32 空回りと付添人
おさらい。エスコートしろと頼まれた。
「すいません、今満席でして予約はこちらに...」
「そ、そんな...」
内装がお洒落なカフェに立ち寄り店に入ってみたところ、満席状態。とても有名なのか、予約表はたくさんの名前で埋まっていた。
「つ、次...行こう」
(デートだからお洒落な場所じゃないと行けない。デートだから...)
心の中で何度も唱え、店を探した。
でも、別の店に行っても、また別の店に行っても結果は同じだった。頭を抱えて詩織を見た。せっかくのデートでエスコートを任されたのに、何も出来ていない。
「...ごめん」
「別に良いわよ...突然だった私も悪いし...」
気まずい雰囲気が漂った。詩織はその雰囲気に合わせて声が小さくなり、俺は焦るようにスマホを取り出して周りの店を調べ始めた。
「...ねえ」
「ん?」
唐突の呼びかけに、スマホから詩織へと視線を移した。詩織は俺の服の袖を摘むと、軽く引っ張って向こうのファミレスを指差した。
「...あそこでいいよ」
「え?」
「いらっしゃいませー何名様ですか?」
「2名です」
手をピースのような形にして店員に見せたのち、空いている席に向かった。俺は納得がいかないような表情を浮かべながら座った。
「何そんな浮かない顔してるのよ」
向かい側に座った詩織が、頬杖をつきながら俺を真っ直ぐ見つめて言った。
「ここからがあんたでしょ?」
「えっ」
沈みかけていた顔を起こし、詩織を見つめた。
「気を取り直して、続けよっか?」
「...わかった」
内心で気を落ち着かせた後、俺は決意した。
主な登場人物
住田竜司:主人公。紫陽花高校1年1組。
福留結希:紫陽花高校1年2組。
水月心寧:紫陽花高校1年2組。
一ノ瀬綾香:紫陽花高校1年2組。
桃瀬詩織:紫陽花高校1年2組。




