第53章:狂った「時の歯車」と、精密機械のオーバーホール
空中回廊の揺れを完璧に止め、貴族たちの船酔い……もとい「魂の不安定」を物理的に解消した盆ちゃん。次に向かうのは、聖都の時刻を司る「大時計塔」です。
第53章を執筆します。(AI談
第53章:狂った「時の歯車」と、精密機械のオーバーホール
「……おい、カイルさん。あの時計、さっきから『3時59分』と『4時』の間を行ったり来たりしてるぞ。チャタリング(スイッチの跳ね返り)か? それとも単なる歯こぼれか?」
聖都の中央にそびえ立つ、高さ80メートルの「白銀の時計塔」。
教国の全行事の基準となるこの時計が、今や壊れたレコードのように針を震わせ、時折「ガガガッ」という不気味な金属音を響かせていた。
「盆山殿、あれこそが我が国の『聖刻』……。ここ数日、時間が進んだり戻ったりを繰り返し、市民たちが『過去の自分とすれ違う』という怪奇現象まで起きております。教皇様は『神が我らに過去の反省を促しているのだ』と断食を始められましたが……」
「腹が減って余計に過去を思い出すだけだろ。いいか、これは単なる**『駆動系の故障』**だ。精密機械に『反省』なんて概念はねえよ。レルちゃん、潤滑油と精密ピンセット、あと念のために『虫取り網』を用意しろ」
「了解です、親方! 『因果を固定する・神域クロノ・グリス』と、精霊も捕まえられる『次元キャッチャー』、準備万端ですっ!」
盆ちゃんは、重厚な時計塔の内部へと足を踏み入れた。
内部は巨大な歯車が幾重にも重なる複雑な構造だったが、盆ちゃんは一瞥するなり、主軸の奥を指差した。
「……あそこに何か挟まってやがるな。アルフレッド、ライトで照らせ!」
「はい、親方! ……うわ、なんだこれ。半透明の……トカゲ? いや、子供の幽霊みたいなのが歯車に尻尾を挟まれてます!」
そこには、時間の流れを司る下級精霊『時の迷い子』が、巨大な真鍮製の歯車にがっちりと巻き込まれ、涙目でバタバタと暴れていた。精霊が暴れるたびに、歯車が逆回転し、聖都の時間が数秒だけ巻き戻る。
「……『時の精霊』か。現場じゃよくある、配電盤に入り込んだヤモリと同じだな。レルちゃん、網だ!」
「はいです! どりゃあああっ!」
レルちゃんが網を振り回すと、神の加護により物理法則を無視して精霊が「ポイッ」と救出された。
自由になった精霊は、レルちゃんの頭の上で感謝するようにピョンピョンと跳ねている。
「よし、障害物除去。だが、無理に逆回転させたせいで歯車の山が潰れてやがるな。……アルフレッド、肉盛り溶接の準備だ。タマ、精密モードで火を吹け!」
「キュイッ!(お任せ、極細レーザー溶接!)」
盆ちゃんは概念模倣で「神域のヤスリ」を生成し、タマが熱した歯車の欠けを、職人技で一本一本修正していく。
目にも止まらぬ速さの精密作業。本来なら数ヶ月かかる「時計の再起」が、盆ちゃんの現場指揮によって数分で完了していく。
「仕上げにグリスアップだ。レルちゃん、注油しろ」
「了解です! 時の重みをゼロにする、シルキータッチ注入!」
虹色のグリスが歯車の噛み合わせに塗り込まれると、それまで「ガリガリ」と鳴っていた騒音が消え、代わりに「チッ、チッ、チッ……」という、心臓の鼓動のように正確で静かな音が響き始めた。
「……よし。時刻合わせ(タイムセット)完了。カイルさん、教皇さんに伝えておけ。『もうメシを食っていいぞ』ってな」
盆ちゃんが時計塔から出てくると、聖都を包んでいた奇妙な違和感が消え去っていた。
街中の人々が、正常に動き出した太陽の影を見て、安堵の溜息を漏らす。
「盆山殿……ついに『時間』まで修理してしまわれるとは。もはや、この世に直せぬものはないのですか?」
「直せねえのは、人の性根ぐらいだよ」
盆ちゃんはぶっきらぼうに言い放つと、ふと教皇庁の建物全体を眺めた。
「……ところでカイルさん。この教皇庁、外から見ると立派だが、屋根の勾配が甘くないか? 雨が降ったらあそこの谷樋に水が溜まるぞ。……よし、次は**『全館防水・雨漏り点検』**だ!」
「親方! 教皇様の寝室の天井から、黒い染み(邪神の呪い)が垂れてきてるって緊急通報ですっ!」
「……呪いだろうが結露だろうが、雨漏りは雨漏りだ。バケツを持って来い! 全員突撃だ!」
盆山工務店のメンテナンスは、もはや神の摂理すら超えて、教国を「完全無欠の住宅」へと変えようとしていた。




