優しさだけでできた男の子
ある日の学校の帰り道。トゲトゲお化けはつまずいて転び、持っていたノートを道にばらまいてしまいました。半分の世界では、すべてを拾うのもひと苦労。
「大丈夫?」
ふいに、やわらかな声がしました。トゲトゲお化けが振り向くと、ひとりの男の子が、しゃがみこんでノートを一枚ずつ拾い集めています。トゲトゲお化けが何も言えずにいると、男の子はにこっと笑いました。
「見えないんでしょ。ゆっくりでいいよ」
トゲトゲお化けは、思わず口をとがらせました。
「べつに、ひとりでできるし」
でも、その言い方のトゲとは裏腹に胸の奥はじんと熱くなっていました。
それから何度かトゲトゲお化けは男の子を見かけるようになりました。重い荷物を持っているおばあさんに手を貸したり、泣いている子の肩をさすったり、落とし物を走って届けたり。
男の子は、いつもだれかに優しさを渡していました。でも男の子は「ありがとう」と言われると照れたように笑うけれど自分から何かをお願いしたり、「助けて」と言ったりすることはありません。
雨の日。
トゲトゲお化けは、びしょぬれになっている男の子を見つけました。男の子は自分の傘を、傘を持っていない子たちに貸してしまっていたのです。男の子の服は、すっかり冷たくなっていました。
「なんで、そこまでするの?」
トゲトゲお化けがたずねると男の子は少し困ったように笑いました。
「だって、困ってる人を見ると放っておけないんだ。ぼくは、ここがあったかくなるから、それでじゅうぶん」
そう言って、自分の胸を軽くたたきました。
トゲトゲお化けの中で、からん、とトゲがまたひとつ落ちました。だけど同時に胸がきゅっと痛みました。男の子の笑顔が、どこか少し、さみしそうに見えたからです。




