多い。
ただし、身体構造を示すものとは断定しない。
別方式の候補を検討する際の文化資料として残す。
先に確認した検討記録と一致する。
その時点で利用できた発掘記録だけを見れば、不自然な判断ではなかった。
研究者は、十二点の内容欄を閉じた。
今日は、そこを読む必要はない。
*
最初の発掘地点は、古代都市の生活区画だった。
住居として使われていた可能性が高い一画から、成人向け出版物のほか、一般書や生活用品が出ている。
出版物の一部には、小さな所有印があった。
同じ印は、同じ収納単位から出た一般書にもある。
所有者名として読める部分は欠けている。
それでも、一つの蔵書として扱える範囲は分かる。
二つ目の地点は性格が違った。
生活用品より、業務に使われたとみられる物品や文書が多い。
ここでは、一般書に残された私的な整理記号が第一地点のものと一致した。
短い注記も残っている。
筆跡鑑定の記録では、第一地点の一般書への書き込みと同筆とみて矛盾しない。
三つ目の地点が何に使われていたかは、確定していなかった。
長期間の居住地とするには生活資料が少ない。
一方で、一時的な利用と断定する根拠もない。
ここにも同じ形式の整理記号が残っていた。
さらに、随伴する紙の購入票には、第二地点から出た一般書が記載されている。
その一般書にも、同じ整理記号と注記があった。
研究者は三地点の記録を並べた。
所有印と収納単位。
私的な整理記号。
注記と筆跡。
別地点の一般書へつながる購入票。
一つだけなら、地点を越えた所有関係を決めるには足りない。
重ねると、三地点の蔵書がつながった。
成人向け出版物の内容は、その判断には使っていない。
*
成人向け出版物十二点へ戻った。
それぞれの発掘地点で確認された蔵書の所有関係をたどる。
三地点の記録に、矛盾する所有者情報はなかった。
十二点の一覧の下に一行加えた。
成人向け出版物十二点は、同一所有者に由来すると判断できる。
しばらく、その一行を見た。
題名は変わらない。
著者も変わらない。
刊行時期も変わらない。
三地点から、異なる時期の発掘で見つかったことも変わらない。
真正な古代資料であることにも、変更はない。
変わるのは、数え方だった。
十二の出版物がある。
複数の著者がいる。
複数の時期に刊行されている。
だが、それを選び、所持していた者は一人だった。
復興期の研究者には、この接続がなかった。
最初の一冊を評価した時点では、後の発掘資料そのものが存在しない。
二冊目が加わった時点でも、別地点の蔵書を結ぶ随伴資料はまだ揃っていない。
別著者。
別の刊行時期。
別の発掘調査。
同じ種類の記述。
当時、それらを別々の文化資料として扱った経緯は、そのまま残した。
判断を訂正する必要はなかった。
現在の資料で、評価を更新する必要があった。
*
先に作った年代表の横に、成人向け出版物の一覧を置いた。
第三の身体利用。
候補として保留。
追加資料。
方式検討。
限定的な試行。
適用条件の整理。
標準化。
第三認証。
その順序も変わらない。
成立時に参照された資料の評価だけが変わる。
複数の出版物に同種の表現がある。
それは事実だった。
複数の所有者が、それぞれ同種の出版物を選んでいた。
そう扱うことはできなくなった。
研究者は、再編纂稿の第三認証の項目を見た。
古代社会における身体利用の傍証として、複数の文化資料が参照された。
その一文を外した。
代わりに、出典評価の欄を加える。
複数著者、複数刊行時期の成人向け出版物十二点。
複数地点から異なる時期に出土。
所有関係の再検討により、同一所有者に由来すると判断。
この十二点だけから、同種の表現が当時の社会に広く共有されていたとは判断できない。
そこまで書いて、止めた。
所有者がなぜ十二点を持っていたのか。
何を好んで選んだのか。
そこまでは分からない。
分からないことを補う必要もなかった。
*
第三認証の項目は削除しなかった。
成立時に参照された史料について、評価を書き換えた。
その後の試行と制度形成は、それぞれ別の資料で確認できる。
成立時の文化資料をどう評価するかと、その後に何が起きたかは、同じ問いではなかった。
研究者は再編纂稿の目次へ戻った。
古代認証技術。
復興期。
現代認証制度。
三つの間には、参照されたものがある。
引き継がれた名称がある。
機能を対応づけた記録がある。
その後に独自に加わった制度もある。
どこまでを同じ歴史として書くか。
どこからを別の成立過程として書くか。
出典を直したことで、次に整理する箇所がはっきりした。
研究者は、再編纂稿の該当箇所に印を付けた。




