表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/33

第19話 毒と言いなさい

王の皿を載せる銀盆は、保温室の扉の前で止まっていた。


持っている給仕の腕が震えている。


盆が重いからではない。


王の料理を待たせているからだった。


「早く」


厨房長が言った。


誰に対する命令かは明らかではない。


給仕へ。


配膳係へ。


エルサへ。


あるいは、この面倒な状況そのものへ。


人間は、解決方法が分からない時ほど、急げと言う。


エルサとフランツは、熱を持った銀皿を二人で支えていた。


厚布越しでも熱い。


皿の縁には黒い模様が浮かんでいる。


細い筋。


銀の紋へ沿って伸び、途中で枝分かれしている。


消えない。


試験皿では一瞬だった。


王の皿では、残っている。


条件の違いは、出力と時間。


それだけではないかもしれない。


だが、少なくとも、同じものではない。


毒見前の料理と、いまの料理は。


「皿を戻しなさい」


厨房長が繰り返した。


「戻せません」


エルサは答えた。


「命令だ」


「私は王宮厨房の職員ではありません」


「王宮内にいる以上、王宮の規則へ従え」


「王宮から安全確認を求められて来ています」


「安全でないと証明できていない」


「安全だとも証明できていません」


「毒見を通っている」


「毒見後に変化しました」


「推測だ」


「皿を見て」


「変色だけで毒とは言えない」


「だから調べるのよ」


「宴席を止めてか?」


厨房長の声は冷静だった。


怒鳴ってはいない。


それがかえって厄介だった。


彼は馬鹿ではない。


エルサの話を理解できないわけでもない。


ただ、理解した上で、現在ある証拠では王の宴席を止める損失に見合わないと判断している。


宴席には六盟家の代表がいる。


北の防衛費。


南の麦。


東の魔石。


西の通貨。


騎士団の予算。


王家の信用。


一皿を止めれば、料理だけでは止まらない。


「何人倒れれば、損失に見合うの?」


エルサは尋ねた。


厨房長の眉が動いた。


「不敬だぞ」


「人数を決めているのでしょう」


「決めていない」


「なら、一人も倒れていない今が一番安いわ」


「毒かどうかも分からないものを、毒と同じ扱いにはできない」


そこだった。


毒。


その一語がない。


危険。


変性。


異常反応。


複合条件。


どれも正確で、どれも弱い。


毒と言えば、人は止まる。


毒と言わなければ、料理は進む。


だが、毒である証拠はない。


エルサは口の中へ金属の味を感じた。


実際に空気へ混じっているのか。


舌が記憶を再現しているだけか。


「侍女はまだ?」


エルサが尋ねた。


雑役長が廊下を見る。


「クロエ様の控えへは伝えた」


「いつ?」


「さっきだ」


「時刻」


「覚えていない」


「覚えて」


「今それが必要か?」


「後で必要になる」


雑役長が顔をしかめる。


事故が起きることを前提にしているように聞こえたのだろう。


事故は、起きてから記録を始めても遅い。


誰がいつ知っていたか。


誰が誰へ伝えたか。


誰が止められたか。


止めなかったのか。


止められなかったのか。


違いは、時刻で決まる。


「三つ目の鐘の少し前だ」


雑役長が答えた。


エルサはフランツを見る。


彼は片手で皿を支えながら、空いた手で記録板へ書いた。


「書いたぞ」


「字が汚い」


「落とすぞ」


「読めればいいわ」


「最初からそう言え」


給仕の持つ銀盆が、かすかに鳴った。


厨房長が時計を見る。


「王族席の配膳が遅れている」


「遅らせて」


エルサは言った。


「下働きが命令するな」


「お願いしています」


「お願いで王の宴席は止まらない」


「では、命令できる人を呼んで」


「すでに伝えている」


「誰へ」


「大広間の儀礼官だ」


「儀礼官に料理の危険が分かる?」


「王族へ接触できるのは儀礼官だ」


「説明は?」


「南部小麦の一部に、調理後の変色あり。錫の塔が追加確認を要請」


短くされている。


また。


必要な情報が削られている。


黒い根。


銀。


薬草。


炉。


長時間。


毒見後の変化。


残ったのは、変色。


見た目の問題に聞こえる。


「それでは止まらない」


エルサが言う。


「長文を宴席中の王へ読ませるのか?」


厨房長が返した。


「読ませなくていい。行動を伝えて」


「何を」


「王族席の温製料理を下げる。炉を止める。毒見をやり直す」


「根拠を聞かれる」


「危険反応」


「毒か?」


また。


その問い。


「まだ分かりません」


「なら、王へは上げられない」


エルサは歯を噛んだ。


正確さが扉になっている。


嘘をつけば開く。


嘘をつかなければ閉じる。


以前、自分はレオンハルトへ嘘をついた。


あの時は、彼を動かさないために。


今は、彼を動かすための嘘が必要になる。


何という皮肉だろう。


「エルサ」


フランツが低く言った。


「持ち替えろ。手が滑る」


エルサは布を握り直した。


指先が熱で痺れている。


「机へ置けない?」


「空いてる場所がない」


配膳係が答える。


「銀器箱の上は?」


「王冠札の皿を、箱へ置くなんて」


「床よりましでしょう」


「床へ置くつもりなの?」


「このままなら落とすわ」


ようやく、厨房長が動いた。


「耐熱台を」


職員が小さな石台を運んでくる。


エルサとフランツは王の皿を置いた。


腕から重さが消える。


同時に、熱の痛みがはっきりした。


エルサは布を外した。


指先が赤い。


フランツの掌にも、古い火傷の上へ新しい赤みが広がっている。


「水で冷やして」


エルサが言う。


「お前もだ」


「記録が先」


「指が動かなくなったら書けないぞ」


もっともだった。


配膳係が水鉢を差し出す。


王族が指を洗うためのフィンガーボウル。


銀縁。


香草を浮かべた冷水。


エルサは一瞬躊躇した。


「それ、客用でしょう」


「今さら何を気にしてるの」


配膳係が言った。


初めて、少しだけ苛立ち以外のものが混じっていた。


エルサは指を入れた。


冷たい。


熱を持った皮膚へ、水が刺さる。


浮いていた香草が指へ張りつく。


王宮でこの水鉢へ触れる時、シシーリアは白い指先を軽く濡らすだけだった。


今は、火傷を冷やしている。


道具は、用途を変えると少しだけ正直になる。


フランツも反対側へ手を入れた。


大きな手のせいで、水が溢れた。


「狭い」


「王族の手を基準にしてるのよ」


「俺だって人間だ」


「王宮では種類が違うらしいわ」


「聞こえてるぞ」


厨房長が言った。


「聞かせています」


「口が減らないな」


「減らすと、呼吸しか残らないもの」


フランツが水の中で指を動かした。


「少し減らせ」


緊張しているのだろう。


いつもより会話が多い。


エルサも同じだった。


黙ると、扉の向こうの大広間を考えてしまう。


レオンハルトがいる。


クロエがいる。


王がいる。


かつて自分を切り捨てた人間たち。


自分を死んだことにした場所。


助けたいわけではない。


本当に。


ただ、この皿が運ばれれば、錫の塔の警告が遅かったことにされる。


王宮の食材検査を疑った外部者。


使用停止を求めたクロエ。


南の小麦。


誰か一人が選ばれる。


そして原因は残る。


それが嫌なだけだ。


「侍女が来ました!」


廊下から声がした。


全員が振り向く。


先ほど工程表を運んでいた若い侍女だった。


息を切らしている。


頬が赤い。


手には、小さく折られた紙。


「クロエ様より」


エルサへ直接ではなく、雑役長へ差し出す。


正式な経路を守っている。


雑役長が開く。


目を走らせ、顔をしかめた。


「何と?」


厨房長が聞く。


雑役長は読み上げなかった。


紙を厨房長へ渡す。


厨房長の顔がさらに硬くなる。


「見せて」


エルサが言った。


「王太子婚約者から厨房長への伝言だ」


「私の報告への返答でしょう」


「身分をわきまえろ」


厨房長が紙を伏せる。


エルサは侍女を見る。


「あなた、内容を聞いた?」


侍女は迷った。


「クロエ様が口述されました」


「何と」


厨房長が制する。


「答える必要はない」


侍女の喉が動く。


王宮の職員。


厨房長。


婚約者。


錫の塔の下働き。


誰に従うべきか計算している。


「クロエ様は」


侍女は言った。


「錫の塔の方へ、正しい言葉では間に合わないと伝えるように、と」


エルサの指が水の中で止まった。


厨房長が紙を握る。


「余計なことを」


「続きは?」


エルサが尋ねる。


侍女はまっすぐ彼女を見た。


「毒と言いなさい」


保温室の音が消えた。


実際には消えていない。


棚は低く唸っている。


廊下では料理が運ばれている。


遠くで楽師の音がする。


人が息をしている。


それでも、その一言だけが、すべてを押し退けた。


毒と言いなさい。


クロエは理解している。


証明されていない。


規定毒物ではない。


未知の変性反応。


複合事故。


それでも、止めるためには毒と呼ぶしかない。


「クロエ様は、毒と断定されたの?」


厨房長が侍女へ尋ねた。


「毒の可能性がある、と」


「可能性」


「はい」


「根拠は?」


「錫の塔からの報告。厨房工程表。保温条件。銀皿の反応」


「御本人が確認したわけではない」


「はい」


「なら、婚約者様の判断にすぎない」


言い方が変わった。


錫の塔の下働きの推測ではない。


王太子婚約者の判断。


同じ情報でも、発した人間によって重さが違う。


「クロエ様は、責任を取ると?」


厨房長が聞いた。


侍女は答えた。


「停止を求めた記録へ、御自分の名を記すと」


エルサは目を閉じた。


嫌な女だ。


本当に。


一番必要なことをする。


責任の行き先を、自分の名へ結びつける。


命令権はない。


だが、失敗した時に処罰できる人間が名乗れば、王宮は少し動く。


「婚約者様に厨房命令権はない」


厨房長が言った。


声は前より弱い。


「承知しております」


侍女は答える。


「ただ、王太子殿下へ報告なさると」


厨房長の顔が変わった。


「すでに?」


「はい」


「どのように」


「王族席の料理に、毒の可能性あり、と」


言葉が短い。


理解に専門知識がいらない。


行動が一つに決まる。


止める。


エルサの長い説明は、何も間違っていなかった。


間違っていないから、誰も決められなかった。


「……嘘ね」


エルサは小さく言った。


フランツが水鉢から手を上げる。


「何が」


「毒とは、まだ分からない」


「でも危ないんだろ」


「危険と毒は違う」


「倒れたら同じだ」


「報告書では違うわ」


「今は報告書じゃない」


正しい。


フランツまで正しい。


今日は正しい人間が多すぎる。


「クロエ様から、もう一つ」


侍女が言った。


エルサは顔を上げる。


「正確に書く人間は必要です。短く言う人間も必要です、と」


一瞬、腹が立った。


自分の説明が長いと、明確に指摘された。


事実である。


事実だから腹が立つ。


「返事を」


エルサは言った。


「何と?」


侍女が尋ねる。


「毒ではない可能性もある。ですが、止める判断には同意する、と」


「長い」


フランツが言った。


エルサは睨んだ。


「では、あなたが短くして」


「止めろ」


侍女が小さく息を漏らした。


笑ったのかもしれない。


「それでいいわ」


エルサは言った。


「止めて、と伝えて」


侍女が頷き、走り去る。


厨房長は王の皿を見た。


黒い模様。


熱を持つ銀。


外では銀盆が待っている。


彼の顔には、計算が見えた。


クロエの名で止める。


王太子へ報告済み。


もし何もなければ、婚約者の越権。


厨房長は従っただけ。


もし事故が起きれば、止めなかった責任。


どちらが自分にとって安全か。


「王族席の配膳を一時保留」


厨房長が言った。


ようやく。


「保温棚は?」


エルサが聞く。


「止める許可はまだない」


「料理を下げても炉が動けば、試料が変化し続ける」


「地下へ停止を要請する」


「要請では遅い」


厨房長がエルサを見る。


「あなたは、命令という言葉が好きなようだ」


「嫌いよ」


エルサは答えた。


「命令できる人間の近くにいたことがあるだけ」


言いすぎた。


厨房長の目が細くなる。


フランツが咳払いをした。


「王宮の厨房にいたんだろ。港商会の手伝いか何かで」


雑な補足。


助かるかどうかは分からない。


「昔の話です」


エルサは言った。


「今は錫の塔の記録補助」


自分へ言い聞かせる。


厨房長は追及しなかった。


それよりも、現在の責任が重い。


「地下炉へ、王族保温第三線の停止を命ずる」


厨房長が音声管へ向かう。


「私の名で」


管の蓋を開く。


銅膜を叩く。


「地下炉室。王宮厨房長だ。王族保温第三線を停止せよ」


雑音。


返事。


『停止理由を』


「王族席料理に、毒の可能性あり」


言った。


厨房長まで、その言葉を使った。


毒。


一度口に出されると、急速に王宮を走る。


『命令者の名を確認』


「王宮厨房長、アルノルト・ベルナー」


初めて、彼の名を知った。


名乗った瞬間、ただの壁ではなくなる。


責任を持つ人間になる。


『承認。第三線を停止する』


低い音。


保温棚の唸りが変わる。


一度、高くなる。


そのあと、ゆっくり落ちた。


銀皿の振動が止まる。


保温室の熱が、少しずつ逃げていく。


「止まった」


配膳係が呟く。


エルサは王の皿を見る。


黒い筋は消えない。


広がりも止まったように見える。


これで間に合ったのか。


分からない。


王族席は止まった。


では、六盟家の皿は。


すでに出ている。


一般客は。


料理は大広間へ運ばれている。


問題麦は白パンだけではない。


とろみ。


薬草団子。


王族以外の皿は、保温時間が短い。


銀皿ではない席もある。


危険条件が全部揃っていなければ、何も起きない可能性がある。


可能性。


また、それだった。


「全席を止めて」


エルサが言った。


厨房長が振り返る。


「王族席は止めた」


「六盟家も」


「すでに配膳済みだ」


「下げて」


「大広間へ入った料理を、正式な王命なしに下げることはできない」


「王太子へ伝わったのでしょう」


「まだ命令はない」


「来るまで待つの?」


「王太子殿下へ判断を仰いでいる」


また待つ。


橋の両側。


「毒の可能性があると伝えたなら、止めるでしょう」


フランツが言った。


エルサは答えなかった。


以前のレオンハルトなら。


証拠を信じる。


正しい手続きを信じる。


目で見たものを信じる。


今回は、何を見る。


クロエの言葉。


錫の塔の記録。


厨房長の報告。


それだけで、自分の名を使えるのか。


「王太子殿下より!」


廊下の奥で声が響いた。


靴音。


衛兵が走ってくる。


濃紺の肩章。


王太子直属の伝令。


エルサの体が固まった。


本人ではない。


分かっている。


それでも、王太子の色を見るだけで、地下牢の鉄の臭いが鼻へ戻る。


白い手袋。


黒い汚れ。


もう二度と会うこともないだろう。


彼はそう言った。


正しかった。


いまも会ってはいない。


扉と人と階級が、二人の間にある。


「王太子殿下の御命令!」


伝令が封書を開く。


読み上げる。


「本宴席に供される温製料理の配膳を即時停止。すでに配膳された料理は、口をつけず、その場へ残すこと。厨房及び地下炉は該当系統を停止し、毒見局と錫の塔による再確認を行う」


厨房長が頭を下げる。


雑役長。


配膳係。


給仕。


全員が続く。


エルサは下げなかった。


錫の塔の人間として、王宮の王太子へ頭を下げる義務があるのか分からなかったからだ。


本当は違う。


下げれば、体がシシーリアの作法を思い出す。


怖かった。


伝令は最後の一文を読む。


「停止判断の責任は、王太子レオンハルト・フォン・ヴァイスハルトが負う」


エルサの指先から、水が一滴落ちた。


床へ。


小さな音。


責任は、王太子が負う。


クロエの言葉に乗っただけではない。


厨房長へ押しつけてもいない。


自分の名で止めた。


以前なら、証拠が揃うまで動かなかったかもしれない。


あるいは、揃えられた証拠を信じ、間違った方へ動いた。


今回は、証拠が足りないまま止めた。


遅い。


あまりにも。


シシーリアの時には、そうしてほしかった。


一度でも、判決の前に止まってほしかった。


その考えが浮かび、エルサはすぐに切った。


過去と今は別だ。


今回の判断が正しくても、あの時が消えるわけではない。


人間は、一つ良いことをすれば過去の損失を帳消しにできるほど、便利な帳簿ではない。


「何だ」


フランツが小声で聞く。


「何でもない」


「顔が」


「元から白い」


「まだ言ってない」


「どうせ同じでしょう」


伝令が厨房長へ封書を渡す。


「全席停止を直ちに」


「承知した」


厨房長が動く。


「配膳係! 大広間へ停止札! 各扉を閉じろ。給仕へ、料理へ触れさせるなと伝えろ! 毒見局を呼べ。銀器係、全王族皿を回収ではなく現位置保存。地下炉は第三線の封鎖を確認!」


保温室が一気に動き出す。


さきほどまで許可を待っていた人々が、命令を得た途端、迷いなく走る。


速い。


王宮は動き始めれば速い。


問題は、動き始めるまでだった。


「私たちは?」


フランツが聞く。


「王の皿を記録。変色の範囲。停止時刻。温度」


エルサは答えた。


「毒見局が来るまで触らない」


「帰れるか?」


「事故がなければ」


「ある顔してるぞ」


「事故がないように止めたのよ」


そう答えた瞬間、大広間の方角から拍手が聞こえた。


一度。


二度。


宴席の開始儀礼。


王が客へ最初の挨拶を終えた時に鳴る拍手だった。


続いて、食器の触れる音。


遠い。


小さな音。


だが、エルサには分かった。


誰かが匙を取った。


「停止命令は」


エルサは伝令を見る。


「いつ出たの?」


「たった今だ」


「大広間へ届くまで」


伝令の顔が変わる。


廊下の向こうから、別の鐘が鳴った。


一度。


短く。


配膳停止を知らせる厨房鐘。


遅れている。


宴席の音のほうが先だった。


「走って!」


厨房長が叫ぶ。


伝令と給仕が駆け出す。


保温室の全員が、廊下の先を見る。


扉の向こうは見えない。


大広間も。


円卓も。


誰が何を食べたかも。


エルサの耳へ、かすかなざわめきが届いた。


誰かが笑っている。


挨拶。


椅子の音。


銀器。


そして。


一つ。


硬いものが床へ落ちる音。


次に、誰かが息を詰めた。


「間に合わなかった」


配膳係が呟いた。


エルサは否定しなかった。


大広間から、悲鳴が上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ