第52章:宙に浮く貴族街と、命綱の「安全帯」
千年の沈黙を破り「城門」を開放したことで、聖都には物理的な「風」が吹き込みました。しかし、盆ちゃんの目はすでに次の「不安全箇所」に向けられています。
第52章を執筆します。(AI談
第52章:宙に浮く貴族街と、命綱の「安全帯」
「……おい、カイルさん。あそこで優雅に浮いてる『空中回廊』、あれ、さっきから**『共振』**してねえか?」
聖都の中心部、地上数百メートルの高さに魔法で浮遊する貴族たちの居住区。そこを繋ぐ美しいクリスタルの回廊を見上げ、盆山茂(盆ちゃん)は眉根を寄せていた。
風が吹くたびに、回廊は目に見えて「しなり」を生んでいる。
「ああ、あれは『神のゆりかご』と呼ばれております。神聖な風に乗り、微かに揺れることで住まう者の魂を浄化するという……」
「浄化される前に**『金属疲労』**でポッキリ行くぞ。ありゃあ風による共振現象だ。設計段階でダンパー(制震装置)をケチっただろ」
盆ちゃんは手元の「デジタル水準器」をかざした。数値は真っ赤に点滅し、エラー音が鳴り響く。
「レルちゃん! 悪いが**『高所作業車(マジックリフト・神域仕様)』**を出してくれ。それと、予備の『安全帯』を山ほどだ。これからの作業、一歩間違えたら全員『お星様』だぞ」
「了解です、親方! 『絶対に地面に激突しない・重力遮断ハーネス』、サイズ別で揃えましたっ!」
レルちゃんがパチンと指を鳴らすと、空中に巨大な昇降足場が出現した。盆ちゃんは腰袋を叩き、アルフレッドたち弟子を呼び集める。
「いいか、これより**『空中回廊・緊急耐震補強工事』**を開始する! 高所作業だ。安全帯の使用を徹底しろ。二丁掛け(フック二個使い)だぞ。一瞬でも無胴綱になるのは許さん!」
「「「ご安全に!!」」」
作業服に着替えた弟子たちが、空中へと昇っていく。
聖都の住民たちは、空に浮かぶ工事現場に仰天した。優雅な貴族たちが窓から顔を出し、「無作法な!」「神域を汚すな!」と罵声を浴びせるが、盆ちゃんは拡声器で一喝した。
「うるせえ! 命が惜しければ窓を閉めて部屋の隅で丸まってろ! 今からこの『ゆりかご』を**『鉄骨』**でガチガチに固めてやるからな!」
盆ちゃんは概念模倣で、神域の鋼材を次々と生成した。
それはただの鉄ではない。レルちゃんの加護により、概念的に**『決して折れず、振動を無効化する』**という特性を持った「剛性」の塊だ。
「アルフレッド、その継ぎ手にボルトを打ち込め! 緩みは許さん! タマ、火力が強すぎだ! 焼きなまし(溶接)は丁寧にな!」
空中で火花が散り、金属音が聖都に響き渡る。
揺れがピークに達したその時、盆ちゃんは回廊の心臓部である「浮遊核」に、特製の**『次元式・免震ゴム』**を無理やり挟み込んだ。
ドォォォォォン……。
その瞬間、激しく揺れていた空中回廊が、ピタリと静止した。
まるで大地に根を張ったかのような、圧倒的な安定感。
「……よし。これで震度7でも、お茶の一滴もこぼれねえはずだ」
作業を終えた盆ちゃんが、ヘルメットの顎紐を緩める。
貴族たちは、自分たちの家が「揺れなくなった」ことに最初こそ戸惑ったが、すぐにその快適さに気づいた。今まで「酔い止め」を飲んで生活していた者たちが、窓を開けて歓喜の声を上げる。
「盆山殿……今度は『重力』をも手懐けられたのですか?」
カイルが呆然と呟く。
「手懐けてねえよ。『剛性不足』を補っただけだ。カイルさん、この空中回廊の管理組合によろしく言っておけ。定期的なボルトの増し締めを忘れるなってな」
盆ちゃんは、レルちゃんから手渡された冷えた缶コーヒー(神域自販機産)を飲み干すと、ふと教皇庁の時計塔を見た。
「……あの時計塔、短針と長針が逆についてねえか? 嫌な予感がするな。レルちゃん、次はあそこだ」
「親方! 時計塔の文字盤の裏で、迷い込んだ『時の精霊』が歯車に挟まって泣いてるって報告が入ってますっ!」
「……今度は動物(?)愛護団体からのクレームか。忙しくなるぞ」
盆山工務店の仕事は、天界の果てまで尽きることはない。




